act.2 令和9年(西暦2027年)2月初旬 その2
竜芽寮に向かって移動すると、消えずに残っていた河童達数人がぞろぞろと付いてくる。
竜芽寮玄関前まで来ると、そこで買い物から帰ってきた「ヤヨイ」が待っていた。
「いらっしゃい、あら、あなたがユミカさんね、
私、寮母のヤヨイです、これからよろしくね。」
「ハイ・・・よろしくお願いします・・・外人さんですか?」ユミカ、ヤヨイの肌の色がかなり濃いのに驚く。
弓指ヤヨイ 見かけ20代後半、実年齢430才 魔女 幻術師
「うふふ、驚いた?私のお父さんはアフリカ人だったの、
450年前にポルトガル人宣教師のお供で日本に来てそのまま居ついちゃったのよ」
ヤヨイ、自分の出自を簡単に説明する。
「こんな感じの人よ」
ヤヨイのとなりに立体映像が現れる、
和服を着た、かなり大柄な黒人の男性だ。
「うわっ」驚くユミカ。
「便利だろ、これ。ヤヨイは自分の記憶や、思い描いた物を自由に映像化できるんだ。
それも3Dで、専用メガネ無しで」
「わあー、面白そう!」ジョーンの説明を聞いたユミカ、早速まねしてみる。
「うーんと、こんなかな?」
ナナコの平面画像が現れる。ユミカ、
クイックイッと角度を変えてみるがなかなか立体画像にならない。
「うーん、これでどうだ!」
ぽん!と、平面画像が立体画像になる。
「お、器用だなユミカ君、やり方、もう覚えたのか」
感心するグエンディズ。
「ねえ、これ、誰さん?」尋ねるジョーン。
「この人はおねえさん・・・
6年間、親代わりになって私を育ててくれたナナコさんです」
「良いねえ、70年代ファッション。
あたし、この時代好きだったなあ・・・」懐かしんでいるジョーン。
「(え?何?この人達、何時代の人?)」首をひねるユミカ。
「今夜、露天風呂でギルドの妖怪連中が
ユミカ君の歓迎会やるから、よろしくね」グエンディズがヤヨイに告げる。
「そうなるだろうと思って、キュウリと駄菓子、
沢山買ってきましたよ」笑顔で答えるヤヨイ。
ユミカ達に付いてきた河童達から歓声が上がる。
ユミカ、ちょいと疑問を感じて、「キュウリはわかるんですけど、河童の好物らしいから。
でも駄菓子って・・・」
ヤヨイ、笑いながら答える
「ここの河童たちは、みんな駄菓子が大好きなの。お子ちゃまでしょ?」
その後、「こっちも見ておこうか」と、
ジョーンの案内で隣接する大茸神社へ向かっていると、
巫女で、宮司も兼ねているトモエ(見た目20代)が社務所から出てきて話しかけてくる。
「その、ユミカって子、ちょっと借りるよ、会いたがっているお方がいるんだ」
中原トモエ・大茸神社宮司 見かけ20代前半、実年齢875才 女武者 怪力
令和9年(西暦2027年)2月 竜頭島 大茸神社
トモエに連れられてユミカ、グエンディズ、ジョーンの3人と、
付いてきた野次馬河童達も一緒に拝殿裏の本殿に向かう。
「え?神社の本殿って、部外者立ち入り禁止じゃ・・・」ユミカ戸惑いながらトモエに話しかける。
「ここの責任者はあたしだからね、それに、
君に会いたがっているお方がこの中におられるのだよ」
トモエが本殿の入り口を開き、皆を引き連れて中へと進む。
車椅子のユミカは、河童達が御神輿を担ぐ要領で車椅子ごと持ち上げ、階段を上る。
やや狭めの薄暗い室内は、外とは明らかに異なる神聖な雰囲気を感じる。
「ユミカ君、良く来なさった。さあそのまま部屋の真ん中まで」
どこからともなく男性の声が聞こえる。
ユミカ、車椅子のまま本陣板の間(外陣)の中央へ。
一段高くなっている舞台状の板の間(内陣)の奥がふわりと明るくなり、光が満ちあふれてくる。
そのあふれ出す光の中からゆっくりと人影が現れる。
「島神様が顕現なされた」トモエが静かに伝える。
「皆、失礼の無いように」トモエ跪き、頭を垂れる。
内陣から身長120センチくらいの小さな老人が現れ、こちらに数歩歩み寄る。
「あ、島神様だあ!」河童達が騒ぎ始める。
「お久しぶりー」
「お歳暮ありがとうございました!」
「四月の例祭で、また宴会しましょう!」
「良い焼酎が手に入りましたよ!」
トモエ、騒ぐ河童達をギロリとにらむが、完全に姿を現した島神様は苦笑い。
「ごほん」と一つ咳払いをして島神様、「今日、ユミカ君にここへ来て貰ったのは・・・」
「アレ?今日はシリアス回?」
「パターン崩しか!」
「いつも通りのが良いのに・・・」
「視聴率落ちますよww」
「ええい!河童ども、静まらんか!」島神様が一喝する。
「今日ユミカ君に来て貰ったのは、
ユミカ君の魂に憑依しているマモリの魂を分離するためじゃ」
「マモリ・・・、え?誰ですかそれ、分離って?」
突然知らない人の名前を出されて戸惑うユミカ。
「では、最初から説明するかの」説明を始める島神様。
「今から1000年程前の事じゃ」島神が語り始める。
「マモリは島の中程にある小さな村の娘でな、特殊な霊力を持ち、
邪悪な物を寄せ付けない結界を張る能力の持ち主だった」
島神様の背後にスクリーンが現れ、当時のマモリの姿が映し出される。
「あ、座敷童・・・」マモリの映像を見たユミカがつぶやく。
映し出されたマモリの姿は、
ユミカを現世界に引き戻した座敷童にそっくりだった。
「ある日、この島に大量の邪鬼が現れ、いくつかの村の村人を鬼人化した」
スクリーンに当時の映像が映し出される。
「鬼人にされた島民達は邪鬼に操られ
鬼門岳内部の巨大な火山洞窟に邪鬼達のアジトを作らされた」
スクリーンに、山腹に巨大な三本の角が生えた鬼門岳の映像が出る。
「邪鬼どもは、その後、他の村の村人も鬼人化しようとしたが、
マモリの張った結界のおかげで、多くの村が守られたのだ」
「あ、島神様、質問です!」ユミカが手を上げる。
「うむ、質問を許すぞ、ユミカ君」
「はい!ずっと聞こうと思っていたんだけど・・・
あの、どんぶりひっくり返したような山・・・鬼門岳でしたっけ、
そこから生えている、三本の角みたいなアレって何なんですか?」
「アレは大気中の「魔素」を集める装置らしいのぉ・・・」
答える島神様も、そんなに詳しくはないらしい。
「私が説明しよう」グエンディズが割って入る。
「あの三本の角は、大気中の魔素を吸収して、
邪界(邪鬼達の住む世界)に送るための装置だ」グエンディスが説明を補足する。
「まあ、この世界と邪界を繋ぐ「邪界トンネル」の完成は
私と仲間達で阻止したから邪界に魔素は送られてはいないけどな」
西暦1025年、鬼門岳を遠目に見ている、武士ライコウとグエンディズ達
「はい!魔素ってなんですか?」ユミカが質問。
「魔力の元だな」グエンディズが答える。
「空気中に含まれる、酸素とか窒素みたいな物で、
人が呼吸をすると自然に体内に取り込まれ蓄積されて、それが魔力になる」
「実は、地球上の魔素濃度は、ここ1000年程の間に
十分の一くらいに落ちてしまっておる」島神、残念そうに告げる。
「だが、皮肉な事に邪鬼が作ったあの三本角が島の周囲の魔素をかき集めておる。
そのおかげで、この島の魔素濃度は1000年前と変わらぬ濃さが保たれておる」
「おかげで俺らも安心して生活できるって訳だ」河童達が補足する。
「魔素濃度は死活問題だからな」
「俺たちみたいな妖怪が安心して生存できるのは今じゃこの島くらいだ」
「まー、そんな感じ」




