087 家の周りと近所の確認
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昨日のダンジョンからのスタンピード……世界中で大量のモンスターがあふれ出し、人が死んでいる。そんな現実離れした出来事があったせいなのかもしれない。こうしてミミとじゃれ合っていると、それだけで心が落ち着く。
少し前まで、こいつは12歳のおばあちゃん猫だった。それが今では、俺より身体能力が高いんじゃないかと思うくらい元気だ。
「元気になったのはいいことだけどな」
ミミの頭を撫でるが、避けられなかった。満足したのか、ミミは俺の腕から抜け出すと、楓のところではなく縁側の近くへ移動した。
そして、そこで丸くなる。寒くなってからは、日当たりがよくて暖かい日くらいしか使っていない縁側の近くだ。気に入っているのか、最近はここでのんびりしていることが増えた。
俺もそろそろ動くか。母親はまだ起きていないし、今日は正月なので、いつも朝食を作ってくれる母親もお休みか。
簡単にパンで済ませるか? 台所へ向かい、パンを取り出す。卵を焼いて、ベーコンを焼いて、簡単なサラダを作れば十分だろう。準備をしていると、後ろから声がした。
「お兄ちゃん?」
振り返ると、楓が眠そうな顔で立っていた。
「ミミがお腹空いたっていって、30分くらい前に起こされたよ」
楓がミミを見る。ミミは縁側近くで知らん顔をしている。
「あと、父さんを見て首を横に振ってたぞ」
楓が首を傾げる。
「何の話?」
「俺にも分からない。あとでミミに聞いてみてくれ」
そんな話をしていると、俺たちの声で両親も起きてきた。母親はまだ眠そうだ。
「朝ご飯、簡単なものでいい?」
結局、4人分作ることになった。とはいえ、卵を焼いて、ベーコンを焼いて、簡単なサラダを作っただけだ。正月の朝から凝った料理を作る必要もないだろう。
みんなで朝食を食べ終えると、テレビをつける。
当然、ニュースの内容はダンジョン関連ばかりだった。昨日から世界中で発生している、ダンジョンからモンスターがあふれ出す現象。
その原因については全くわかっていないが、起きた時刻が判明したようだ。
「グリニッジ標準時間で、1月1日の0時ぴったりに発生した……か」
日本との時差は9時間。
つまり、日本では昨日の朝9時……俺がスマホを見たのも、ちょうどそのくらいの時間だった。
「本当にぴったりなんだな」
世界中で同じ時刻に起きたということになる。だからこそ、問題になった地域も多かった。寝静まっていた地域、まだ暗かった地域、人が少ない時間帯だった地域……そういう場所では、モンスターの発見そのものが遅れた。
発見された時には、すでにかなりの被害が出ていた場所もあるらしい。
「そう考えると、日本は運がよかったのかもな」
元日の朝、完全に寝静まっている時間ではない。正月だから家にいる人も多いが、朝から初詣などで外へ出る人もいる。ダンジョンからモンスターがあふれるという現象自体は、すぐに見つかったから、異常が起きた時にすぐに気付ける人が多かった。
日本の被害は昨日より増えている。それでも、世界的に見るとかなり少ない方だったらしい。
「……運がよかった、か」
テレビの映像を見ながら、俺はふと思い出す……ミミが初日の出キャンプを嫌がったこと、何かが起こると分かっていたこと……そして、世界中で同時に起きたスタンピード。
偶然なのか、それとも……
「スキルを付与した謎の存在は、俺たちに何をさせたいんだろうな?」
誰に聞くでもなく、呟く……人間の進化がどうのこうのと、そんな話をされたことは覚えている。でも、その先にあるものが何なのかは分からない。
進化することが目的なのか? それとも、進化した人間が何かをすることが目的なのか? そして、滅びる結末もある。
あの存在は、そんなことまで示唆していた。
考えても分からないな……今の俺には、答えを出すための材料が足りない。いくら考えたところで、想像の域を出ない……だったら、考え続けるだけ時間の無駄だ。
俺には俺のできることをしよう。
まずは、家族を守りたい。そのために、キャンプ設営のスキルを使う。今までは快適で便利だから使っていたけど、守るための方法を考えよう。
俺に世界を救えるほどの戦闘能力はない、勇者でもない、強力な魔法が使えるわけでもな……でも、安全な場所を作ることならできる。
どれくらいの強度があるとかは不明だが、それだけでも、今の世界では十分に価値があるはずだ。
「……まずは、家の周りを確認するか」
「何かするの?」
楓が聞いてくる。
「昨日のスタンピードで、何か変わってるかもしれないからな。スキルの効果も確認しておきたいしな」
「私も行く」
「なら、ミミも一緒に行くか?」
縁側の側にいたミミが、こちらを見た。
「……行く気はあるらしいな」
昨日までと変わらない、いつもの休日のはずが、世界はもう昨日までとは違う。だったら、俺たちも少しずつ変わっていく必要がある。
だけど、家族をないがしろにするつもりはない。大切な家族は、守っていきたい……それだけは、これから何が起きても大切にしていこうと思った。
家の外へ出る。昨日の昼から世界中が大騒ぎになっているとはいえ、家の周囲はいつもと変わらない。
冬の冷たい空気、静かな住宅街、そして、庭に張られたタープ。
「ミミ、キャンプ設営の安全地帯に変化がないか確認してくれるか?」
楓に抱っこされたミミが返事をする。寒いのか、今日は自分から楓の腕の中に入っている。以前、ミミに確認してもらった境界線を中心に、家の周囲を見ていく。
「どう?」
「にゃ」
楓がミミに確認している。
「特に変わったところはないって」
「なら、大丈夫そうだな」
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