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084 試される世界

アクセスありがとうございます。

 朝……目を覚ます。


 まだ少し眠い。軽く2度寝してしまい、次に目を覚ました時には7時半だった。


 部屋を出ると、すでに母親は起きていて、朝食を作っていた。台所から、いい匂いがする。それに混じって、餅の焼ける香ばしい匂いも漂ってきた。


「お雑煮か」


「そうよ。もうすぐできるから、顔を洗ってきなさい」


 うちのお雑煮は、2種類ある。白だしのお雑煮と、お醤油のお雑煮。どちらを食べるかは、その時の気分次第だ。残ったとしても、結局みんなで食べる。だから、正月になると2種類のお雑煮を楽しめる。


 顔を洗って食卓へ戻ると、父親と楓も集まっていた。みんなで朝食を食べ始める。


 焼いた餅を雑煮へ入れて食べる……正月らしい朝だ。


 しばらく食べていると、楓が口を開く。


「そういえば、お父さん、ミミちゃんの骨密度が高くなったって話、聞いた? 病院で調べてもらった時に分かったんだけど、他にも軟骨が何故か復活してたりしてさ」


 ミミにとっては良いことだ。でも、普通ではなかった。


「他の動物は、若返っても再生みたいなことはなかったって言ってたよ」


 父親が驚いた顔をする。


「あれ? 言ってなかったっけ?」


「聞いてない」


 まあ、ミミのことについては、いろいろ話しているからな。話したつもりになっていたのかもしれない。


 朝食を終え、しばらくリビングでくつろぐ。


 テレビを見たり、ミミを撫でたり……特に予定もない。平和な正月だ。


 9時を少し過ぎた頃。


 突然、家族のスマホが、不快なアラームを鳴らした。


「地震か!?」


 反射的にスマホを手に取り、あたりを確認する。でも、揺れていない。


 地震じゃない? すぐに速報のメールを開く。


 そこに表示されていた文字を見て、俺は固まった。


「……ダンジョンアラート?」


 正月の朝……平和だったはずの1年の始まりに、緊急速報が鳴り響いた。


「俺はネットで調べる。楓はテレビをつけてくれ」


「分かった!」


 俺と楓は手分けして情報を探し始めた。楓がテレビをつけ、チャンネルを変えるが、どの局も正月特番の途中で緊急速報へ切り替わっていた。


 俺はスマホでニュースサイトやSNSを確認する。すると、すぐに情報が見つかった。


「東京……?」


 東京の中心部、代々木公園にできた大型ダンジョンから、モンスターがあふれ出したらしい。


「代々木公園って、あの?」


「そう。大型ダンジョンができたってニュースになってたところ」


 代々木公園にダンジョンが発生したのは、ダンジョンが現れた初期に見つかった場所だ。都市部にできた大型ダンジョンということで、当時はかなり大きなニュースになった。


 ただ、そこは最初から対策が進められていた。


 ダンジョンの周囲には高い塀が作られ、その外側には自衛隊が待機するための場所まで用意されている。万が一モンスターがあふれ出しても、周囲へ被害が広がらないようにするためだ。


 正月に代々木公園へ来ていた人たちの中に、面白半分に塀の外からダンジョンの様子を撮影し、SNSへ投稿していた人もいて、その情報をすぐに知ることができたのだ。


「でも……本当にあふれるんだな」


 画面には、塀の向こう側から何かが動いている映像が映っていた。モンスターだ……


 その数は、時間が経つにつれて増えているように見える。ダンジョンからモンスターが出てくる。そのモンスターが塀に阻まれている。


 今では当たり前のように知られていることだが、ダンジョンが発生し始めた頃には、酷い事故があった。


 ダンジョンができた……なら、入り口を埋めてしまえばモンスターは出てこないだろうと、そう考えた土地の所有者が、入り口をコンクリートなどで完全に塞いだ事件があった。


 結果は最悪だった……封鎖してから1週間後、ダンジョンから大量のモンスターがあふれ出した。周囲に住んでいた人たちは逃げる暇もなく、大きな被害を受けた。


 その後も、同じような事故が何件か起きた。


 そして人類は学び、ダンジョンの入り口を塞いではいけない。むしろ、あふれることを前提に、周囲へ被害が広がらないようにする必要がある。その結果として作られるようになったのが、ダンジョンの周囲を囲う塀だった。


 ただし、これも簡単ではなかった。


 入り口のすぐ近くに塀を作ると、あふれ出したモンスターが塀へ殺到する。そして、簡単に破壊されてしまう。何度も実験を繰り返した結果、ある程度の距離を取れば、強いモンスターも現れなかった。


 その距離がおよそ45m……そこから世界中で、50mを1つの基準として塀を作るようになった。


 画面を見る……代々木公園のダンジョンを囲う塀も、かなり離れた場所に作られている。だからこそ、こうしてモンスターがあふれても、すぐに市街地まで到達することはない。


 もっとも……すべてのダンジョンに、そんな設備があるわけじゃない。そもそも、日本中に突然できたダンジョンすべてを、完全に整備するなんて不可能だ。


 塀がなければ、あふれたモンスターによって周囲は破壊される。そして今回、その問題が一気に表面化した。


「代々木だけじゃないみたい」


 楓がスマホを見ながら言う。


「日本にある大型ダンジョン、全部からモンスターがあふれてるって」


「全部?」


 嫌な予感がする……それからしばらくすると、さらに情報が更新された。


 大型ダンジョンだけではない。中型、小型のダンジョンからもあふれているようだ。日本にある、多くのダンジョンからモンスターがあふれ出しているらしい。


「……何だよ、これ」

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
こんばんは。 今までも前フリ(?)は有りましたが、遂にスキルがダンジョンで役に立つ日が来そうですなぁ…。
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