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魔女の棲む島 ー竜頭島の魔女ー  作者: 掟


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act.1 光和43年(西暦1969年) 林ナナコ 25才  その6

光和43年(西暦1969年)6月、 ユミカ小学3年生。

畑里町・ナナコ自宅近く、森の中の池


ナナコの家から川を渡り、森の中に入り、少し歩くと学校の校庭程の広さの池がある。

夏休みになると近所の子供が遊びに来ることもあるが、普段は誰も立ち入らない場所だ。

「ここなら普段は誰も来ないから、安心して魔法の練習が出来る」

ユミカの魔法出力は上限がわかっていない、この池の上ならば、少々やり過ぎても被害が発生することは無いだろう。

ナナコとしては、早めにユミカの魔法出力の上限を知っておきたかった。

「じゃあ、そろそろ始めようか」気合いを入れるナナコ。


「私、魔法は余り得意じゃないんだけどね」と言いながらナナコ、池の中央に向かって炎の魔法を唱える。

「んーーーファイヤーボール」自信なさげに唱えると、伸ばした手の先にぼんやりと

直径5センチくらいのオレンジ色の火の玉が「ぽっ」と現れる。

「すごーい!お姉さん、魔法使えたんだ!」ユミカが感動して見つめる先を、

ふよふよと火の玉がゆっくり進んでいき、ポチャンと池に落下する。

暫く前から、ユミカはナナコのことを「お姉さん」と呼んでいた。


「まあ、この程度なんだけどね」ふうっとため息をつきながらユミカに話しかける。

魔力中和という特殊技能を持つナナコだが、体内の魔力量はそれほど多くは無かった。

魔法も一応使えるが、どれも威力が弱く、人に向かってはなっても、

当たったことにも気がつかないレベルの威力しか無かった。


ユミカ、両手を前に突き出し「ファイヤーボール!」と、唱えると、直径5メートル程の炎の玉が出現、

ナナコ、驚きつつ見つめている「ちょっと、何この大きさ!?」

あきれてみているナナコの目の前で、炎の玉どんどんふくれて20メートルくらいのサイズになる。

「お姉さんこれ止められない!暑いです!!」


            挿絵(By みてみん)


やっぱりこうなるかと、ナナコが大きく手を振ると、魔力中和の波動が広がり炎の玉を覆う。

そのまま月が欠けるように炎の玉を侵食して消してしまう。

「うわあ、びっくりした!!」思わず尻餅をついたユミカ。


「そうかあ、やっぱり見ただけで魔法、覚えちゃうかあ」

これは早めに魔力の制御法を教えた方が良いなと思案するナナコ。

「ねえユミカ、今の魔法、自分の体のどこから出てきた感じがした?」

「うーん、よく判らない、体全体からぶわーっと?」

「だったら、魔法が出てくる場所をどこか一カ所に絞ってみてごらん」

「うーん、じゃあ右手の先から」


ユミカ、指を開いた右手を前に伸ばし「ファイヤーボール!」と、唱える。

右手の先に2メートルくらいの炎の玉が出現する。

「それじゃあ、そのままみぎりつぶす感じで右手をグーにして」と、ナナコが指示をする。

炎の玉50センチくらいに縮む。

それを見て「えいっ!」と、ユミカが指ではじくと、炎の玉が前方に発射される。

50メートルくらい飛んだところで池に落ちて水蒸気を残して消える。


「まだ出力が大きいね、今度は指一本だけ立てて、その先から出す感じで」

ユミカ、右手の人差し指だけ伸ばして「ファイヤーボール」と、唱える。

今度は伸ばした人差し指の先に10センチくらいの炎の玉が現れ、ゆっくりと前方に進む。


ユミカ、自分の出した炎の玉を見て気がつく「(アレ?まだ繋がっている?)」

炎の玉と自分の指先の何かが繋がっていると感じ取ったユミカ、

「えいっ!」指先を大きく横に振ると、炎の玉もその方向へ向きを変えて進む。

「え、何、今の?」向きを変えた炎の玉を見て、驚くナナコ。

「うん、炎の玉と自分の中の何かが繋がっていて、動かせる気がしたんでやってみたら出来た」


「(まだ教えていないのに・・・この子は魔力コントロールを勝手に覚えちゃったの?)

こうなったら色々覚えてもらって、自分で試行錯誤させた方が良いみたいね」

ナナコ、ささやかな威力しかない魔法を次々詠唱してユミカに見せる。

「ライトニングボルト」「フリーズ」「ウィンド」「ムーブ」「シャドウ」・・・

ユミカ、全ての魔法を一度見ただけで習得してしまい、全ての魔法を数倍の威力で再現してみせた。



「試しに、人差し指の先っちょからビー玉サイズの炎を放出するイメージで魔法を放ってみて。」

ユミカ言われたとおりに指先から魔法を放つと、ビー玉よりずっと大きい直径10センチくらいの炎の玉が出現。

「んー、発射!」ユミカがその炎の玉に命令(?)すると、

炎の玉がすごい速さで飛んでいき、100メートル程先の水面に突入、大きな水柱が上がった。

「うーん、一般人の魔法の7,8倍の威力か・・・」


さらに、ユミカが両手を広げて「シャドウ!!」と唱えると、ユミカを中心に半径50メートル程の範囲が漆黒の闇に包まれた。

「うわーっ、真っ暗で何にも見えない!!お姉さん助けて!」

自分の放った魔法を消す術は知らないユミカだった。

「覚えなきゃいけないことが一杯ありそうね」ナナコが大きく手を振り魔力を中和させると、

あたりを覆っていた闇は綺麗に消え去った。

「こんな感じで、いろんな出力で魔法を唱えて失敗を繰り返していけば、自然と魔力制御は身につきそうだね」

ちょっとだけ楽観視するナナコ。

「うん、これ楽しい!」この池の上ならば、どれだけ魔法を撃っても誰の迷惑にもならない。

ユミカ、その後もばんばん魔法を撃ちまくる。

「(え?まだ魔法打てるの?この子の魔力、底なしかしら)」

いくら魔法を放っても魔力切れを起こさないユミカに、あきれるナナコだった。

そんな感じで二人の魔法訓練は暫く続いた。


池の底で眠っていたソレは、頭上を飛び交う強力な魔力の波動を浴びて目を覚ました。

「(おいしそうな物が池の上を舞っている)」

体長10メートル程のソレはゆっくりと池の底を畔に向かって歩き始める。



20分程して、「ふう、さすがに疲れたかな」と、ユミカ、畔の草地に座り込んでしまう。

「派手に撃ちまくったわね、ちょっと異常よユミカの魔力量は」

「えー、そんなのわかんないよ」

ユミカ、右手人差し指を伸ばし「ファイヤーボール」と唱えるが、何も起きない。

「あれ?もう出ない?」


今日の訓練はここまでのようだ。

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」歩き始めるナナコ。

「あ、あ、足に力が入らない、立ち上がれないー」ユミカ、ぺたん座りしてしまう。

「そお、?どうする?手を貸す?おんぶしようか?」

ユミカしばらく考えて「・・・いや、自分で歩く」何とか立ち上がろうとする。

その時、池の水面が泡立ち、ソレが浮上してくる。


ユミカ、池の底から何かが浮上してきて水面に顔を出したことに気付く「お姉さん、あれ、何?」

「え?池の中から・・・何?・・・」ナナコも驚き不思議がる。

水面を割ってソレの全身がゆっくりと現れる。

驚くナナコ、尻餅をつく「ひっ!魔、魔獣!?」

「あの、魔力の多い人間を食べちゃう奴?」生の魔獣は初めて見る二人、腰が抜けたのかなかなか起き上がれない。

水中から現れた巨大なサンショウウオに似た単眼の魔獣はゆっくり陸に上がり、ユミカ達の方ににじり寄ってくる。

「い、いや、今、魔力空っぽだから!おいしくないから!!」びびるユミカ。

恐怖で固まってしまい動けないナナコ。


          挿絵(By みてみん)



陸に上がった魔獣、口から長い触手を数本、二人の方へ伸ばしながら、じりじりと二人ににじり寄る。

伸ばした触手が地面に触れると周囲の雑草が溶けて白い煙が立ち上る。

「「い、いやーーー!!」」腰を抜かしたままの二人、逃げ出すことも出来ず恐怖に震えている。

ながい触手を伸ばしながら魔獣が二人に向かってにじり寄ってくる。


魔獣が触手を伸ばし、もう少しでユミカたちに届きそうになったとき、

ズドーン!!

頭上から一筋の光線が降り注ぎ、魔獣の頭に命中する。

頭に大きな穴が空いた魔獣が力なく倒れる。

ユミカ、頭上を指さし「お姉さん!あれ!魔特隊だ!!」


絶命した魔獣のすぐ近くに上空からゆっくりと、らせん状に旋回しながら魔特隊のMビークルが降下して来る。

コクピットから男性が一人、身を乗り出してこちらに呼びかけている。

「いやあ、危なかったですねえ、おけがありませんか?」


降下してきたMビークル、やがて畔に着地してコクピットからその男性が降りてくる。

「やあ、どおも!自分は、魔特隊パトロール班の脇坂と言います」

「はあ、どおも、林ナナコです」

「池上ユミコです、助けていただきありがとうございました」

腰を抜かしてぺたん座りしたまま魔特隊の隊員にお礼を言うナナコとユミカ。

「アレ?やっぱりナナコちゃんだ!僕ですよ、中学で3年間同じクラスだったコーイチですよ、脇坂コーイチ!」

「え、嘘!コーちゃん!!なんで魔特隊?!こんなところでどうして?」 


            挿絵(By みてみん)

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