063 キャンプ2日目②with楓&ミミ
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「まだー?」
「もう焼ける」
ホットサンドメーカーを開くと、こんがりと焼き色の付いたパンから、チーズの香りがふわりと立ち上る。
「おいしそう!」
まな板へ移し、包丁で半分に切る。とろりと溶けたチーズとスクランブルエッグが顔を覗かせた。
「熱いから気を付けろよ」
「いただきまーす!」
楓は嬉しそうに受け取る。俺も半分を持ち、一口……
「うん、これだな」
ハムの塩気とチーズのコク、それにふわふわのスクランブルエッグ、ホットサンドの定番だけど、何度食べても飽きないような味だ。
そのまま2つ目を焼き始める。
「楓、焼いてる間にツナマヨ作っといて」
露骨に嫌そうな声が返ってきた。
「食べたいんだろ?」
「……分かった」
しぶしぶクーラーボックスからツナ缶を取り出す。
油はそのまま捨てられない。
「ティッシュある?」
「さっきホットサンドメーカー拭いたやつ使え」
「あっ、そっか」
缶の油をティッシュへ吸わせ、新聞紙を入れたゴミ袋へ。
そこへマヨネーズを絞り、胡椒を少々……スプーンで混ぜ始めた。
「これでいい?」
冷たいマヨネーズを見ながら思う。
「氷をもらってなかったら、持ってこれなかったよな」
クーラーボックスと氷のありがたさを実感する。こういう時は本当に便利だな。
焼き上がった2つ目も半分ずつ分け、ツナマヨのホットサンドも焼き、朝食は終了。
食後のお茶を飲んで一息ついていると、
「ミミちゃん、お散歩行こ!」
「にゃ!」
ミミは嬉しそうに立ち上がる。
「行ってきまーす!」
楓はリードを持ち、そのままミミと一緒に河原を歩いて行ってしまった。
1人になってしまった。この前にできなかった、暇つぶしに釣りでもするか。
前回、役所の人から、この河原は釣りも許可されていると聞いているし、たまに釣りに来ている人もいるそうだ。
折り畳み椅子へ座り、竿を伸ばし、餌を付けて川へ仕掛けを流す。
すぐに反応があった。
「おっ」
合わせるが、空振り……餌だけ綺麗になくなっていた。
餌を付け直す……今度も反応はあるが、
「……取られた」
針だけ戻ってきた。
「ここの魚、釣りに慣れてるのか?」
以前、役所の人が何か言っていた気もする。
もっとも、後になって知ることになるが、野生の川魚は警戒心が非常に強く、素人ではまったく釣れないことも珍しくないらしい。
「まあ、時間潰しだからな」
釣れたらラッキー! 程度で十分だ。
もし1匹だけ釣れたら、楓が食べたがって揉めそうだし。
そんなことを考えながら竿を眺めていると、
「お兄ちゃーん!」
賑やかな声が近付いてきた。振り返ると、楓としずかちゃん、それにミミが歩いてくる。
「お兄ちゃんが釣りしてる!」
しずかちゃんの目が輝いた。
「私、釣り得意なんだよ!」
「そうなのか?」
「うん!」
そこまで言うなら……楓が使う予定だった竿を渡す。
「じゃあ、やってみるか」
「任せて!」
餌を付けて仕掛けを投げる。
その5分後……
「釣れたー!」
本当に釣ってしまった。
「おうふ……マジか」
俺が30分苦戦したのは何だったんだ。
「でも取れない」
魚を見ると、針を深く飲み込んでいる。
「そこは任せろ」
居酒屋勤めの経験が役立つ。
割り箸を1本取り出し、口からえらを挟むように奥まで入れ、そのままくるりと回す。
すると、えらと内臓が一緒に外れた。
「すごい! 針も取れた」
しずかちゃんの驚く声を聞きながら、内臓から針を外し、針を返す。
「ありがとう!」
取り出した内臓は、朝食のシーチキンの油入りの新聞紙入りの袋へ。
ボウルへ持参の水を入れて、その中で腹の中を綺麗に洗い流す。水気を丁寧に拭き取って袋へ入れ、氷水を張ったバケツへ。
もちろん直接水には触れないように保存する……その作業を終えた頃だった。
「また釣れたー!」
2匹目、そして3匹目……
「お兄ちゃん見て!」
「まただよ!」
気付けば俺は魚の処理係になっていた。釣る暇がなくなり、最終的に釣れた魚は20匹近く……もっとも、小さい魚は全部逃がした。
針を奥まで飲み込んでしまった1匹と、大きめの6匹、処理したのは合計7匹だった。
「川魚って、こんなに釣れるもんなのか?」
思わず首を傾げる……ふと視線をずらすと、ミミがじっと川面を見つめている。
「……お前、何かしてないよな?」
「にゃ?」
知らない、とでも言いたげな顔だった。
7匹も処理すると、ボウルの水もさすがに赤く濁る。
「このまま流すのはな」
キッチンペーパーを即席の漉し器代わりにし、血の塊や細かな汚れを取り除いてから水を流す。
使い終わったキッチンペーパーは、内臓と一緒の新聞紙へ包み、袋の空気を抜いてしっかり縛った。
これで臭いも漏れにくいし、ごみの処理も完璧だ。
バケツを見ながら呟く……
「昼は川魚の塩焼きが追加だな」
7匹並ぶ魚を見る。
「さすがに多いな」
1人1匹でも十分だよな……その時だった。
「にゃ」
ミミが魚を見つめて鳴く。
「お前も食べたいのか?」
「にゃ!」
「じゃあ、一番小さいのを1匹焼いてやるか」
もちろん塩は振らない。焼いた後、骨を取り除いて、冷ましてから食べさせよう。
残る3匹は、しずかちゃんの家へ持って行くことになった。
「じゃあお願い」
「はーい!」
楓としずかちゃん、それにミミまで一緒になって魚を届けに向かう。
俺はその間に竿を拭き、水気を丁寧に取って片付け始めた。釣り道具を片付け終えた頃、楓たちが戻ってきた。
「ん? なんで抱っこされてるんだ?」
ミミが楓に抱えられたまま、にゃーにゃーと何かを主張している。
「どうした?」
「景色を眺めてたらね、急に旅動画が見たくなったみたいなの。だから急いで帰ってきた」
意味が分からない。確かに自分でタブレットを操作して見るくらい好きではあったが、なんで景色を眺めてたら旅動画を……?
でも、ミミは真剣な顔で何度も鳴いている。
「にゃ!」
「分かった分かった」
どうやら本人……いや、本猫は本気らしい。
キャンプシアターのプロジェクターを準備すると、3人……いや、2人と1匹は、すぐに中へ入っていった。
流し始めたのは、以前と違う旅動画……山奥の温泉や景色をゆっくり紹介する映像だ。お風呂とか嫌いなのに、なんで温泉? 景色のいい場所は多いけどな。
不思議な猫である。
まあ、楽しそうならそれでいいか。
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