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魔女の棲む島 ー竜頭島の魔女ー  作者: 掟


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act.2 令和9年(西暦2027年)2月初旬 その3

「ユミカ君」島神が話しかける。

「はい」

「こっちの世界に戻ってきてから魔法を使ってみたかね?」

「はい、何度か」

「威力に差があっただろう」

ユミカ、夜中に病室でこっそり「ライト」の魔法を使ってみた事を思い出しながら、

「はい」ユミカ、少し落胆して、「こちらでは10分の1くらいにしか・・・」

「ユミカ君が6年間暮らした異世界、「光和世界」だったか?

その世界は「魔想現実空間」の中にある。

その中に無数に存在している異世界では、全ての原子が魔粒子(魔素)で出来ている。

魔素は魔法の威力を高める力があるから、魔素の濃度が濃い異世界では、

魔素濃度の薄いこちらの世界と比べて、魔法の威力は10倍以上差があるという事だ」

「え?そんなに差があるんですか?」

「ふむ、わしはこの島の魔素濃度くらいでちょうど良いと思っとるがの」

島神、うんうんと頷きながら。


「さて、そろそろ本題に入るとするか」

島神様、気持ちをあらためて、

「これよりユミカ君に憑依しているマモリの魂を、ユミカ君の魂から分離する」

急に名前を呼ばれたユミカが手を上げる「はい、島神様、質問です」

「うむ、質問を許すユミカ君」

「その、1000年前に結界を張って村を守ったというマモリさんの魂が、

どうして私の魂に憑依しているんですか?」

「良い質問だ、答えよう」


西暦1022年頃 竜頭島 巫女マモリ


竜頭島の中央に木こり達の村があった。

その村の娘、「マモリ(10才)」は、島神様への毎日の祈りを欠かさない信心深い少女だった。

ある日、竜頭島は邪鬼の侵略を受け、海辺の三つの村が占領され、

村人達が鬼人にされていた。

近隣の村が化け物(邪鬼)に襲われた事を知った木こり村の村人達は、

「次は自分たちの村が襲われるに違いない」と、恐怖に震えていた。

そんな中、マモリは今日も島神様にお祈りを捧げていた。


挿絵(By みてみん)


「島神様どうかお救いください、海から気持ちの悪い化け物がやって来て、

隣村の人たちを鬼に変えて暴れています」

この日のお祈りには、「願い」が込められていた。

「この村だって、明日にも鬼や化け物に襲われるかも知れません。

怖いです、恐ろしいです、村の人が鬼にされるかも知れません。

この村に邪悪な物が入ってこないようにお守りください」

本人は全く意識していなかったが、マモリの「村を守りたい」と願う祈りは、

自ら邪鬼避けの結界を生み出し、村を覆い、

そして守った。


マモリは数ヶ月祈り続け、結界はその間ずっと維持され、村を守り続けた。

やがて、島を訪れたグエンディズらの協力の下、領主達の討伐隊が邪鬼と鬼人の討伐に成功し、

邪鬼避けの結界に覆われたマモリの村は邪鬼に襲われずにすんだ。

マモリは祈りの力で結界を張り村を守ったのだった。

その様子を見ていた島神は、マモリに神託を下ろす。


「マモリよ聞こえておるか?儂じゃ、島神じゃ」

真夜中、就寝中だったマモリ、突然の神託に慌てて跳ね起きた。

「し、島神様ですか?」

「そうじゃ、マモリには先に謝らなければならん。このたびは邪鬼の侵入を許してしまい、

マモリに大きな負担を掛けてしまった。大変すまんかったの」


「そんな・・・、島神様、私はただいつもと同じように、お祈りを捧げただけです」

「そうやって、毎日祈りを捧げ続けた事で、

お前は邪鬼を寄せ付けない邪鬼避けの結界を張る力を得たのじゃ」

島神はマモリに結界を張る力が芽生えた事を教える。

「祈りの力で結界を張り、村を守ったこと、大変見事であった」

島神の言葉に恐縮するマモリ。「そんな・・・私なんて・・・」

「そこで儂からマモリに頼みがある」

「え!?島神様が私に・・・頼み?」


「儂も長い事、それはそれは長いこと、この島の島神を勤めてきたが、

最近、神力が衰えてきてしまった。

島への邪鬼の侵入を許してしまったのも、これが原因じゃ。

おそらく後千年もすれば儂の神力は消えて無くなってしまうじゃろう」

「そ、それは、島神様が神様でなくなってしまうという事ですか?」

「そういうことじゃ」

「・・・」マモリ、言葉を失う。


「それでじゃ、マモリ、おぬしに儂の後継神になって欲しいのじゃ」

「え!?私が島神に・・・?」理解できずに戸惑うマモリ。

「まあ、何も明日からすぐに島神になれと言うわけではないが」

「はい・・・(あー、びっくりした)」

「ちょっと、千年程修行をして貰いたい」

「千年!?・・・無理です!人はそんなに長生き出来ません!」

島神の無茶ぶりに慌てて首を振るマモリ。


挿絵(By みてみん)


「それはもちろん承知している。

おぬしの魂には、一度その体から離れて貰おうと思っておる」

「(え?それって死んじゃうってこと?)」急に怖くなるマモリ。

「魂だけの存在になっても死ぬわけではない。

これからおぬしに「転移」と「憑依」の力を与える。

その力を使ってこれから千年間、人から人へ、魂から魂へ

「転移」と「憑依」を繰り返しながら渡り歩き、宿主の魔力を拝借つつ、

ずうっとこの島に邪鬼避けの結界を張り続けて欲しいのじゃ」

「憑依したら、宿主の人はどうなるんですか?」


「どうもならんよ、憑依したマモリの魂が宿主の体を乗っ取ることは出来んし、

宿主も自分が憑依されている事に気付く事もないじゃろう」

「では私、何も出来ないんですか?」

「おぬしはただ、宿主の生き様を内側から眺め、体験するだけじゃ。

その間、常に島に結界を張り続けるのだ、辛いだろうが、千年間がんばってくれんかのぉ」

「ハイ・・・わかりました、がんばります」



令和9年(西暦2027年)2月 竜頭島 大茸神社


「で、修行は達成されたんですか?」ユミカが島神に尋ねる。

「うんにゃ、3年足りんかった」

「えー・・・997年」

「6年前の交通事故じゃ」

「6年前って、それ・・・あたしの家族の・・・」

「その事故じゃが、他にも巻き添えを食った親子がおってな」

聞いていたグエンディズ、思わず天を仰ぐ「(ああ、あれか・・・)」

「その事故で重傷を負って、一週間後に亡くなった者がおる」


「山王サンゴか」思わず口に出すグエンディズ。

「え?『創造の魔女』サンゴさん?」ジョーンも驚いて口に出す。


「そうじゃ、マモリが最後に憑依しておったのがその「山王サンゴ」という女性じゃ」


「それでか!」グエンディズが気付いた。

「おそらく、サンゴなら自分にマモリの魂が憑依していることに気がついていたはずだ。

重傷を負い、自分の死を予見したサンゴが、マモリの魂を安全に生かすために、

同じく事故に遇い近くで気を失っていたユミカ君にマモリの魂を移し替えたのか」

ユミカがグエンディズに尋ねる。

「あの・・・なにか特別な人だったんですか?その「サンゴ」って人」

「ああ、グーさんの、数少ない友人の一人で、1000年に一人レベルの天才魔女」

代わりにジョーンが答える。

「『創造の魔女』って呼ばれていてね、物理法則に囚われない、オリジナルの魔法を作ることが出来た人」

「オリジナルの魔法を作るって・・・そんな人がいたんですか」驚くユミカ。



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