098 話の通じない奴っているよな
アクセスありがとうございます。
まさか、また会うとは思っていなかった……そんなことを思いながら、俺は男の拳を避けたり、ガードしたりする。
「いてぇ! クソが、こいつが俺の拳に何かしやがった!」
「何かしているのは、殴っているお前たちだろ。人を殴って怪我をしたとでも言いたいのか? 言いがかりにもほどがある」
「てめぇ……殺してやる!」
男がそう叫ぶと、懐からナイフを取り出した……はぁ!? 普段から持ち歩いているのか?
そんな疑問が浮かぶが、今はそれどころじゃない。
「健司!」
男がナイフを健司に向かって突き出した。健司はある程度余裕を持って避けているが、さすがに刺されるのはまずいと思っているのが分かる。それは、俺も同じだ。殴られるくらいならまだいいが、ナイフは別だ。
そして、それを見た2人目の男も、ナイフを取り出した。
「お前もかよ!」
2人目も健司に向かって切りつける。反応が少し遅れた健司を守るため、俺はとっさに腕をひっかけるようにして攻撃を止めた。その瞬間、ナイフが俺の腕の服を切り裂いた。そして……皮膚も少し切れる。
「っ……!」
痛いけど、あのままだったら健司に刺さっていた可能性があるから、これでいい。
そう思った直後だった。
「翼!」
健司が俺の方へ意識を向けてしまい、その隙に、健司の腕にナイフが刺さった。
「……っ!」
3cmくらいだろうか……筋肉に阻まれて、3cmほどしか刺さらなかったというべきか?
「健司!」
「まだ、大丈夫だ!」
そう言っているが、大丈夫なわけがない……さすがに危険度が上がった。健司は、ナイフを持っている男の手首を叩き、ナイフを落とさせる。そして、落ちたナイフを結界の中へ蹴り入れた。
これで、少なくとも武器を取り戻される心配はない。
「おい! こいつ、俺のこと叩いたよな? これって暴行罪とか、傷害罪なんじゃねえの?」
「いや、ナイフ持っているのに手こずるんだから、殺人未遂じゃね?」
本当に頭の悪いことを言っている……その罪って、全部お前らの罪なんだが?
そもそも、ナイフを持って襲いかかってきたのはそっちだろ。とはいえ、そんなことを説明している余裕はないし、説明したところで、こいつらに理解できるとは思わない。
残った2人目のナイフも、健司が何とか落として蹴り飛ばす。これで脅威度はかなり下がったはずだ。
それにしても……健司は相手が2人なのに、俺より余裕があるな……俺なんて、殴られすぎて全身が痛いのだが。
スキルで身体能力が上がっているから耐えられているだけで、普通ならとっくに倒れているんじゃないだろうか?
ナイフを落としてからもしばらく騒ぎは続いた。そして、ようやく遠くから音が聞こえてきた……サイレンだ。
サイレンの音が聞こえた瞬間、少しだけ安心した。すぐに警察が駆け付け、俺たちと馬鹿トリオを引き離す。
「まず、落ち着いてください。順番に話を聞きます」
警察官から事情を聞かれる。当然、向こうも事情を話しているらしい。ただ、聞こえてくる内容がひどい。
「こいつらが先に殴ってきた」
「俺たちは何もしていない」
「こいつに手を怪我させられた」
一部だけを切り取れば、本当のことも混じっている。俺たちが手を出したのも事実だけど、ナイフを持って襲いかかってきた相手から身を守るためだ。そもそも、最初に殴ってきたのも向こうだ。
俺たちは隼人が撮影していた映像と一緒に、自分たちの証言をする。しばらくすると、俺たちの事情聴取をしていた警察官が、馬鹿トリオの方を担当している警察官を見て、苦笑した。
向こうの警察官も、苦笑をこらえているのが分かる……不謹慎ですが、ご苦労様です。
現場での事情聴取が一通り終わったところで、健司が警察官に声をかけた。
「すいません。被害届を出したいのですが、どうしたらいいですか?」
「被害届ですね。怪我をされたということでしょうか?」
「はい。10分以上殴られています。それと、途中でナイフを取り出されて、殺すと言われました。実際に、俺と翼がナイフで怪我をしています」
「分かりました。詳しい手続きについて説明します」
警察官から、被害届の出し方について説明を受けた。
今日は酒も飲んでいて、この状態で車を運転して帰るわけにはいかない。警察もグランピング場の人も、危険だから今日は泊まっていくように言ってきた。
「明日の帰りに警察署へ来ていただければ、事情聴取の一部を簡略化できます。時間に余裕があるなら、警察署へ来てください」
「分かりました」
健司が答え、俺も頷いた。
それにしても……こんなことがあったのに、前に出ていた俺たちは、そこまで恐怖を感じていなかった。問題は、かなり怖がっていた女性陣だ。
男3人は、思ったより元気だった。少なくとも、俺は腹が減っていることに気付いたくらいだし、健司も同じだった。隼人も多少気疲れしてはいるが、余裕がないというほどではなさそうだ。
それに対して、女性陣は違った。そこまで食事を食べていないのに、空腹を感じるほどの余裕がなさそうだった。
そりゃそうか……目の前で男3人が怒鳴り、殴り合いになって、その上ナイフまで出してきたんだから、怖くない方がおかしいな。
警察が帰った後、俺と健司は食事を続けることにした。隼人は食欲はなさそうだけど、焼くのを手伝ってくれた。さすがに酒を飲む気分ではなくなったので、健司も酒は飲んでいない。
女子たちは、俺たちが食事を始める前に、部屋で休むようにお願いしている。今日は、ベッドをくっつけて5人で一緒に寝るらしい。
「とりあえず、今日は休んで」
「うん……」
「何かあったら、すぐ呼んでくれ」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




