094 長期休みに予定ができた……
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大学の友達には、ダンジョン関係で俺が何をしているのかは話していない。それでも、ダンジョンの話題自体は、大学でも普通に出た。
危険度が高い、需要が伸びている、若い人材を雇いたがる会社は多いが、リスクは背負いたくない……そんな企業が増えているらしい。
そこで、個人事業主になってもらい、そこへ仕事を依頼する形にする。そうすれば、正社員として雇う必要はない。
正社員が業務中に怪我をすれば、会社側が補償する必要がある。死んでしまった場合には、それ相応の見舞金なども必要になる。
そういった責任を避けるために、個人事業主へ委託して、それなりの報酬で働いてもらおうと考える会社が増えているらしい。
そんな話を、父親が世間話として弁護士の先生から聞いて、俺もその話を教えてもらっていた。
額面上の金額だけを見ると、それなりに高いから、飛びついてくる人もいる。ところが、実際には補償がなく、経費も自分持ちで、税金関係も自分で処理する。場合によっては、事務作業まで自分でやらなければならない。
結果として、額面ほど手元に残らない。
それでも契約上の不備がなければ、後から問題にするのは難しく、泣き寝入りするしかないケースも増えているらしい。そんな話をしてしまったせいか、友達から相談されることが増えた。
「これって、どう思う?」
「この条件ならやっても大丈夫かな?」
俺は、専門家じゃないけど、分かる範囲では答えた。
「個人事業主なら、額面だけじゃなくて、経費とか税金とか、実際にいくら残るかを見た方がいいと思う」
「あと、怪我した場合の補償がどうなってるかも確認した方がいい」
「契約期間とか、途中で辞められるかとか、損害賠償の条件とかも」
そんな条件を細かく確認する人間は、企業側からすれば面倒だろうし、契約が成立する確率も、当然下がることは説明する。
でも、俺はそっちの方がいいと思う。体が資本の仕事なのに、補償もなく、結果的に安い金額で使われる……そんな会社からは、最初から断った方がいい。
他にも、どこかの事務所に所属したり、マネジメント会社に依頼したりする方法もある。
ただ、それも注意が必要だったりする。事務所やマネジメント会社が、自分に不利な契約を結んでしまう可能性があるし、マージンを多く取られて、思ったより手元に残らないことだってある。
「所属するなら、条件をちゃんと確認してから契約した方がいいよ」
そう伝える。何度も言うが、俺は専門家じゃない。にわか知識で話している部分もある。
「俺の言ってることが全部正しいとは限らないから、実際に何かするなら、ちゃんと調べて、分かる人に相談するようにしてくれ」
これは何度も念を押した。
そして、2月中旬……試験も終わり、早い学部では、もう休みに入っている。俺も今日の講義で最後だ。
長期休暇に入り、特に予定は入れていなかったが、課題をきっかけに仲良くなったメンバーから、花見を兼ねてキャンプをしようという話が出た。
参加するのは8人……結局、俺が場所を探すことになったが、俺1人に任せるわけではなく、みんなで条件を出し合って決めることになった。そのあたりは、かなり好ましい関係だと思う。
キャンプは3月下旬……俺はキャンプをするなら道具が問題になることを説明した。テント、寝袋、調理器具、その他諸々……8人分となると、かなりの量になるので、そこで俺が提案した。
「グランピングにしない?」
全員が賛成してくれた。ただ、せっかくキャンプをするのだから、タープくらいは自分たちで張れる施設がいい。
できれば、キャンプ設営の能力で少しでも安全を確保できる場所……そんな条件で探して、何とか見つけた。
2泊3日……長いのか短いのかは分からない。でも、8人でゆとりのあるスペースを使えるなら、問題ないだろう。
「犬を連れていきたいんだけど、ペット大丈夫?」
「それなら探し直すか」
ペット可という条件を加えると、施設探しは一気に難しくなると思われたが、予定していた場所がペット可能だったこともあり、新しく探す必要はなかった。
問題というか、希望が1つあった……
「ミミちゃんも連れてきてほしい」
「いや、ミミは無理だと思うぞ」
「でも会いたい」
友達の集まりに楓を呼ぶつもりはない。となれば、ミミも来ない。そう説明すると、
「残念だけど、嫌がることはできないもんね」
と理解してくれた。念のため、ミミにも聞いてみる。
「ミミ、3月末に大学の友達とキャンプ行くんだけど、一緒に来る?」
「……にゃ」
「嫌だってさ、1人で行けって」
「……そうですか」
楓が苦笑する。
ミミは気分屋だ。無理に連れていく気はない。それに、ミミが嫌がることをする理由もない。
そして、3月の頭……ダンジョン探査局から父親へ連絡が入った。内容は、相変わらず協力してほしいという話だったらしい。
父親は、
「今後は、会社を作って仕事を管理する予定です」
と伝え、どうしても依頼したい仕事があるなら、連絡してきてもいいが、その場合は、相応の対価と細かい条件を文章にして、それを確約してもらう必要がある。
そう伝えて、電話を切ったそうだ。俺はその話を聞いて、少し安心した。
休みに入ってからは、暇な時間も増えたので、キャンプ設営について改めて色々と調べている。
ただ、大きく分かったことはない。結界は、今のところ何をしても壊れない。
強い衝撃を加えても、重い物を乗せても、持続的に負荷をかけても、やはり効果時間が短くなる様子すらない。
そして、24時間近く俺が範囲内に入らないと消える。結界内で、攻撃の意思や俺への悪意を感じ取るか、俺が使用禁止と思うと、自動で結界の外に押し出される。今のところ、それが分かっていることのほぼすべてだ。
「……まだまだ分からないことだらけだな」
でも、急ぐ必要はない。
会社の準備は、父親が進めてくれている。俺は俺で、大学を終えて、しばらくは自由な時間ができた。3月には、友達とのキャンプもある。
最近は、ずっとダンジョンや会社のことばかり考えていたので、久しぶりに何も考えずに楽しむ時間があってもいいのかもしれない。
……まあ、キャンプへ行く以上、キャンプ設営の検証はすると思うけど。せっかくのキャンプなのだから、楽しむことにしよう。
そう思いながら、俺は3月下旬の予定をカレンダーに書き込んだ。
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