064 キャンプ2日目③with楓&ミミ
アクセスありがとうございます。
俺はその間に昼食の準備だけ進めることにした。メスティン用の米を2合研ぎ、水へ浸けておく。
「これで炊飯はいつでもできるな」
まだ時間はある……ふと革細工の道具へ目が向いた。
「そういえば……」
しずかちゃんには何も作ってなかったな。ブレスレットだと、少し大きすぎるから学校へ付けて行けない可能性もあるよな。
「四つ編みのミサンガくらいなら問題ないか?」
ヘアゴムを手首へ付けている子も珍しくないし、記念品としてなら、お母さんも許してくれるだろう。
革紐を4本揃え、ゆっくり編み始める。昨日の作り始めなら、何度も手が止まっていたけど、今は違う。自然と指が動き……
「革細工スキルってすごいな」
迷いがなくなり、締め具合も揃っている。模様も綺麗に並んでいた。
30分もしないうちに完成した。
「悪くない」
いや、結構いい出来だ。参考にした編み方のページも役に立ったんだろうが、思っていたより完成度が高い。
それからはチェアへ座り、小説を読みながらのんびり過ごした。
川の音、木々が揺れる音、旅動画を見ている2人と1匹から聞こえてくる声……時間がゆっくり流れていく。
しばらくすると、キャンプシアターから2人と1匹が出てきた。
「お兄ちゃん!」
楓が元気よく手を挙げる。
「そろそろお腹すくから、ご飯の準備しよ!」
「空いたじゃなくて、空く予定なんだな」
思わず笑ってしまう。
「まあ、ご飯の準備はできてる」
浸水させておいた米をメスティンへ移し、火へ掛ける。
「その間に炭を起こそう」
昨日と同じように焚き火台を準備する。フェザースティック、麻紐、そしてファイアスターター。
「今日は分かるよ!」
「私も!」
昨日覚えたばかりなのに、2人とも手際がいい。
火花を飛ばし、麻紐へ着火。炎が薪へ移り、そのまま炭へ火が広がっていく。
「うん、十分だな」
俺はその間に魚の準備を始める。
ヤマメ、ニジマス、それぞれ串を打ち、塩を振っていく。
「ミミの分だけは塩なしな」
小さめのヤマメへは何も付けず、そのまま風へ当てて少し表面を乾かす。
炭に火がうつったらバーベキューコンロに移して、串を上に並べていく。串がコンロの幅より長いので、焼き鳥と同じ要領で焼く。
「20分くらいかな」
じっくり焼くのが一番うまい。
「2人とも手伝ってくれ、アルミホイルをこれくらい切って」
2人は見よう見まねでホイルを広げる。
「真ん中を少しくぼませて、そこへ好きなキノコを入れて」
シメジ、エリンギ、マイタケ、エノキ……いろんな種類を並べていく。
「入れ終わったらバターを入れて」
ころん、と一欠片。
「最後に醤油」
少しだけ垂らし、
「包んで完成。これを炭の近くに置いておけば勝手に火が通る」
ホイル焼きも炭火へ並べる。その頃には魚の片面が綺麗に焼け始めていた。
「よし」
1本ずつ串を回す。香ばしい匂いが一気に広がる。
「わぁ!」
「美味しそう!」
「にゃ!」
2人と1匹が同時に反応した。
「そうだ、しずかちゃん」
思い出してポケットから小袋を取り出す。
「なぁに?」
「記念に」
革のミサンガを渡す。
「ミミと俺たち兄妹とお揃い」
一瞬きょとんとしていたしずかちゃんだったが、
「えぇっ!」
目を輝かせた。
「本当にいいの!? ありがとう!」
両手で大事そうに受け取り、何度も眺めている。その笑顔を見ただけで、作った甲斐があったと思えた。
あとでミミへ聞いてみた。
「にゃ」
楓が通訳する。
「あれね、バリアみたいな効果があるんだって」
「バリア?」
「怪我を少し軽くする感じらしいよ」
「へぇ」
俺と楓のブレスレットは身体能力強化だった。
しずかちゃんは防御系。
そういえば、父さんと母さんへ作った腕時計の革ベルトも、防御系の効果だったらしい。
「安全を願って作ったからかな?」
無意識に思いが反映されているんだろうか。
ミミによると、作る相手との相性が悪いと何も効果が付かないこともあるらしいと言っていたので、ちゃんと付与されていて安心した。
「ご飯もできたぞ」
メスティンを開けると、ふっくら炊き上がった白米。
それをボウルへ全部移す。
「バターを入れて、コンビーフを入れて、コーンも入れる」
たっぷり入れて、混ぜご飯を作る。味付けに焼き肉のたれを少々……最後にブラックペッパーをミルで挽きながら振り掛ける。
「さらに混ぜて完成」
「いい匂い!」
ペッパーランチ風混ぜご飯だ。
その頃には、ミミ用の小さなヤマメも焼き上がっていた。
「ちょっと待ってろ」
皮を剥ぎ、指で身をほぐす。骨が残っていないか1本1本確認しながらほぐしていく。冷めるまではあげられないと思い、ほぐしていると……1匹全部ほぐしてしまった。
「これなら十分だろう」
インスタント味噌汁、キノコのホイル焼き、塩焼き、ペッパーランチ風混ぜご飯……1品減らしたのに、思った以上に豪華な昼食になった。
「いただきます!」
「いただきます!」
「にゃ!」
食べ始めた瞬間だった。
ミミが、にゃむっ……にゃむにゃむにゃむっ!
「……すごい勢いだな」
まるで猫用のチューブおやつでも食べているような勢いで夢中になっている。
あっという間に完食。
「全部食べたのか」
少し心配になるほどだった。
「でもちょうどよかったみたい。最近、本当に食べる量増えたよね」
「まぁ健康ならいいか」
昼食を終え、片付けも済ませる頃には、
「ふぁぁ……」
しずかちゃんが眠そうに目を擦っていた。
「お昼寝する?」
「うん……」
楓が手を引き、2人で車へ向かい、フラットにした後部座席へ並んで横になると、ものの数分で寝息が聞こえてきた。
「にゃ」
ミミも迷わず車へ飛び乗る。2人の間で丸くなり、そのまま目を閉じた。
「……みんな寝るのか」
静かになった河原……俺はチェアへ腰を下ろし、小説の続きを読むことにした。
そんな穏やかな時間を過ごしていると、
「こんにちは」
しずかちゃんのお母さんが、様子を見に来てくれた。今日あった出来事を話し、お昼に撮った写真も見せる。
「それと」
革のミサンガの写真を見せる。
「思い出になればと思って作りました」
「ありがとうございます。しずかもきっと大事にします」
帰り際、お母さんがビニール袋を差し出した。
「畑で採れたトウモロコシです。よかったら、おやつにどうぞ」
「ありがとうございます」
袋の中には立派なトウモロコシが何本も入っていた。
「……これは15時のおやつが決まったな」
夕方、炭火で焼いて食べるのも悪くない。そんなことを考えながら、俺は再び静かな読書の時間へ戻った。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




