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061 キャンプ初日④with楓&ミミ

アクセスありがとうございます。

 編み込みを続けていると、何度か手が止まった。


「あっ……」


 少しだけ編み目がずれている。そのまま進めても使えないことはない。でも、不細工な革細工になってしまうので、やり直す。


「ここまで戻るか」


 革紐をほどき、数段分を編み直す。また少し進む……今度は革紐の締め具合がわずかに緩い。


「……これもやり直しだな」


 結局、妥協せず何度も戻っては編み直した。丁寧に作ることを覚えない限り、上手くはならない。自分用のブレスレットが完成した頃には、1時間以上が経っていた。


 顔を上げると、キャンプシアターではまだアニメが流れている。


「楓、足を冷やす水、温くなってないか?」


「温くなってる」


 返事が返ってきた。


「じゃあ交換するか」


 たらいの水を捨て、バケツで川の冷たい水を汲みに行く。新しい水へ入れ替えると、


「気持ちいい!」


 2人はまた楽しそうに足を浸け始めた。


「ずっと足を浸けてたわけじゃないよな?」


 一応確認すると、


「うん。アニメ見ながら時々入れてただけ!」


 それなら問題なさそうだ。次はミミを見る。


「暑くないか?」


「にゃぁ」


 タープのおかげで日差しは遮れているが、空気が少しこもっていた。


「よし」


 クーラーボックスから昨日買った氷を取り出す。ミミ用に買ってきた水枕へ水と氷を入れ、車の荷室へ置いた。


「熱くなったらこれ使えよ」


 言い終わる前に、ぴょん……ミミは自分から荷室へ飛び乗る。そのまま水枕の上で香箱座り。


「にゃぁ……」


 気持ち良さそうだ。


「お腹冷やして大丈夫なのか?」


 少し心配になる。でも、この水枕はゴムのような柔らかい素材で、一気に冷えるタイプじゃない。ゆっくり熱を逃がしてくれるものだ。


 ミミ用に選んだだけあって、正解だったらしい。


 しばらく見ていると、すっと立ち上がった。もう暑くなったのかと思えば、今度は首だけを水枕へ乗せる。


「……ちゃんと使い分けてるな」


 必要な時だけ冷やしているようだった。



 さらに30分ほど作業を続ける。楓用のブレスレットが完成した。


 その瞬間だった。


『革細工スキルのレベルが上昇しました』


「もう?」


 思わず呟く……居酒屋の隣の店長さんを何度も手伝い、革細工もかなり経験したけど、こんな短時間でレベルが上がるなんて。


「……キャンプ設営の効果だったりするのか?」


 生産系スキルが成長しやすくなる。そんな効果があっても不思議じゃない。でも、それなら家族の誰かがレベルアップしたという話も聞いていいはずだ。


 答えは出ない。


 ただ、一つだけ確かなことがあった。


「……作り方がなんとなくだけど分かる」


 今まで曖昧だった部分が、自然と頭へ入ってくる。こう編めばいい。ここはこう留める。金具はこの順番で付ける。店長さんに教わったけど、あまり分かってなかったのに、今ならなんとなく理解できる。


「これがレベルアップなのか」


 驚きながら、父さんと母さんの腕時計を取り出す。


 壊れていた革ベルト……店長さんから聞いた説明を思い返す。


「……なるほど」


 さっきまでは難しく感じていた説明が、今なら理解できる。


 作業へ取り掛かる。金具に合わせて、革紐を編んでいく。ベルトの部分が完成したら、編み終わりの部分に金具を取り付ける。


 手が止まらない。たまに失敗して、少し戻したりするが、迷いが少なくなっている。気付けば……


「終わった」


 2人分完成していた。時計を見る。


「16時ちょい過ぎか」


 思ったより早い。


「そろそろ、夕食の準備でもするか準備するか」



「2人とも、夕食の準備始めるぞ!」


「もうちょっとー!」


 元気な返事が返ってきた。ちょうどアニメが終わりそうらしい。


「じゃあ荷物だけ準備しておくか」


 食材を並べ、調理器具を準備する。しばらくすると、


「面白かった!」


 途中まで見たアニメの感想を話しながら2人が出てきた。


「夕食は何作るの?」


「メインはタンドリーチキンだな」


「たんどりー?」


 しずかちゃんが首を傾げる。


「簡単に言うと、カレー味の焼き鳥みたいな料理かな」


「美味しそう!」


「しずかちゃんのお母さんが煮物を持ってきてくれるみたいだから、キャベツの千切りとタンドリーチキン、それに煮物、白米、インスタント味噌汁って感じかな」


 まずは米だ。3合を軽く研ぎ、土鍋へ入れる。


「すぐ炊かないの?」


「しばらく水を吸わせるんだ」


 浸水させることで、ふっくら炊き上がる。


 その間に炭を準備する……今日はキャンプらしく火を起こそう。


「見てて」


 細めの薪を1本選び、ナイフで削る。くるくると薄い木が巻き上がっていく。


「わぁ!」


「くるくるしてる!」


 フェザースティックだ。


「これなら火が付きやすいんだ」


 危ないので、ここは俺が作業する。


「しずかちゃんは麻紐お願い」


 麻紐をほぐして細かくする。それを焚き火台へ置き、その周りへフェザースティックを並べる。


「次に使うのは、この道具!」


 勢いよく取り出したのはファイアスターター。


「おぉ!」


 楓は知っているので盛り上がる一方、


「?」


 しずかちゃんは首を傾げた。


「こうやって使うんだ」


 金属を勢いよく擦る。


 バチッと火花が飛ぶ。


「すごーい!」


「あとね」


 焚き火台を指差す。


「キャンプ場によっては直火禁止の場所もあるんだ」


「じかび?」


「地面で直接火をつけること」


「へぇー」


 今度はしずかちゃんが挑戦。最初は火花も出ない。


「難しい……」


「もっと勢いよく」


 何度か練習すると、バチッ!


「あっ!」


 火花が出た。さらに数回……麻紐へ火が移る。


「見て見て!」


「すごい! 火が付いたよ!」


「火が消えないように薪を足していこう」


 2人で薪をくべる。炎は少しずつ大きくなり、その火を使って炭へ火を移した。本当は着火剤だけでも簡単に着く炭だ。


 でも、せっかくのキャンプだから、思い出になるなら、その方がいい。


「じゃあ次」


 ビニール袋を取り出す。


「タンドリーチキンの準備するよ」


 ヨーグルト、定番のカレースパイス、宮崎生まれの万能スパイス、最後に少量のケチャップ……袋の上から揉み込む。


「そこへ」


 一口大に切った胸肉、もも肉、手羽元、全部入れてさらに揉む。


「はい、下準備終了」


「これだけ? もう終わっちゃった!」


「夕食には早くない?」


「早いけど、18時半には食べたいからな」


「うちはもっと遅いよ?」


「アニメの続き見たいよね?」


「うん!」


「だったら早く食べないと最終話まで見られないぞ」


「それはやだ!」


 即答だった。そのまま少し休憩を挟み、17時過ぎから土鍋でご飯を炊き始める。


 炭火でじっくりタンドリーチキンを焼いていくと、香ばしい匂いが辺りへ広がっていった。


 ちょうど18時頃……


「こんにちは」


 いい匂いに誘われたようなタイミングで、しずかちゃんのお母さんが煮物を持ってきてくれた。


 夕食の準備が終わり、食べ終わると、2人はすぐにキャンプシアターに入っていった。


 俺は、片付けを1人ですることにした。時間は余ってるし、楽しみを奪うのはさすがにな。


 21時になると、お母さんが迎えに来て、アニメを見終わった2人は満足そうにキャンプシアターから出てきた。


 いつの間にか、一緒にお風呂に入る約束をしていて、一緒に行ってしまった。


 俺は川の水を汲んで、沸騰させてから少し冷やして、そこにタオルをつけて絞り体を拭く。髪の毛は、軽くすすぎ流して終了。


 さっぱりできるだけでも、キャンプでは十分だよな。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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