060 キャンプ初日③with楓&ミミ
アクセスありがとうございます。
この小説を書いていて、ソロ要素がほとんどなくなってしまったので、題名を少し修正しました。
プロットの中にも、よくよく考えればソロ要素がほとんどなかったので、今更ながらなんでソロって入れてたのかを首をかしげてしまいました。
昼食を食べ終え、みんなで手を合わせる。
「ごちそうさまでした!」
しずかちゃんは満足そうにお腹をさすりながら、辺りをきょろきょろと見回した。
「お兄ちゃん、そういえば、ここら辺って虫が多いのに、なんで周りに虫がいないの?」
川辺の夏なら、蚊やアブが飛び回っていてもおかしくない。それなのに、このキャンプサイトの中にはほとんど虫が入ってきていない。
「それはね、お兄ちゃんのスキルにそういう効果があるからだよ」
「スキル!」
しずかちゃんの目が丸くなる。
「そんな効果があるものもあるんだ! 私はね、『発見』っていう、よくわからないスキルだったんだ。周りの子にもよくわからないスキルの子が多くて、みんなで笑っちゃった」
思わず苦笑する。このくらいの年齢だと、まだスキルによる優劣なんて気にしていないらしい。それが普通なんだろう。
大人になるにつれて、当たり外れだの戦闘向きだの生産向きだのと言われ始める。できれば、そのままでいてほしいものだけど。
発見、か……
その名前を聞いた瞬間、あるゲームが頭に浮かんだ。死に覚えが当たり前の、あの高難度ゲーム。あの世界では「発見力」が高いほど、敵から珍しいアイテムが手に入りやすくなっていた。
もちろん、現実のスキルがゲームと同じ効果とは限らない。
でも、もし似たような能力だったら? ダンジョンで魔物を倒した時の素材やレアアイテムの発見率が上がるような能力だったり、宝箱から出るアイテムがよくなったりするモノだったら……
そんな人間がパーティーに1人いるだけで、探索効率は大きく変わる。取り合いになっても不思議じゃない。
「しずかちゃん。あまりそのスキルのことは話さない方がいいと思うよ」
「え?」
「もし聞かれても、スキルの名前は言わないで、『目ざとくなるスキルみたい』くらいにしておいた方がいい」
しずかちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「なんで?」
「お兄ちゃんの勘かな」
本当の理由を説明しても、まだ理解するのは難しいだろう。それなら余計な不安を与えない方がいい。少し考えた後、しずかちゃんは大きく頷いた。
「わかった! お兄ちゃんの言うとおりにする!」
「うん、それでいい」
素直な返事に少し安心して、頭を撫でてしまう。考えすぎなら、それが一番だ。
「さて、片付けるか」
昼食で使った食器を集める。
「お皿洗うの?」
しずかちゃんが興味津々で覗き込んできた。
「キャンプでは、水がたくさん使えない場所もあるからね」
まず新聞紙を軽く丸め、皿へ押し当てる。
「こうすると油や水分を吸ってくれるんだ」
「へぇー!」
続いてティッシュで細かい汚れを拭き取る。最後にアルコールスプレーを吹き掛けて、乾いた布で軽く拭けば終了だ。
「これだけ?」
「汚れが少ない時はね。本当は洗えるなら洗った方がいい。でも水を節約したい時は、こういう方法もあるんだ」
「覚えた!」
「知っておくだけでも役に立つよ」
キャンプへ行く機会があるかは分からない。それでも知識は邪魔にならない。
食休みをしていると、
「こんにちは」
しずかちゃんのお母さんが様子を見に来てくれた。
「お母さん見て!」
待ってましたと言わんばかりに、しずかちゃんがスマホを取り出す。
「これね! しずかが作ったお昼!」
写真を見せながら、さっきまでの出来事を一方的に話し始めた。
「ジャガイモ切ったの! お味噌も入れた! ポテサラも混ぜた!」
お母さんは何度も頷きながら微笑んでいる。
「すごいねぇ」
しばらくすると、
「にゃ」
ミミが近寄ってきた。
「ミミちゃん!」
すっかり気を取られたらしく、そのまま撫で始める。
今なら話せる……
「少し、いいですか?」
「はい?」
俺は声を潜めた。
「考えすぎかもしれませんが……しずかちゃんの『発見』というスキルなんですが」
お母さんの表情が少しだけ真剣になる。
「昔遊んだゲームに似た能力があってですね」
ゲームの内容を簡単に説明する。
「もし似たような効果だった場合、かなり価値のあるスキルになる可能性があります」
「そんなに……」
「もちろん、全然違う能力かもしれません」
そこは強調しておく。
「でも、念のため知られない方がいいかもしれません。しずかちゃんがダンジョンへ潜る予定がないなら、隠し続けた方が安全だと思います」
お母さんは真剣な顔で何度も頷いた。
「主人にも話して、注意するようにします」
「お願いします」
少しでも考えすぎで終われば、それが一番だ。
「あ、そうだ」
お母さんが思い出したように笑う。
「夕食には煮物を作る予定なので、少し持ってきますね」
「えっ、いいんですか?」
「たくさん作りますから」
煮物か……あれって、意外と手間がかかる料理なんだよな。差し入れと言えば唐揚げとかサラダを想像する。わざわざ煮物を持ってきてくれるということは、普段からしっかり料理をする家庭なんだろう。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、お昼をご一緒させてもらってありがとうございます」
そう言って帰っていった。
少し休憩した後、
「お兄ちゃん!」
「アニメ見てもいい?」
楓がプロジェクターを指差す。
「もちろん」
ただ、この時間帯は問題が一つある。遮光性の高いタープのおかげで映像は見やすいが、その代わり熱がこもりやすいのだ。
俺は荷物から浅いたらいを取り出した。
「これに足を入れてな」
バケツで冷たい川の水を汲み、たっぷり注ぐ。
「つめたーい!」
2人は足を入れたり出したりして大はしゃぎだ。
「これ気持ちいい!」
「最高!」
アニメを見ながら、時々ぱしゃぱしゃと水を動かして笑っている。これなら熱中症の心配も少ないだろう。
俺も自分の作業を始める。レザークラフトだ。
居酒屋の隣にある革工房の店長さんに相談し、加工済みの革を大量に譲ってもらっている。もちろん、店の手伝いをした報酬と、自分のお金で買ったものだ。
だから遠慮なく使える。道具を並べ始めると、
「にゃ~」
ミミが何かを訴えてきた。
「楓、通訳頼む」
しばらく話を聞いた楓が笑う。
「椅子を動かしてほしいんだって」
見ると、本当に楓の正面を前足で指していた。
「どれだけ楓が好きなんだよ」
苦笑しながら椅子を移動する。ミミは満足そうに飛び乗り、そのまま楓を眺め始めた。
「にゃ」
満足らしい。
「よし、作業するか」
今日作るのは、ミミとお揃いの編み込み革のアクセサリー……両親には腕時計の革ベルト。
昔、両親がお揃いで買った腕時計がある。でもベルトが傷んでしまい、今は飾ったままになっている物だ。店長さんに金具を選んでもらい、作り方まで教わってきている。
でも、まずは俺と楓の革紐ブレスレットから。
多少でも安全になるよう願いながら、革紐を丁寧に編み込んでいった。
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