074 嫌なことは忘れたい
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最後のキャンプから2ヶ月……大学の前期も終わり、単位もしっかり確保できた。
「……そろそろキャンプに行きたいな」
ソファーに寝そべりながら、久しぶりにキャンプ場を探していると、
「にゃ」
ミミが近付いてきて、俺のお腹の上へ乗る。
「ミミも見るか?」
どうやら興味があるらしい。一緒に画面を見る。そういえば、2回目の定期検査も終わった。肉体年齢は変わらず、若い状態を維持している。
身体能力も、同年代の猫と比べて数倍……全盛期の猫と比べても、倍近い能力があるらしい。
「元気すぎるんだよな」
当然だと言いたげな顔をされた。
キャンプ場を眺めていると、テレビからニュースが流れていた。
『今年は例年以上の暑さの影響で、キャンプ場の利用者が減少しています』
なるほど、だからか……キャンプ場の情報を集めたサイトの画面を見る。
確かに、満員の場所はほとんどない。長期休みでも連休でもない今なら、かなり自由に選べそうだ。
「どこがいい?」
ミミが、俺が捜査している画面へ近付く……そして、ある場所で止まった。
「森林サイト?」
湖畔には興味なし、川沿いでもない、前回は川だったから、水辺でもいいと思ったけど……
「やっぱり森が好きなんだな」
ミミは満足そうに尻尾を揺らしていた。
満足そうに尻尾を揺らしているミミを見ながら、小さく笑う。
だけど、お前……。
楓がいなきゃ、キャンプ来ないだろ?
今までは、俺と楓、それにミミの3人で行くことが多かった。最近は楓も仕事を始めたし、休みが合うとは限らない。
そう考えると、1人と1匹で行くことも増えるかもしれない。
……いや、そんなことを言って、ミミの気分を害しても困る。何となく黙っておくことにした。
スマホでバイトの予定を確認する。
「……3日後から2連休か」
革細工は基本的に自由出勤だし、居酒屋は休みだった。
「ここで行ってみるか」
キャンプ場を予約する画面を開く。今年は猛暑の影響らしく、キャンプ場にはかなり空きがあるから、急いで決める必要がないというのはありがたい。
候補を見比べながら、今度は食事のことを考える。
「キャンプ飯は何を作るかな」
肉を焼くか、燻製もいい、ダッチオーブンも悪くないか……そんなことを考えていたが、途中で苦笑した。
「……別に凝る必要ないんだよな」
今回の目的はキャンプそのものだ。料理を楽しみに来るわけじゃない。食べるものなんて、何でもいい。
前回の河原キャンプを思い出す。
「やっぱり、水道がないのは大変だったな」
1人なら、そこまで気にならないが、多少不便でも、それがキャンプだと思える。
だけど、楓も一緒となると話は別だよな。女の子だし、お風呂に入れない環境は正直かわいそうな気がする。ミミも女の子だけど、猫だからそこはあまり問題にならないが、楓はそうはいかない。
お腹の上で丸くなっているミミを撫でながら、そんなことを考える。
そういえば、元気になってから、ブラッシング以外でも、ミミの方から甘えてくるようになった。膝に乗ってきたり、お腹の上で寝たり、撫でてほしいと頭を押し付けてきたり……おかげで、俺としては大満足なんだけどな。
「お兄ちゃん、何してんの?」
楓がリビングへ入ってきた、その瞬間、
「にゃっ!」
ミミが勢いよく立ち上がる。
「ぐっ!」
俺の腹を思い切り蹴ってジャンプした。
思わずむせた……今のは地味に痛い。
「ミミちゃん、そんなところにいたんだね」
そんなところって何だよ。俺の腹の上だぞ! しかも、撫で撫で付きの特等席やぞ!
「キャンプに行こうと思って、キャンプ場を探してただけだぞ。そしたらミミも興味を持って、一緒に見てただけだな」
「キャンプ行くんだ。いつ?」
「3日後、ちょうど予定が空いてたからな」
「え~、3日後は無理だな~」
楓は残念そうに笑う。そのままミミを抱き上げ、優しく撫で始めた。
すると、
「え?」
驚いた顔になる。
「ミミちゃんも一緒に行きたいの?」
「にゃ」
「私がいなくてもいいの?」
どうやら、そういう話をしているらしい。少し意外だった。
「楓がいなくても行きたいのか?」
「にゃ」
即答だった……どんどんアクティブになってるな。
「でも、楓ほど意思疎通できないけどいいのか?」
そう聞くと、
「ミミちゃんが言うにはね。キャンプシアターと長いリードがあれば、自由にしてるから、それでいいよだって」
「なるほど」
家にいるより、外へ出たいってことか。ミミがそれでいいなら、俺も構わない。
「じゃあ、一緒に行くか」
「にゃぁ」
満足そうに鳴いた。
それから2日間は、いつも通りだった。
革細工の店へ行き、店長に褒められたり、夜は居酒屋では、厨房とホールを行ったり来たり……忙しかったけど、それも悪くない。
そして前日、食材を買い込んだ。
「これで十分かな」
今回は凝った料理を作るつもりはない。必要最低限、それくらいがちょうどいい。
キャンプ当日。
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
母さんの車を借りて家を出る。助手席では、
「にゃ」
ミミが窓の外を眺めていた。
しばらく車を走らせ、目的のキャンプ場へ到着する。
「へぇ……」
思わず声が漏れた。
「思ったより綺麗だな」
もっと雑然とした雰囲気を想像していた。だけど実際は違った……区画はきれいに整備され、草も適度に刈られている。
歩きやすく、管理もしっかりされているようだった。
「これは当たりかも」
受付を済ませ、指定された森林サイトへ向かう。
ペット同伴可能なので、まず最初にミミの場所を作る。長めのリードを丈夫なペグへ固定する。その近くへレジャーシートを敷き、
「はい」
専用のキャンプチェアを置き、さらにクッション、濡れタオルも用意する。
「にゃ」
ミミは慣れた様子でタオルへ近付き、前足をちょんちょんと、自分で肉球を拭き始めた。
「すっかり覚えたな」
最初は楓が教えていたけど、今では自分からやっている。本当に賢くなった。
今度は俺の番だ。タープを張り、テントを立て、続けてキャンプシアターも設置。作業は慣れたもので、以前よりかなり早く終わるようになった。
一息ついて辺りを見回す。木々の間を風が抜けていく。
「森林サイトって、思ったより涼しいんだな」
もちろん、キャンプ設営の能力もある。だけど、それを使う前から空気自体が心地いい。木陰のおかげなんだろう。椅子へ腰掛け、風を感じながらぼーっとしていると、
ぐぅぅ……腹が鳴った。
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