083 バイト納めと年末
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あれから、特に大きな変化はなく、居酒屋の仕事が年末に向けて忙しくなったくらいだ。
クリスマスも、今年は友達と会うことはなかった。大学も冬休みに入っていたし、何か予定を入れることもなく、普通の平日と同じように過ぎていった。
俺が働いている居酒屋は、店長が経営している個人店だ。そのため、年末年始は毎年決まって休みになる。12月30日から1月5日まで……
この期間を休みにする大きな理由は、店長が家族を連れて実家へ帰るからだ。普段は忙しく働いているから、まとまった休みなんてなかなか取れないから、こういう時くらいはしっかり休んで、ちょっとした旅行気分で実家へ帰るらしい。
もちろん、年末年始に営業してほしいという客がいるのも分かっている。でも、そういう人はチェーン店に行ってください、というのが店長の考えだ。
俺も、それでいいと思う。店を続けるためには、働く側が休むことも必要だからな。
そして、今年最後の営業日である12月29日。仕事に来られるメンバーは、全員が仕事場に入っていた。
休みになることが分かっているから、常連客も年納めということで来店する。忙しくなることは最初から分かっていた。だから、この日は全員参加みたいなものだ。
まあ……職場の半分以上は、その後にある忘年会が目当てだったりするんだけど。それも含めて、この居酒屋の12月29日なんだよな。
営業が終わった後、そのまま忘年会に突入する。当然、徹夜だ。
俺は基本的に酒を飲まない。そのため、忘年会では調理担当に回されることが多い。でも、別に嫌じゃない。
調理担当の一番おいしいところは、料理を作りながら食べられることだからだ。去年なんて、店長が大きなマグロの頭を安かったからという理由で仕入れてきた。
店長が半分に割ったところで、
後は頼んだ、と、酒を飲んでいない俺たちに任せた。
俺は目玉の煮つけを作った。その時、調理者特権ということで、希少部位である頭肉や頬肉は食べさせてもらった。
まあ、あれだけ大変だったんだから、このくらいの役得があってもいいよな。
そして今年はというと……今年もマグロだった。しかも、今年はマグロパーティーということで、店長が30kgクラスのマグロを丸々購入してきた。
さすがに俺には解体なんてできないから、補助として手伝う。ベテランの人が5枚卸しをして、そこから柵取りまで進めていく。
そして、その後の切りつけを俺が任された。寿司屋だったら、20歳そこそこのバイトに切りつけなんてさせないだろう。
でも、ここは居酒屋だ……多少失敗しても食えばいい……という、かなり大雑把な考え方が許される。もちろん、失敗しないように丁寧に切った。
そうして、あわただしくも楽しかった今年最後の営業が終わり、そのまま忘年会へ突入する。
基本的には揚げ物の注文が多かったので、俺は営業終了前から大量に揚げておいた。
まとめて揚げて、皿に盛る。あとは各自好きなものを取って食べてもらう。そうすることで、俺自身の時間を作る。
酒は各自、自分の好きなものを好きなだけ飲む。店長も含めて、みんなが好き勝手に酒盛りを始めた。
俺は料理を追加したり、残ったマグロを切ったりしながら、適当に料理をつまむ。気付けば、外が明るくなっていた。
12月30日の朝……これで、今年のイベントは全部終わった……そんなことを考えながら、家へ帰った。
本当なら、このまま初日の出を見るためのキャンプへ行く予定だったが、ミミが許可してくれなかったので、計画は取り消した。
初日の出キャンプの話をした時、ミミは明確に嫌がった。普段ならキャンプについていくことを嫌がることもない。 むしろ、俺たちが出掛ける準備をしていると、当然のように自分も行くつもりでいる。
それなのに、今回は駄目だった……何度聞いても、
「にゃ」
としか言わない。楓を通して聞いても、
「絶対に行かない方がいい」
という意思だけは伝わってきた。だから、渋々あきらめた。ミミがここまで反対するんだから、何かあるんじゃないか……そんな気がしてしまう。
そして、12月31日の夜になっても、何も起きていない。心配していたようなことは何もなく、平和な年末を過ごしていた。
両親は酒を飲みながらテレビを見ている。楓は酒を飲んでいないが、両親と一緒におつまみを食べながらテレビを見ていた。
俺はというと、ミミと遊んでいる。猫じゃらしを動かすと、ミミが飛び掛かる。そして、ぱしっ……捕まった。もう一度動かしても、ぱしっ……またすぐに捕まった。
以前は普通の猫らしく追い掛けていたのに、今では俺が本気で動かしても簡単に捕まえられてしまう。
ミミ的には、これでは運動量が足りないらしい。すると、ミミは病院でもらったランニングホイールへ向かった。
ミミがホイールへ乗る……そして、ダダダダダダダダッ!
ホイールが猛烈な勢いで回り始めた。
充電できるんじゃないか? と思うほど早く回し始めた。俺が無意識に呟くと、楓が吹き出した。
「やめてよ、お兄ちゃん!」
どういう原理なのかは分からない。人間用のルームランナーみたいに、ほぼその場で足を動かし続けているような感じだ。
たぶん、このランニングホイール自体がかなり高性能なんだろう。でも、それだけじゃない。ミミ自身が、どうやって走ればいいのかをしっかり理解しているんだと思う。
普通の猫なら、こんな速度で走り続けることはできない。しばらく走り続けたミミは、満足したのかホイールから降りた。
そして今度は、キャットタワーへ向かう。軽々と登り、上段へ。そこから家具の上を移動していく。キャットウォークほど本格的ではないけど、ミミが通れるような家具の配置になっている。
最近は、そこを使って家の中を移動することも増えた。以前は12歳のおばあちゃん猫だった。それが今では、家の中を走り回っている。
まあ……元気なのはいいことだ。
俺たちは夜更かしすることもなく、いつもの時間に眠りについた。
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