092 キャンプ設営の謎能力
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スキルの能力については、会社ができて、ダンジョン探査局との本格的な交渉が始まってから、段階的に開示していく予定だ。
どこまで話すのか、何を条件にするのか……どの情報を出すことで、こちらが有利になるのか。逆に、知られたら不利になることは何なのか……そういうことを考えながら、できる限りこちらに不利にならない形で交渉していく。
それまでは、能力について知っている人間は少ない方がいい。
父さんはそう考えているようだった。俺も、その考えには賛成だ。
最近のニュースを見ていれば、なおさらそう思う……キャンプ場で、よく分からない3人組が俺たちを一方的に非難してきたこともあった。大勢の人間を守るために必死で戦った、とある市の人たちに対して、後から批判的な態度を取る人間もいた。
自分たちは何もしていないのに、誰かを責める……そして、自分たちの言っていることが正しいと思い込む。そういう人たちは、声が大きい。声が大きいから、同調する人間も集まりやすい。
そんな連中に、俺のスキルの情報まで渡したら、面倒なことになる可能性が高いのは火を見るより明らかだ。人々が困っているんだから、善意で助けるべきだ。
対価を求めるなんておかしい、ボランティアで人を助けろ……そんな流れを作る人間だっているだろう。でも、それを言っているお前らは、普通に仕事をして給料をもらって生活するんだろ?
ボランティアは、強制するものじゃない。少なくとも俺は、そう思っている。
今回協力してくれる土建屋さんも、別に何かを企んでいるわけじゃない。単純に、俺のスキルの内容が気になったらしい。だから、1日だけ検証に付き合ってくれることになった。
それから1週間後……俺は、楓とミミを連れて、指定された場所へ向かった。
到着したのは、店長の友人が働いている会社……というより、その友人の父親が管理している会社の広場だった。
「……おぉ」
思わず声が漏れた。たくさんの重機が並んでいる。しかも、俺が普段見かけるような小さなユンボではない。ショベルカーというのか、大型のパワーショベルというのか、とにかく大きいものが多かった。
何台もの重機が、きれいに並べられていて、テレビや動画で見るのと、実物を見るのでは迫力が全然違う。
「君が翼君だね。あいつから話は聞いているよ」
声をかけてきたのは、今回協力してくれる土建屋さんだった。
「それに、急遽、親父を立ち会わせる許可もありがとな。重機を使うってことで、ちゃんと管理できるのかって言われてな。写真もカメラも撮らない。本当に立ち会ってアドバイスをもらうだけだ」
そう言って紹介されたのが、会社を管理している彼の父親だった。こちらとしては秘密を守ってくれるなら、立ち会ってくれる人間が増えること自体は問題ない。むしろ、重機を使う以上、専門家が多い方が安心できる。
事前にやることは決めてあり、話はすぐに進んだ。
まずは、俺がタープを張り、キャンプ設営のスキルを発動させる。
「ミミ、どうだ?」
ミミが周囲を確認する。少しして、楓が教えてくれた。
「ちゃんと効果が出てるって」
これで準備はできた。今回協力してくれる土建屋さんも、セーフティエリアの中へ入ってくる。
「じゃあ、いくぞ?」
俺は少し離れたところで、盾のような物を構える。もちろん、本物の盾ではない。身を守るために用意しただけだ。
そして、土建屋さんが木の棒を持つ。
「これでいいんだな?」
「はい。無理に力を入れなくても大丈夫です」
「分かった」
木の棒を振り上げる。そして、俺が持つ盾へ向かって振り下ろしたその瞬間……土建屋さんの身体が、結界の範囲外へ移動させられた。
「……これはすごいな」
本人が、自分のいた場所を見る。
「本当に瞬間移動したみたいだ」
俺にも見えない。でも、今のは明らかに結界の外へ押し出された。外に押し出された土建屋さんは、結界に入ろうとするが、
「本当に中に入れないんだな……」
土建屋さんは少し考えてから、今度は別の物を持ってきた。
「思いっきり叩いていいんだよな?」
「自分が危なくない範囲なら」
持ってきたのは、巨大なハンマーとつるはしだった。
「色々と試してみないと分からないからな。こんな機会なんてないし、できる限りのことはしてみたい」
まずはハンマーを持ち、結界へ向かって振り下ろすが……音がしない、衝撃もないようだ。ハンマーが、そこで止まっている。
次につるはしを持って、結界へ向かって振り下ろす……同じだった。
土建屋さんが首を傾げる。
「運動エネルギーが全部吸収されているような感じだな」
ハンマーを見て、それから、自分の腕を見る。
「ハンマーやつるはしだけじゃなくて、手や腕、体にかかる負担すら全くない」
「やっぱり、そんな感じですか」
「原理は分からないが……本当に無効化している感じだな」
次に出てきたのは、ブルドーザーだった。大きな車体が、ゆっくりとこちらへ向かってくる。そして、そのまま結界へ接触する。
ピタッと止まった……一度、後退し、もう一度前進する……ピタッと、また止まった。
「じゃあ、出力を上げてみるか」
エンジン音が大きくなるが、それでも、ブルドーザーは動かない。
「親父、キャタピラの方はどうなってる? エンジンは聞いての通り、すこぶる調子がいい。キャタピラというか、動力の方はどうなっているか確認してほしい」
土建屋さんの父親が確認する。
「よし、吹かしてみろ」
エンジン音がさらに大きくなる。しばらく確認していた土建屋の父親が、困惑したように言った。
「動力が繋がってない感じだな。クラッチを切った状態に近い。エンジン以外に負担がかかっていないように見える……なんだこれは?」
俺にも分からない。ただ、少なくとも結界がブルドーザーを無理やり押し返しているわけではないらしい。そもそも、力そのものを発生させていない。動こうとする現象そのものを止めている……そんな感じだった。
「じゃあ、次いくぞ」
今度は大型のパワーショベルが動き始めた。そして、かなり大きなコンクリートブロックをワイヤーで吊り上げる。
「これ、どれくらいあるんですか?」
「大体1トンくらいだな」
聞いていた話では、これを振り子のようにして結界へぶつけるらしい。
「初めはゆっくりだぞ。振り切るんじゃなくて、直前で止めて勢いを使って錘をぶつけるんだぞ!」
「分かってるって」
土建屋さんがパワーショベルを操作し、ブロックがゆっくりと移動する。そして、結界へ向かって振られた……ピタッ……音もなく、衝撃もない。
1トン近いコンクリートブロックが、空中で完全に停止した。
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