表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/81

076 父親とダンジョン探査局のバトルと親バカな翼

アクセスありがとうございます。

 キャンプ最終日……朝起きると、隣ではミミがまだ丸くなって眠っていた。


「……よく寝てるな」


 昨日もかなり歩き回っていたから、疲れているのかもしれない。とはいっても、家にいる時より明らかに元気なんだよな。


 しばらくすると、ミミがゆっくり目を開ける。


「にゃ」


「おはよう」


 挨拶をすると、当然のように俺の顔へ近付いてくる……撫でろということらしい。しばらく撫でていると、満足したのかテントの外へ出ていった。


 朝食を済ませ、片付けを始める。


 今回のキャンプは、本当に何もなかった。トラブルもなく、珍しい出会いがあったわけでもない。


 ただ、森の中で過ごして、食事をして、映画を見て、ミミと一緒に寝ただけ。でも、それが俺の求めていたキャンプだ。


 特別なことがなくても、普段とは違う時間を過ごせる……それが大切だった。


 片付けをしている間、ミミはというと……


「にゃ」


 気付けば、隣のサイトの方へ歩いていっていた。もちろん、長いリードの範囲内だ。近くにいた家族連れがミミへ気付く。


「あ、猫ちゃんだ」

「かわいい!」


 子どもたちが近付いてくる。普通なら警戒するところだが、ミミは逃げるわけでもなく、少し距離を取って座った。


「にゃ」


「あいさつしてるの?」


 子どもが手を伸ばす。すると、ミミは一歩後ろへ下がる。さらに近付くと、また一歩下がる……


 何をしているんだ? いや、分かる。たぶん、追いかけっこをしているつもりだ。捕まえられそうで捕まえられない距離を維持している。


 子どもたちは楽しそうに笑っていた。


「猫ちゃん、遊んでくれてる!」


 ……本当に賢いな。普通なら嫌がって逃げるところを、相手が楽しめる距離を理解している。しかも、爪を出すこともない。近くにいた大人も驚いたように、


「すごく大人しい猫ですね」


 と言っていた。さらに、


「写真撮ってもいいですか?」


 と聞かれた。


「ミミが嫌がらなければ」


 そう答えると、ミミは特に気にした様子もない、結果……そこからしばらく、撮影会になった。


 いや、分かるぞ! うちのミミは可愛いからな! 写真を撮りたくなる気持ちはよく分かる。


 飼い主補正? そんなもの関係ない。客観的に見ても可愛い……まあ、多少親ばかが入っている可能性は否定しない。


 昼前には撤収準備も終わった。


「ミミ、帰るぞ」


 呼ぶと、素直に戻ってくる。最後に周囲を確認して、忘れ物がないことを確認する。


 すると、昨日から何度か遊んでいた子どもたちが走ってきた。


「あ、猫ちゃん!」

「もう帰っちゃうの?」

「また来てね」


 そう言われると、ミミは少しだけ首を傾げた。そして、


「にゃ」


 返事をすると、また少し距離を取る。子どもたちが笑顔で追いかける。最後まで追いかけっこをするつもりらしい。


「ミミ……本当に楽しんでるんだな」


 しばらく遊んだ後、満足したのかミミは車へ向かった。


 そして帰り道、助手席を見ると……寝てた。


 出発してから10分もしないうちに、ミミは丸くなって眠っていた。


 昨日からかなり歩いたからな、たくさん遊んで、たくさん景色を見て、満足したんだろう。


 家に戻ると、まずキャンプ道具を片付ける。テントを乾かし、タープを確認し、道具を元の場所へ戻していく。


 最後に車の掃除……掃除機をかけながら、ふと思った。


「楓、最近、ミミのブラッシングして、抜け毛って多いか?」


 楓は少し考える。


「うーん……生え変わりの時期じゃないから、そんなに抜けてないと思うよ」


「そうか」


 気のせいか? 時期的にも判断しにくい。でも、以前より妙に抜け毛が少ない気がする。


「今度、定期健診で聞いてみるか」


「そうだね」


 ミミは定期的に検査している。その時に聞けばいいだろう。家の中を見ると、楓と一緒にミミは縁側にいた。楓の隣で、今回のキャンプの話をしているらしい。


「にゃ」


「そうだったの?」


 会話している……2人きりのキャンプも嫌ではなかったのかもしれない。


 しかも、夜は2日連続で一緒に寝た。これはかなり大きい。写真も大量に撮ったから、大学が始まったら、ペット友達に自慢できるな。


 片付けが終わると、バイトの時間までのんびり過ごした。


 居酒屋のバイトは、いつも通りだった。


 特別なことはない。忙しく注文が入り、料理を運び、片付ける……でも、この日常が少し安心する。


 そして、大学の後期が始まった……その日の夜、父親の携帯に電話が入った。


「……ダンジョン探査局か」


 嫌そうな声。


 内容を聞くと、やはり俺のスキルについてだった。最近、ダンジョンから魔物が出る事例が増えている。周囲への被害も出始めているため、可能なら俺の能力を検証し、協力してほしいという話だった。


 父親はすぐに聞いた。


「補償の件は?」


 相手は少し言葉を濁した。


『正確にはまだ決定していません。ただ、前回提示した内容の2倍以上は確保する予定です』


「……」


 父親の顔が変わる……怒っているのが分かるくらいに……


「時給2000円程度で24時間拘束するつもりだったんですか?」


『いえ、その……』


「労働時間なのか待機時間なのかも不明。夜勤手当もない。残業もない。休憩場所もない」


 淡々と言う。


「それで息子を働かせろと?」


『国の安全のためで――』


「国のために働くことを否定しているわけではありません。ですが、大学生の息子です。将来があります」


 声が低くなる……


「留年した場合、退学になった場合、その後の人生の補償は誰がするんですか?」


 俺は横で聞いていた……父親が怒っている理由が、少し分かった気がする。金だけじゃない、俺の未来の話なんだ。


「24時間拘束されるなら、それに見合う条件を提示してください」


 父親は続けた。


「国のために働く人間に、最低限の環境すら用意しない。それで協力しろと言われても、親として認められません」


 その後も話し合いは続いたが、結論は出なかった。


 ダンジョン探査局は、海外の事例を出して交渉する父親に対して、


『そこまでの金額は出せない』


 と言ってきた。それに対して父親は、


「なら、現状の体制で対応してください」


 と返した。確かに、俺がいなくても、今までは探索者や自衛隊で対応できている。 危険だから、楽になる方法があるから、安く使わせてほしい……そんな話なら納得できない。


 父親は、後で言っていた。


「自衛隊で封鎖を続けるなら、1ヶ月で数千万円じゃ済まない」


 人件費、装備、燃料、食事、全部必要になる。


「それを踏まえて考えて、お前の能力が本当に有効なら、その金額は高くなってもおかしくない」


 そういうことらしい。俺には難しい話だ。だから、


「父さんに任せる」


 それが一番だと思った。社会経験もない大学生が、行政相手に交渉なんてできるわけがない。


 大学生活が再開して2週間ほど経った、ある日の昼休み、


「ミミちゃん、また写真見せて!」


 気付けば、ペット自慢をする人間が集まるようになっていた。一部では、【親ばかの集まり】なんて言われている。


 否定はしない。だって、可愛いから仕方ない。


 そして、先週……とうとうミミはデビューした。


 全国放送ではなく、ネット広告だけだが、楓も一緒に出演しているが、楓は声だけだ。街で声を掛けられるようなことはないらしい。


 ミミは美猫だ。でも、見た目だけなら似た猫はたくさんいる。愛猫家でもなければ、違いなんて分からないだろう。


 ……まあ、俺なら一瞬で分かるけどな。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっぱり親父は早い段階でスキルのヤバさに気づいてたんやなって
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ