096 マナーの悪い客なんてもんじゃない
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8人全員で集まったり、2つや3つに分かれたりしながら、思い思いに夕食まで過ごした。
そして、夕食はバーベキューだ。食材なども準備されていて、焼くだけの状態になっている。
「便利だな……」
思わず口に出してしまった。キャンプのことを考えると、これはかなり便利だ。食材を準備して、切って、持ってきて、保存して……そういう手間が全部ない。
とはいえ、キャンプは多少の不自由を楽しむのも醍醐味だ。どちらがいいとは言えないだろうな。
「翼、これもう焼いていい?」
「まだ。網を少し温めてからの方がいい」
バーベキューで料理ができる、できないは、そこまで関係ないと思う。それでも、料理できる組の俺と、免許を持っていなかった3人のうち、女の子2人がメインで焼くことになった。
「私、これ焼くね」
「じゃあ、俺は肉やるよ」
「お願い」
最後の1人は、料理音痴だけど片付けは得意ということで、片付けや掃除はその人を中心にすることになっている。適材適所ってやつだ。
グランピングをするにあたって、1つだけみんなに言っておいたことがある。
「普通はキャンプで言われることだけど、来た時よりも綺麗にして帰る気持ちで掃除しよう」
「今回は、ゴミを持ち帰らなくていいんだよね?」
「ああ。ちゃんと分別するだけでいい」
そう難しいことではない。施設側が処理してくれるとはいえ、適当に捨てていいわけではない。使わせてもらった場所なのだから、できるだけ綺麗にして帰る。これは普通のキャンプなら、当たり前だ。
網で肉を焼く時も、少しだけ気を付ける必要がある。肉を乗せて、そのまま放置すると焦げ付きやすいので、置いてすぐに何度か持ち上げて、置いている面が焼けるまで確認する。
野菜はそこまで気にする必要はないけど、肉などは生のまま置いておくと、網にくっつきやすいんだよな。
「これ、もうひっくり返していい?」
「ちょっと待って。今なら大丈夫」
「分かった」
網の上で肉が焼けていく……煙と匂いが広がる。外で食べる料理は、それだけで少し特別に感じる。
お酒に関しては、飲みたいメンバーが自分の飲みたいお酒を買ってきている。到着してから冷蔵庫で冷やしておいたものだ。
用意されたお酒もあるが、それは高かったり種類が少なかったりする。だから、自分たちで持ってくることを推奨している施設だった。
もちろん、しっかり分別するように言われているし、缶の中にゴミを入れたりもしない。
「じゃあ、乾杯しようか」
「お疲れー!」
「乾杯!」
それぞれが飲み物を持ち上げ、コップをぶつけ合う。俺は、お酒を飲まないので、ソフトドリンクを飲んでいる。
「うまい」
「キャンプで飲むと美味しいよね」
「グランピングだけどな」
「細かいことはいいの」
笑い声が広がる。肉を焼いて、酒を飲んで、くだらない話をする。最近はダンジョンや会社のことばかり考えていたから、こういう時間は久しぶりだった。
……こういうのも悪くない。そう思いながら、バーベキューコンロの近くで、お肉を焼きながら、焼き手特権の一番おいしい焼け具合の肉を皿に取る。
その時だった。
「……ん?」
何となく、嫌な予感がした……少し離れた場所から聞こえていた声が、さっきより大きくなっている。そして、その声は少しずつ近付いてきていた……嫌な予感が、当たったか?
マナーの悪い利用客の声が、こちらへ近付いてきている。俺は箸を置いて、声のする方向を見る。
せっかくの楽しい時間なのに……できれば、何事もなく終わってほしい……そう思ったのだが、どうやら、そう簡単にはいかないらしい。
「へぇ~、ここにも人がいるじゃん。しかも、可愛い女の子が多いぜ!」
「ほんとじゃん。しかも男が少なくね? なら、俺たちが相手してやるぜ」
明らかに酔っ払った男3人が、こちらに向かって歩いてきている……できれば、あまり近寄らせたくない。
キャンプ設営の能力については話しているし、効果も実際に確認している。それでも、女の子たちにとっては、あんな連中は恐怖の対象でしかないだろう。
「女の子たちは、いったん部屋の中に入って、鍵を閉めてくれ。それで、教えてもらった管理棟の電話番号に、エリア番号を伝えてほしい。多分、対応しきれないと思うから、怒鳴り声が聞こえたら110番して、警察に状況を説明してくれ」
そう言うと、女の子たちはすぐにグランピング施設のコテージのような建物へ入っていった。扉が閉まり、鍵を掛ける音が聞こえる。
これで、少なくとも女の子たちが直接絡まれることはない。
「おいおいおい、可愛い子ちゃんたちが部屋に入っちまったぞ」
「なんだ? 俺たちのことを歓迎してくれるのか?」
汚いセリフに、気持ち悪い笑い声。酔っ払っているからなのか、それとも元々こういう人間なのか……どちらにしても、関わりたくないタイプだ。
「隼人、お前はカメラを起動して、警察が来た時に備えて撮っていてくれ。翼の話なら、あの線の外に出なければ安全だからな」
そう言ったのは、健司だった。身長185cm、かなりガタイのいい男で、大学内では陰で「頭の良い筋肉」と呼ばれている。
実際、頭はかなりいい。学部でもトップ10に入るくらいには、優秀な筋肉だ。頭の良い筋肉と言われているだけあって、筋肉は本物だ。
ダンジョンにも潜っているが、本人曰く、体を鍛えるためらしい。特にダンジョンで活動したいと考えているわけではなく、単純に筋トレの延長としてダンジョンを利用している変な奴だ。
「おっ? なんかデカい筋肉が歩いてくるぞ?」
「なんだ、やる気かお前ら?」
「そんな度胸なんてないだろ」
そんなことを言って、3人がゲラゲラと笑っている。
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