065 キャンプ2日目④~最終日with楓&ミミ
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気付けば、2人と1匹が昼寝を始めてから1時間ほどが経っていた。
「……そろそろ起こすか」
あまり寝すぎると夜眠れなくなるからな。
楓なら多少夜更かししても夏休みだから問題ない。でも、しずかちゃんまで夜型になってしまうのはさすがに困る。
車へ近付き、中を覗く。
後部座席では、楓としずかちゃんが並んで眠っていた。その真ん中では、ミミが丸くなっている。
俺が近付くと、
「にゃ」
ミミだけがすぐに顔を上げた。
「起きてたのか?」
返事をするように小さく鳴く。
「首輪のおかげで聴力でも良くなったのかね。それとも気配を察知する能力が上がったとか?」
もちろん答えは分からない。それでも、俺が近付いただけですぐ反応するようになった気がする。
「楓、しずかちゃん。そろそろ起きろ~」
「ん……」
「はーい」
軽く肩を叩くと、2人ともすぐに目を開けた。
「いっぱい寝た!」
「すっきりした!」
眠そうにぐずることもなく、ぱっちり目が覚めている。
「それは、助かる」
とはいえ、完全に目を覚ますには少し時間が必要だ。
「川へ行こう」
河原へ向かい、冷たい水へ手を入れる。
「つめたーい!」
「きゃっ!」
楓としずかちゃんは笑いながら手や足を水へ浸ける。その横では、
「にゃっ!」
ミミがいつものように川面へ猫パンチを繰り出していた。
ぱしゃっ、ぱしゃっ。
「完全に遊びになってるな」
昨日からまったく飽きる様子がない。飛び散る水滴を目で追い掛け、満足そうに尻尾を揺らしている。しばらく遊ぶと、2人の表情もすっかり目が覚めたようだった。
「よし、おやつにするか」
「やったー!」
袋を持ち上げる。
「しずかちゃんのお母さんからトウモロコシをもらったから、おやつはこれを食べよう」
その瞬間、
「にゃ!」
ミミが俺の足へ猫パンチを1発。
「痛っ」
見上げる目が言っている……私のおやつは?
「あっ、ミミにもちゃんとあるから安心しろ」
慌ててクーラーボックスを開け、猫用のおやつを見せる。
「ほら」
納得したように頷いた。
「しまっとかないとな」
そのまま置いておいたら、自分で食べ始めそうだ。
「そのうちクーラーボックスまで開けて、袋の封も切りそうだな……」
最近のミミなら、本当にやりかねない。苦笑しながら蓋を閉めた。
鍋へたっぷり水を入れ、火へ掛ける。袋の中から、大きめのトウモロコシを3本選んだ。
「皮むくの?」
「薄皮は残す」
外側だけ剥き、薄い皮を数枚残したまま鍋へ入れる。
「このくらいの大きさなら、5分弱かな」
ぐつぐつと湯が沸き、甘い香りが少しずつ漂い始める。火を止めた後は、取り出して余熱で火を通す。
「その間に椅子並べよう」
3人分のチェアを並べ直し、座りやすい位置へ移動させる。ちょうどいい頃合いになり、布巾で持ちながら、楓としずかちゃんの分だけ先に薄皮を剥いて渡した。
「はい」
「ありがとう!」
「いただきます!」
俺はその前に、
「ミミ」
猫用のおやつを開けて皿へ入れる。
「にゃ!」
勢いよく食べ始める姿を見届けてから、自分のトウモロコシの皮を剥いてかじる。
「甘いな」
茹でたトウモロコシならではの、みずみずしい甘さが口へ広がる。
「おいしい!」
「こんなに甘いんだね」
2人も夢中でかぶりついていた。
食べ終わった後は、特に何をするわけでもなく、3人と1匹で他愛もない話をしながらのんびり過ごす。
川の音だけが静かに流れていた。そんな穏やかな時間を過ごしていると、
「しずか」
聞き慣れた声がした。しずかちゃんのお母さんだった。
「今日はさすがに帰っておいで」
「えー……」
しずかちゃんが少しだけ寂しそうな顔をして、名残惜しそうに立ち上がる。
「ありがとうございました!」
「こちらこそ。また遊ぼうな」
ミミの頭を何度も撫で、
「またね」
そう言って、お母さんと一緒に帰っていった。
静かになった河原。俺と楓、それにミミだけが残る。
特別話すこともなく、それぞれ景色を眺めながら、ゆっくり時間が流れていく。
やがて夕方になり、
「夕飯にするか」
昼に残っていた炭火を利用し、新しい炭へ火を移す。3個ほど火が付けば十分だ。
「今日は焼くの?」
「昼は茹でだったからな。夜は炭火焼き」
トウモロコシを網へ並べる。強火ではなく、じっくり転がしながら焼いていく。時間は掛かるけど、その分甘みも香ばしさも増す。
「いい匂い!」
皮が少し焦げ始める頃には、香ばしい香りが辺りへ広がっていた。夕食は手間を掛けず、高級な缶詰を使って簡単に済ませる。それでも炭火で焼いたトウモロコシが加わるだけで、十分満足できる食卓になった。
食後は恒例になりつつあるキャンプシアター。
映画を2本見終わる頃には、深夜といえる時間になっていた。
「眠くなってきた」
「今日はちゃんと車で寝ろよ」
「はーい」
楓とミミはいつものように車の中、俺はテントへ戻り、寝袋へ潜り込む。
川のせせらぎを聞きながら目を閉じると、すぐに眠りへ落ちていった。
目が覚めると、周りはすっかり明るくなっていた。
昨日は映画を見終わるまで起きていたから、少し夜更かしになった。そのおかげか、早朝ではなく、ちょうどいい時間に目が覚めたようだ。
テントから出ると、朝の涼しい空気が頬を撫でる。
「ミミは……」
辺りを見回すと、自分専用になりつつあるチェアの上で、クッションに座りながら毛繕いをしていた。
「にゃ」
こちらへ1度だけ視線を向けると、また前足を舐め始める。
「結構前から起きてたのか?」
毛繕いもずいぶん進んでいるところを見ると、目を覚ましてからそれなりに時間が経っているらしい。
車の中では、まだ楓が気持ち良さそうに眠っていた。
「楓、朝だぞ」
「んー……」
声を掛けると、少しだけ体を動かし、
「おはよー」
眠そうに目を擦りながら起き上がる。
「朝ご飯にするか」
「うん!」
今日は甘めのホットサンドだ。食パンへチョコレートとマシュマロを挟み、ホットサンドメーカーでじっくり焼いていく。
表面がこんがり色付いたところで半分に切ると、中からとろけたチョコレートとマシュマロがゆっくりと伸びた。
「熱いから気を付けろよ」
ふーふーと息を吹き掛けながら食べ始める楓を見て、自分も1口かじる。朝のおやつのような朝食だけど、たまにはこういうのも悪くない。
食後は温かいお茶を飲みながら、しばらくのんびりと休憩した。
俺は居酒屋のバイトがあるから、昼前には家へ帰る予定だ。
「そろそろ片付け始めるか」
「了解!」
楓もすっかり慣れた様子で立ち上がる。
テントの中を掃き、タープも汚れを落として畳む準備をする。2人で役割を分担すると、作業は驚くほど早かった。荷物をケースへ戻し、調理器具を洗い、テントを畳み、車へ積み込む……
気付けば、
「終わった」
残っているのは椅子とタープ1枚だけだった。
「まだ9時になってないよ……さすがに早くない?」
「俺も早すぎて驚いてる」
苦笑しながら椅子へ腰掛ける。
「1時間くらいのんびりしたら、椅子とタープを片付けて帰るか」
「さんせーい」
静かな時間が流れる。
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