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057 ミミ、2回目のキャンプ前日

アクセスありがとうございます。

 この小説を書いていて、ソロ要素がほとんどなくなってしまったので、題名を少し修正しました。

 プロットの中にも、よくよく考えればソロ要素がほとんどなかったので、今更ながらなんでソロって入れてたのかを首をかしげてしまいました。

 キャンプ前日の朝、目を覚ましてリビングへ向かうと、すでに楓がソファへ座っていた。


「おはよう」


「おはよう、お兄ちゃん!」


 返事だけで分かった。今日は妙に元気だ。


「珍しいな。もう起きてたのか」


「昨日、21時には寝たからね!」


 なるほど。楽しみすぎて早寝した結果、早起きになったわけか。楓の隣ではミミまで尻尾を揺らしている。


「にゃ!」


「はいはい。ミミちゃんも楽しみなんだよね」


 俺は苦笑した。昨日の夜、キャンプの食事について話していた時のことだ。


「缶詰飯を作る予定なんだ」


 そう言った途端、母さんが少し困った顔をした。


「毎食缶詰は、さすがに塩分が多すぎない?」


 言われてみれば、その通りだった。せっかく水をたくさん持って行けるんだから、普通に料理を作った方がいい。そういう話になり、買い物へ行くことが決まったのだが……


 問題はそこからだった。


 ミミまで一緒に行くと言い出したのである。普通のスーパーでは当然入れない。


 そこで調べてみた結果、ペット同伴でも利用できるショッピングモールが見つかり、今日はそこへ向かうことになった。


 もちろん食品売り場だけはペット不可だ。だから俺が食材を担当し、楓とミミはペット用品を見る予定になっている。


 普通のスーパーよりは少し高くなるだろう。でも、夏休み最後のキャンプだ。


「少しくらい豪華でもいいか」


「だよね!」


「にゃー!」


 朝食を食べ終える頃には、父さんも母さんも出勤の準備を終えていた。


「今日は2人とも一緒?」


「ええ」


 母さんが頷く。


「今日はお父さんの車で送ってもらうから、私の車を使っていいわよ」


「帰りは?」


「バスで帰るから気にしなくていいわ。職場なんて車で10分くらいだし、タイミングが悪くてもすぐ帰れるもの」


「分かった」


「安全運転でね」


 そう言い残し、2人は一緒に出勤していった。


 準備を終え、俺たちも出発する。今日は山道ではなく、街中を走る。


「にゃ?」


 助手席の楓の膝から立ち上がったミミが、窓の外をじっと見始めた。


「街も気になるのか?」


「にゃー」


 次は後部座席へ飛び移り、反対側の窓へ。


 ビルや信号、行き交う人や車。見るもの全部が新鮮らしく、忙しそうに左右を見回している。


「自然だけじゃないんだね」


「猫だから街には興味ないと思ってた」


「にゃ」


 その鳴き方を見る限り、そんなことはないらしい。しばらく走ると、大きなショッピングモールが見えてきた。


 駐車場へ車を止め、ミミのリードを確認する。館内入口ではペットカートを借りることができた。


「今日は食材だけじゃないからな」


「キャンプ用品も!」


「にゃ!」


 ミミまで元気よく返事をする。館内へ入るなり、楓が俺の腕を引っ張った。


「お兄ちゃん! 最初にキャンプギア見に行こ!」


「分かった分かった」


 向かった先には、テントやチェア、ランタンなどが並ぶアウトドア用品売り場が広がっていた。


 俺が真っ先に足を止めたのは、ランタンコーナーだった。


「おぉ、これこれ」


 思わず手に取る。


「気になってたんだよな」


 ガラス部分が雫のような形をした、キャンドル風のガスランタン。今使っているLEDランタンは明るさも色も自由に変えられて便利だけど、ガスランタン特有の柔らかな灯りには、どうしても憧れてしまう。


 夜にぼんやり眺めながら過ごす時間には、こういう灯りが似合う。


「なんか、かわいいね。ミミちゃんもそう思うよね?」


「にゃー!」


「だから同意を求めるなって」


 値札を見る。


「4000円くらいか」


 使っていないバイト代を考えれば十分買える。


「買うか」


 その一言で、楓とミミが同時に喜んだ。


 続いて向かったのはキャンプチェア売り場。今日ここへ来た本当の目的の一つだ。


「ミミ専用の椅子だな」


「にゃ!」


 もちろん店の商品だから実際に座らせることはできない。それでもミミは真剣そのもの。楓に抱かれながら、一脚一脚じっと見比べている。


 最後に残ったのは、包み込むような形をした2種類のローチェアだった。


「どっちも良さそうだよね」


 しばらく悩んでいると、店員さんが近付いてきた。


「お客様、どうかなさいましたか?」


 少し言いづらかったが、そのまま事情を説明する。


「えっと、ペットのミミに専用の椅子を買ってあげようと思ってまして……」


「ああ、なるほど」


 店員さんは納得したように頷くと、レシーバーで誰かと話し始めた。数分後、主任らしき男性がやって来る。


「猫ちゃんの椅子を探しているそうですね」


「はい」


「こちらでは試せませんが、体験用コーナーに同じ椅子があります。よろしければ試してみませんか?」


「そんな場所があるんですか?」


 案内された先には、少し古くなった展示品や中古品が置かれた体験スペースがあった。


「こちらなら大丈夫ですよ」


 楓がミミを床へ降ろす。


 ミミはまず1脚目へ飛び乗り、丸くなる。次に2脚目に移動し、しばらく座り心地を確かめた後……


 前足で、たしたしっ!


 と1脚を叩いた。


「こちらがお気に入りなんですね」


「ミミちゃん、それでいい?」


「にゃ!」


「予算内だから、猫缶もちょっといいやつ買えるよ」


 どうやら決まりらしい。この椅子は楓と父さん母さんからのプレゼントだ。想像より小さなローチェアを選んだおかげで、予算の半分ほどで済んでしまった。


 それにしても、丸まって寝るには、少し大きめを選んだのは意外だった。猫なら狭い場所を好みそうなものだが。


 購入を終え、車へ荷物を積みに向かう途中、楓が聞いてみた。


「ねぇ、ミミちゃん。なんで大きい方だったの?」


「にゃー」


 少し話を聞いた楓が笑い出す。


「クッションを置いたら、ちょうどよく狭くなるからだって」


「……そこまで考えてたのか」


 椅子だけじゃない。クッションまで含めて選んでいたらしい。本当に賢くなったものだ。


 その後は予定通り別行動。


 楓とミミはペット用品売り場へ……俺は食品売り場へ向かった。


 今回は父さんの車なので、ポリタンクで水を持って行く予定だ。


 水を惜しまず使えるから、冷たいものも作れるな。氷は今回も居酒屋の店長から譲ってもらう予定だ。無料でいいと言われたが、今後もお願いすることを考えると気が引ける。だから無理を言って、お金を払って買わせてもらうことにした。


 買い物を終えて合流すると、ミミは満足そうな顔でペットカートへ座っていた。


 どうやら高級な猫缶を選んでもらえたらしい。昼はペット同伴可能なテラス席で軽く食事を済ませ、そのまま帰宅した。


 午後はキャンプ道具を1つずつ確認しながら車へ積み込みやすいように玄関へ並べていく。これで明日は運ぶだけだ。


 夕方からはいつも通り居酒屋でバイト。閉店後には父さんが迎えに来てくれていた。店長が前回使った大きな発泡スチロール箱へ氷を詰めてくれる。


「無料でいいのに……」


「またお願いすると思うので、その方が気持ちが楽なんです」


「真面目だなぁ」


 店長は苦笑しながら代金を受け取った。発泡スチロールいっぱいの氷を積み込み、家路につく。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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