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081 ちょっとしたミス

アクセスありがとうございます。

 父親と話をして、しばらくのんびりしていると……ミミが俺の足元で鳴いた。


「どうした?」


 見下ろすと、ミミは俺たちが座っているキャンプチェアを見ている。俺、父親、楓……そして、ミミの椅子がない。


 そういうことか! いつも自分の分があるのに、今日は自分の分が用意されていなかったから、準備するように訴えてきたのか。さっきまで縁側にいたのに、一緒にいたいんだな。


「ごめん、ミミの椅子を忘れてたよ。今準備するから……待ってて」


 明らかに不満そうだったので、慌てて物置からミミ専用のチェアを持ってくる。座面には専用のクッションも敷いてやる。


「これでいいか?」


 満足したらしい。ミミは当然のように椅子へ飛び乗ると、そのままクッションの上で丸くなった。


「……完全に自分の席だと思ってるな」


「実際、ミミちゃんの専用の椅子だし、間違ってないよね」


 楓が笑う。ミミが気に入っているならいいか。


 俺も自分の椅子へ戻る。楓も隣へ座り、しばらく3人と1匹でのんびりしていた。冬の庭は静かだった。夏とは違って虫の声もほとんどない。日差しは暖かく、風も穏やか。


 キャンプ場ではないけど、こうして家の庭で過ごすのも悪くない……そう思っていたら。


「ちょっと! 私をのけ者にしてないでよ!」


 母親の声が飛んできた。忘れていたわけじゃないけど、忘れてた……


 俺と楓は顔を見合わせる。そういえば、母親はバーベキューの準備をしている……俺たちは椅子に座っている……そして、ミミは専用チェアで寝ている。


 なるほど……


「母さん、すぐ飲み物持ってくるから。後のことは俺がやるから、お母さんは座って待ってて。楓、ビールもってきて」


 楓も即座に立ち上がった。母親の機嫌を取るため、俺たちは急いで酒を準備する。俺は、そのままバーベキューの焼き担当を務める。


「じゃあ、俺が焼くから、お酒でも飲んで待ってて」


「よろしく」


 父親は当然のように座る……あんたも、本当ならこっち側なのに……


「翼、こっちのお肉も焼いて」


 母親は、楓からお酒を受け取り座る……食べる気満々だな。まあ、両親が楽しそうなら、それでいいか。


 俺が肉を焼いている間、両親は仲良く酒を飲んでいる。時々、母親が父親へ肉を渡したり、父親が母親のグラスへ酒を注いだり……


「仲良いなぁ……」


「いつものことじゃん」


 楓が呆れたように言う。母親の機嫌が悪くなったと分かった瞬間に、楓がミミに頼んで、母親の膝へ乗るようにお願いして、撫でられたりしている。どうやら母親の怒りゲージを抑えるために、撫でられ猫になってくれているらしい。


「ミミちゃん、今日もかわいいわねぇ」


 母さんが満足そうに撫でる。ミミも特に嫌がらない。むしろ、されるがままだ。


 ……本当に空気を読んでいるんじゃないだろうな?バーベキューが始まると、母親の機嫌はさらに良くなった。酒が入ったせいもあるだろう。


「ミミちゃん、お肉食べる? 味付けしてないやつだからね」


 母親は焼いた赤身の牛肉を少し取り、焦げた部分をきれいに削ぎ落としてから、細かく刻んでミミへ渡している。ミミは、それを嬉しそうに食べている。


「最近、ちょっとカロリーが足りなかったんだよね?」


「先生も、多少多めにとるくらいでも問題ないって言ってたしね」


 楓もミミを見ながら笑う。最近は、以前より食べる量が増えている。あれだけ動けるようになったんだから、消費するエネルギーも増えている。だけど、足りないと怒られて、意識的に多く食べさせて、体重を維持してるんだよな。


 ミミが満足そうに肉を食べているのを見ながら、俺も肉を焼く……キャンプは途中で終わってしまった。本来なら今日もキャンプ場で過ごしていたはずだ。


「でも……これはこれで悪くなかったな」


 家族で庭に集まって、肉を食べて、両親は酒を飲んで……昨日の出来事を考えれば、こういう普通の時間を過ごせるだけでも十分だ。


 気付けば、時間はおやつの時間に近付いていた。


「……もうこんな時間か」


 のんびりバーベキューをしていたから、時間が過ぎるのを完全に忘れていた。


 ミミは自分の食事と、みんなから分けてもらった肉を食べ終わると、自分のチェアへ戻ってクッションの上で丸くなっている。


 そろそろ外で過ごすには厳しい時間帯だ。冬は日が落ち始めると、一気に気温が下がる。


「父さん、母さん、そろそろ家の中に入ろう」


「まだ大丈夫よぉ」


 ……完全に出来上がっている。


「寒くなるから、早めに家に入ろ。風邪ひいたら、面倒だからさ」


 楓がそういうと、母親が立ち上がり、父親も一緒に立ち上がった。酔っ払い2人を家の中へ連れていく……そこで、ふと気付く。


「ミミは?」


「もう中に入ってるんじゃない?」


 庭を見ても、いつの間にかミミがいない。


「先に戻ったのか」


 俺たちも家の中へ入り、リビングへ行くと、テレビの前の特等席が占拠されていた。ソファの上で、ミミがテレビを見ている。


 絶景動画でも見ているのかと思ったら、画面に映っていたのは……


「キャンプ動画?」


 テントを張って、焚火をして、料理をしている。その様子をミミはじっと見ている。


「自分ではやらないのに、興味あるのかな?」


 楓が首を傾げる。家族がキャンプをしているから、自分も見てみたいとか? それとも単純に好みが変わった?


「まあ、猫の考えてることなんて分からないか」


 ミミがこちらを見た。


「……何か言いたいのか?」


 無視された……両親がミミを挟むようにしてソファへ座ると、ミミはすぐに母親の膝へ移動した。


 父親が固まる……相変わらず、ミミは父親のことが嫌いなんだな。ミミは、楓が一番ではあるが、楓がいない間は母親が面倒を看ていたからな。


「ミミちゃん、こっちにおいで」


 母親は満面の笑みで膝の上でゴロゴロ喉を鳴らしているミミを撫で、父親は……


「……」


 ものすごく寂しそうに、ミミを見ていた。楓はミミを母親に取られたので、自分の部屋へ戻るらしい。


「じゃあ、私は部屋にいるね」

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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