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093 現実的な話

アクセスありがとうございます。

 何度か繰り返し、少しずつ勢いを強くする……それでも結果は変わらない。音すらしない。


 その後も、できる範囲でいろいろな実験をした。俺が範囲内にいない状態でも、結界が壊れる様子はない。これは、かなり重要な情報だった。


 少なくともモンスターなどに攻撃をされていても、結界の維持中に俺が中にいる必要はない。


 最後に、持続的な負荷をかける実験をすることになった。


 小さなタープを張り、結界の上に乗せたブロックが落ちないように周囲をブロックで囲み、結界の上にブロックを乗せた。


「これで、様子を見るよ。明日、確認して連絡する」


「お願いします」


 俺たちはその場を後にした。


 そして翌日……土建屋さんから連絡が入った。


『ほぼ24時間経つところまで、ずっと支え続けていた』


 結果を聞いて、俺は少し考えた……持続的に負荷をかけても、効果時間が短くなるわけではない。1トン近い重量を支え続けても、結界は何も変わらなかった。


 そして、24時間近く経過したところで、スキルの効果が切れて、ブロックが勢いよくタープを潰したそうだ。


 つまり……少なくとも今のところ、キャンプ設営のセーフティエリアには、俺が想像していたような「耐久度」というものは存在しないらしい。ミミの説明は間違っていなかった。


 攻撃されれば削られて、重い物を乗せれば効果時間が短くなる……そういったことは、この結界にはないようだ。


「……本当に、何なんだろうな。このスキル」


 俺は庭に張ったタープを見る……見た目はただのタープだ。でも、人間の力も重機も、1トン近いコンクリートブロックさえ止めてしまう、よく分からない安全地帯が存在している。


 キャンプ設営……最初に聞いた時は、役に立つのかどうかすら分からず、意味不明なスキルだった。それが今では、さらに全貌が分からないほどの能力になっている。


 まだまだ、分からないことだらけだ。だからこそ、もっと調べる必要がある。ただ……今回の検証で、1つだけはっきりしたことがある。


 少なくとも、このスキルは……当初、俺が想像していたより、ずっと凄いものなのかもしれない。


 会社を作るために、キャンプ設営の詳細を調べる……そんな生活をしていると、時間はいくらあっても足りない。とはいえ、大学を疎かにするわけにもいかない。授業にはちゃんと出るし、レポートも書いて提出する。


 世界が変わったからといって、大学の課題までなくなったわけじゃない。


「……これで提出っと」


 最後のレポートを確認して、提出する。こういうところだけは、以前と何も変わらない。ただ、友達関係には少し変化があった。


 以前、同じグループで行動していた友人たちの中には、ダンジョンを中心に生活するようになった人間がいる。そして、そいつらから課題を見せてほしい、写させてほしいと言われることが増えた。


 世界が変わる前は、同じグループの友達だった。だからといって、課題を丸ごと写させるわけにはいかない。俺まで不合格になる可能性があるのに、そんなことをするわけがないだろう。


 そもそも、ダンジョンができる前は普通に課題をこなしていたのに、ダンジョンができてからやらなくなった。


 原因なんて明らかだ、ダンジョンのせいだろう。


 俺も人のことを言える立場じゃない。大学以外のところへかなり時間を使っている。一応、大学もバイトも続けているし、スキルの詳細を調べるために時間を使っている。


 だけど、あいつらは、大学よりダンジョンを優先している。就職活動をしている様子もない。


 どうやら、本気で自分たちのことを「冒険者」と呼び、ファンタジー小説のようにモンスターを倒して生活するつもりらしい。


 実際、最近価値が上がってきた魔石という換金できるものがあるし、モンスターからとれる素材が換金できる以上、完全に夢物語というわけではない。


 それでも、俺には危うく見える。モンスターと戦う以上、怪我をする……最悪の場合、死ぬ。そのリスクを背負ったまま、将来のことまで考えているのかは分からない。


 現実的な人も多く、ダンジョンが現れて半年ほど経った頃には、自分たちには無理だと言って、ダンジョンへ行くのは遊び程度になった人間もいて、就職活動を始めた人もいる。


 ただ、面接で「ダンジョンに潜るのは構いませんが、怪我をするのであれば、内定を取り消します」と言われたという話も聞いた。それなら、ダンジョンへ潜らなくなるのも当然だ。


 もっとも、就職先が社員に対してダンジョンへ行くこと自体を禁止するのも難しいらしい。会社の業務ではない時間に、何をするのかまで制限するのは問題になる。でも、それで会社の業務に支障が出るならば、話は変わるとか。


 せいぜい、できればダンジョンには行かないでください……と、やんわり注意するくらいが限界らしい。


 実際に、若い会社員がダンジョンに潜って、重傷を負った結果、会社にそれなりの額の不利益が出てしまい、損害賠償が発生したケースが増えている。


 休日などの自由な日に、何をしようが勝手ではあるが、危険なダンジョンへ潜り、その結果、怪我をして会社に損害を出してしまったのであれば、話は変わってくるからな。


 俺自身も、就職活動を始めていた。ただ、内定をもらえるところまで進んだ企業はなかった。


 今なら、ダンジョン関係に力を入れ始めている企業が、是非とも欲しい人材になっている可能性はある。


 でも、それはそれで悩ましい……大学で勉強したことを、そのまま生かせる仕事とは限らないからだ。


 そこへダンジョン探査局からの話が来て、色々と考えているうちに、自分で会社を立ち上げた方がいいんじゃないかと思うようになった。そして今は、就職活動をしていない。


 居酒屋の店長にも、その話はしてある。


「正社員でもバイトでもいいから、残ってくれるなら歓迎するぞ」


 そう言ってもらえている。


 革細工の店長に、この前、久しぶりに会うことができて、同じような話をすると、


「今みたいに自由出勤でいいなら、続けてもらって構わないよ」


 と言ってくれた。都合のいい人材扱いなのは否めない……それでも、受け入れてもらえるという事実は、今の俺にとってかなり大きな安心感があった。


 就職先が決まっていない。だけど、会社を作ると決めた。それが上手くいく保証なんてどこにもない。そんな状態で、戻れる場所があるというのはありがたい。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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