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魔女の棲む島 ー竜頭島の魔女ー  作者: 掟


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act.2 令和8年(西暦2026年)11月 竜頭島 グエンディズ・ウィルト  その4

6世紀、ヨーロッパ各地に「邪鬼」と呼ばれる謎の生き物が出現、

人々の魔力を吸い取り、命を奪っていた。

西暦525年頃、グエンディズは数人の仲間と「邪鬼討伐隊」を結成、邪鬼討伐を行うが、

数年後、邪鬼の集落を襲撃するも返り討ちに遭い、仲間達と共に命を落とした。

その時、とっさにグエンディズは仲間達の魂を自身の魔力で包み込み保護した。


魔力に保護されたグエンディズと仲間達の魂は、共に同じ異世界(北欧神話の世界)に流れ着く。

流れ着いた魂は、そこで大気中の魔粒子を吸収して肉体を再構成し、魂は新しい「肉体」を得た。


挿絵(By みてみん)


魂の記憶する形で再構成されたグエンディズ達の新たな「肉体」は、

再構成されたままの状態を維持し続けるため、老いることがなくなり、「不老不死」となった。


グエンディズはそこで、運命の女神ノルン3姉妹から時と運命を見る術を学び、

その延長線上にある「時と空間」を操る魔法を身につけた。

200年後、グエンディズらは「異世界」と「現世界」の間を渡る手段を手に入れ、

故郷の「現世界」に戻ってきたのだった。




令和8年(西暦2026年)11月 竜頭島


ユミカが目覚めた日の翌日、「竜芽寮」午前8時。

寮生達(中学一年から三年生)は皆、登校して寮には残っていない。

日課の朝の散歩から帰ってきたグエンディズは、同じく朝の畑仕事を済ませたジョーンと、

寮母のヤヨイと三人、食堂で同じテーブルに着き、朝食を摂っていた。


ヤヨイ、「へえー、じゃあ、その子も異世界に転成していたんだ」

「でもその子、死んで転成したんじゃないよね、

6年間意識不明?眠っていた感じなのかな?」と、ジョーン。

「で、意識だけ異世界に飛んで、転成して、6年過ごして、

また意識がこっちの世界の自分の体に帰ってきて目覚めたって感じ?」

昨日の夕食に出たボルシチの残りをつつきながらジョーンが尋ねる。

「戻ってきたときの状況に、まだはっきりしないところがあるけど、

だいたいそんな感じかな」グエンディズが答える。


「で、どうするの?その子、

小学校に入る前に異世界に飛ばされたんでしょ?」ヤヨイがユミカのこれからについて尋ねる。

「それなんだけど、その子、あっちの異世界で小学校に通っていて、今、六年生だって」

「ふうん、じゃあ、4月から中学生じゃん」ジョーンは、割と軽く考えている。


「あら、何か面白そうな話ね」高校の制服を着た少女が階段を降りてきながら話しかけてきた。


挿絵(By みてみん)

   弓指サトミ、16才(高校1年生) 理解・分析スキル


「おや、サトミ、学校は?」ジョーンが尋ねる。

階段を降りて食堂に入った「弓指サトミ」が、三人と同じテーブルに着く。

「昨日まで文化祭だったからね、登校は午後からでOK」


弓指サトミはこの竜芽寮のOG、

三月に中学を卒業し四月から高校に通っているが、退寮せずそのまま寮で生活している。

「眠り姫って、たしか六年くらい前に一家四人が交通事故に巻き込まれたって奴よね」サトミ、記憶を掘り起こしながら、

「で、幼い女の子が一人だけ生き残って意識不明になったってやつ?」


サトミ、すでに朝食は済ませているが、ジョーンの食べているボルシチを横からつまみ食いしつつ、

「かすり傷程度のケガだったのに、それ以来ずうっと眠り続けているとか」

「へえ、よく知ってんじゃん(こら!あたしのボルシチ)」

「小4くらいの時にけっこう話題になったから

(ちょっとくらい良いでしょ、昨日私、帰りが遅くて外食しちゃったから)」


「で」ジョーンが尋ねる、「その子、こっちの小学校には通っていないわけだけど、

中学に上がれるの?」

「うーん」考え中のグエンディズ、「体力が回復してから学力テストを受けてもらうつもり」

ジョーン、にやにやしながら「グーさん、ずいぶん気に掛けてるじゃんその子、

入院費用も肩代わりしているって聞いてるよ?スカウトしたいわけ?有望なの?」

ジョーン、サトミに横取りされないようにボルシチの皿を抱え込んで、「キープしちゃうの?」



同日午後、グエンディズが再びユミカの病室を訪ねる。


「今日が2026年11月だって、本当ですか?」ユミカがいきなり、病室に入ってきたグエンディズに尋ねる。

「ああ、今日は確かに2026年、令和8年11月5日だ」

「本当に未来に来ちゃったんですね、私」

「まあ、キミの場合は元の場所に戻ってきた・・・

と言うか、キミの肉体は6年間この病院から一歩も外には出てはいないのだけどね」

「でも私は6年間ナナコ姉さんと一緒に暮らして、

学校にも通ったし、勉強もしたし、友達とも遊んだし・・・」

「ああ、それを否定しているわけじゃ無いんだ、

キミが6年間別の場所で生活し、学校にも通ったという事は、

実際に経験したことだと私は理解している」


「でも」と、グエンディズ、「君が6年間暮らしたのは過去の世界じゃ無い、

こことは別の「異世界」と呼ばれる場所だ」

「私が一昨日までいたのは1972年、光和47年でした、

だから54年前の過去の世界じゃ無いんですか?」

「西暦は同一の物を使っているようだが、元号が異なるな。」

「元号?」

「1972年は光和47年ではなく、昭和47年なんだよ、この世界では」


「じゃあ、私がいたのは過去の世界じゃなくて・・・」

「うん、異世界だな、この現世界と非常によく似た」

解説するグエンディズ。

「君たち家族は6年前この島の県道で交通事故に遭った、

その事故で、キミは運良く軽傷で済んだが、他の3人、

両親とキミのお兄さんは亡くなってしまったんだ」


「!!お兄さん!!」叫ぶユミカ。

「私今まですっかり忘れていました、お兄さんのこと」動揺するユミカ。

「パパ!ママ!思い出しました!!パパとママの顔、名前、声!!」

興奮するユミカ。

「今までずうっと、思い出そうとしてもどうしても思い出せなかったのに!」

動揺するユミカ。

「やっぱり両親は亡くなっていたのですね・・・それにお兄さんも」

ずっとそうじゃないかと思い続けていたことだったが、

今、それを事実として知らされてしまった。

さすがにショックを受けるユミカ。

「(この子の記憶・・・いや、魂に細工した奴がいるのか)」考え込むグエンディズ。

「(この子の意識が肉体を離れ、異世界に引き込まれる直前に、

何者かが意識の一部を、事故死した家族の記憶を切り取ってこっちの肉体に残したのか)」

「私、どうしてもパパやママの顔や声を思い出せなくて、

お兄ちゃんがいたことさえすっかり忘れていて・・・」

泣き出すユミカ、「パパ、ママ、お兄ちゃん、忘れてしまってごめんなさい・・・」

「(記憶が無ければ、家族を失った時に受ける精神的ダメージが少なくて済むか・・・)

今はすっかり思い出せているんだね?」

「はい、あの日、おじさんや皆と一緒に電車に乗って・・・、

その時、電車から海が見えて、赤い角の生えた山が見えたんです。」

「ああ、ここは島だからね、海はすぐ近くだ、

角の生えた山は『鬼門岳』だね、ちょっと曰く付きの山だ」


グエンディズはユミカの様子を観察していた。

「(一時的にかなり動揺していたが、すぐに平静さを取り戻した。

自分の体内の魔力をうまくコントロールして心の揺らぎを鎮めている)」

感心するグエンディズ。

「あっちの世界で・・・とりあえず「光和世界」とでも呼ぼうか、

君はかなり良い先生に魔法を教わったみたいだね」


「あの・・・」ユミカ、おそるおそる尋ねる。

「私、いつまでここにいれば・・・早くおうちに帰りたいです」

「それは、ナナコさんの待つ家の方かい?」

「はい」


「うーん」グエンディズ考え込む。

「今、実在しているって・・・だったら私、帰りたいです」

「「光和世界」ねえ・・・座標が・・・場所がわからないと、

広い砂漠の砂の中から、特定の小石を探し出すようなものだから・・・」

「そんな・・・場所がわからないって・・・私、一昨日までそこにいたのに・・・」

「申し訳ないね、数が多すぎるんだ、「異世界」は」


挿絵(By みてみん)


グエンディズは思う、

「(先読みの魔法で見た限り、ユミカはかなり腕の立つ魔法使いのようだ、

しっかり目の届くところに置いておきたい)」

「ユミカ君、体力が回復してきたら・・・出来れば年内に、学力テストを受けて欲しいんだ、

キミがこっちの世界で中学に進学できるかを判断したい」

「はい、大丈夫です、受けます」

ユミカ、自信ありげに「私、小学校の成績は良い方でした」



その数日後、グエンディズが小学六年生の使う教科書を、全教科用意してユミカに与える。

ユミカは全ての教科書に目を通す。

一部、自分が学んできたことと内容が異なる部分もあったが、

自分の学力に自信を持つことが出来た。


12月下旬、ユミカは学力テストを受け、小学校卒業程度の学力があることを証明し、

4月から中学校に進学することが決定する。


ユミカのリハビリ入院は1月いっぱいまで続き、2月初旬、無事退院できた。



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