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091 検証継続中

アクセスありがとうございます。

 そして、検証を続けているうちに、ミミからさらに重要な話を聞いた。どうやら、この結界には耐久度のようなものが存在しないらしい。そして発動条件は、俺が範囲内にいること。


 1度範囲内に入れば、その後24時間は効果が持続する。逆に言えば、24時間を過ぎれば消える。かなり特殊な仕様だと思う。前から分かっていたが、俺が中にいる間だけ維持されるわけではないらしい。


 キャンプ設営のレベルも、いつの間にか3になっていたが、分かりやすい変化はなかった。


 範囲が広くなったわけでもない、時間が延びたわけでもない……何が強化されたのかは、今のところ不明だ。


 スキルの説明に、レベルアップ時の詳細な効果なんて表示されないから困る。ゲームに近い仕様っぽいから「新しい機能が解放されました!」くらい表示してほしいところだ。


 まあ、現実にそんな便利なものがあるわけもない。


 結局、分かったことは1つ……俺1人では検証が難しい。


「楓、暇な時でいいから、また検証に付き合ってくれ」


「いいよ」


「ミミも来てくれるよな?」


「にゃ」


「……まあ、楓がいるなら来てくれるか」


 念のため、おやつを用意しておくことにした。ミミはおやつの存在を理解すると、明らかに機嫌がよくなった。


 現金な猫だ。


 そんな感じで、半月ほど……大学とバイトの合間に、できる範囲で検証を続けた。


 そして、ようやく1つ、かなり重要なことが分かった。


 ミミが言っていた、物理法則を無視して止まる……あれは、本当だった。


 きっかけは、楓だった。


「もっと高いところから落ちたらどうなるの?」


「いや、それは危ないだろ」


「ミミちゃんが大丈夫って言ってるよ」


 楓の隣で、ミミが座っている。そして、実演までしてみせた。


 ミミが検証用に張った背の低いタープの下に入り、結界の境界線を確認する。その後、着地してもいいようにクッションを置いた。


 タープの高さは50cmほど……飛び降りる高さは、俺の目線くらいの高さ、大体170cmくらい……


「本当に大丈夫なのか?」


「ミミが大丈夫って」


 信用していいんだろうか……でも、ミミは鑑定のおかげで、俺よりこのスキルについて詳しい。少なくとも、今までの説明に間違いはなかった。


「じゃあ、無理はするなよ」


 楓が結界の上へ飛び降りる。結界の範囲に触れた瞬間……楓の身体が、ピタッと止まった。


「痛くないし、全然衝撃もなかった」


 クッションの上に落ちたわけでもない。結界そのものが、楓の落下を完全に受け止めて、結界の上に立つ楓を支えているようだ。


 俺は思わず結界を見た……目には何も見えない。でも、確かにそこには何かがある。問題は、どの程度のエネルギーまで無効化できるのか。


 それを調べるために、楓が少し調子に乗った。


「3mくらいなら?」


「……おい」


「やってみようよ」


 俺が止めるより先に、楓は3mほどの高さから飛び降りた。


 そして……ピタッ、今度も止まった。


「……すごい」


 思わず楓から、そんな言葉が漏れた。3mの高さから人間が落ちたのだ。普通なら、とんでもない衝撃になる。それなのに、楓には何の衝撃もなかったらしい。


「本当に何ともない?」


「うん。むしろ、止まったことの方が変な感じ」


 どれだけのエネルギーを無効化できるのかは分からない。でも、少なくとも、楓が3mの高さから飛び降りた程度の運動エネルギーを、結界は完全に受け止めた。


 これは、かなり大きな発見だった。ただ、それ以上を試す方法がない。


 さすがに10mから飛び降りろとは言えない。俺も死にたくないし、楓にも死んでほしくない。


 そこで、また別の方法を考えることになった。


「重機があればな……」


 思いついたのは、振り子だった。


 重機を使って、重い錘を吊し、それを振り子のように動かして、結界にぶつける。衝突する直前の速度と重量が分かれば、どの程度のエネルギーを受け止められるのか、かなり正確に測れるはずだ。


 問題は、重機がない、錘もない、土地もない……全部ない。


 そもそも、住宅街でそんな実験をしたら、実験する前に警察が来る。結局、いい方法が思いつかないまま時間だけが過ぎていった。


 そして1月も終わりに近づいた頃……居酒屋の店長に、最近の検証について少し話した。俺が革細工の作業をしていたことも知っている店長は、以前から俺がキャンプ設営について色々試していることも知っている。


「それなら、知り合いに聞いてみようか? 土建屋やってる奴がいてな。こういう話が好きな奴がいるんだよ」


「重機とか持ってるんですか?」


「まあ、仕事柄な。父親の会社の重機だけど、跡取りだから会社が管理している土地の中なら、許可が出るんじゃねえか?」


 それはありがたい……とはいえ、資格を持っていないので、重機を貸してくれなんて言えるわけがない……操縦まで手伝ってもらう必要があるんだよな。


 そう思っていたのだが……


「話したら、土建屋の友人が興味を持ったみたいだ」


「……本当ですか?」


「ああ。むしろ、実験を手伝わせてくれって言ってる」


 思わぬところから、協力者が現れた。


 俺1人では難しかった検証……それを手伝ってくれる人間がいる。これは、かなり大きな前進かもしれない。


「……じゃあ、お願いしてみようかな」


 俺はそう答えて、お願いした。


 キャンプ設営が、どこまでの衝撃を受け止められるのか。その答えを知るための実験が、始められそうだ。


 店長から紹介してもらった土建屋さんと連絡を取ることになった。


 とはいえ、俺だけで話を進めるつもりはなく、こういう話は父さんに任せた方がいい。というわけで、最初の連絡には父さんにも立ち会ってもらった。


 決めたことは、それほど難しいものじゃない。危険なことを無理にさせない、 そして、俺のスキルについて他言しない、この2点だ。特に、ダンジョン探査局には可能な限り知られないようにしてほしいとお願いした。


 いわゆる守秘義務というやつだ。


 もちろん、相手にも仕事があるので、こちらの都合だけで完全に秘密にしてくれと言っているわけではない。ただ、今回の検証で知ったことを、必要以上に他人へ話さないでほしい……それだけだ。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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