056 次の予定
アクセスありがとうございます。
この小説を書いていて、ソロ要素がほとんどなくなってしまったので、題名を少し修正しました。
プロットの中にも、よくよく考えればソロ要素がほとんどなかったので、今更ながらなんでソロって入れてたのかを首をかしげてしまいました。
お腹の上に、ずしりとした重みを感じた。まだ眠気の残るまま身じろぎをすると、その重みも一緒に揺れる。
何となく原因は分かっていた。
「ミミ……」
「にゃ」
目を閉じたまま、お腹の上へ手を伸ばす。柔らかな毛並みに触れ、そのままゆっくりと撫でる。
気持ち良さそうに喉を鳴らすかと思えば、
「にゃぁ」
何やら不服そうな鳴き声が返ってきた。
……なんで君は俺のお腹の上に乗ってるのだね? そう思いながら目を開けると、ミミは当然のような顔でこちらを見下ろしていた。
「何か言いたいことがあるのか?」
「にゃ」
返事はするが、俺は楓じゃない。細かいところまでは分からないんだが……
「降りてくれ」
抱き上げて横へ下ろそうとする。
しかし、前足で俺の服を掴み、降りようとしない。
「そんなに嫌か?」
結局、抱きかかえたまま1階へ降りることになった。
リビングへ入ると、父さんと母さんはすでに朝食の準備をしている。
「おはよう」
楓は、まだ起きていなかったか。俺はミミを抱えたまま椅子へ座った。
「母さん、ミミが俺のお腹の上で不服そうに鳴いてたんだけど、何か心当たりない?」
母さんは少し考える。
「朝起きてからは、特に何もなかったと思うし、いつも通りマイペースに過ごしていたはずだけど?」
母さんも首を傾げる。本当に理由が分からないらしい。
「楓が起きてきたら聞いてみるか」
俺はミミへ視線を落とした。
「ミミ、降りないなら膝の上で大人しくしてくれよな」
一鳴きすると、本当に膝の上で丸くなる。向かいを見ると、父さんが何とも言えない羨ましそうな顔をしていた。
「そんな目で見るなよ。父さんは構いすぎなんだよ」
母さんまで頷いた。
「ミミちゃん、自分のペースで過ごしたい子だからね」
「にゃ」
まるで同意するようにミミが鳴く。
「ほら」
「ぐっ……」
父さんが肩を落とした。そういう顔するから、余計にミミが近付かなくなるんだぞ。
朝食を食べ終わる頃になって、ようやく楓が起きてきた。
「おはよぉ……」
まだ眠そうな声を出しながら席へ座る。目も半分しか開いていない。もそもそと朝食を食べ始めた。
その頃には父さんも母さんも食べ終わっていたので、俺は食器を片付ける。
ミミはというと、楓が起きてきた途端、俺の膝から飛び降り、当然のように楓の膝へ移動していた。
俺は苦笑しながら食器を洗い、楓の食事が終わるのを待った。
「ごちそうさま」
食器を流しへ持ってきたところで切り出す。
「そうだ楓。朝からミミが不服そうに鳴いてたんだけど、理由を聞いてくれるか?」
「いいよ」
楓はミミを見つめる。
「どうしたの?」
「にゃー、にゃぁ」
短いやり取りが続く。しばらくして楓が振り返った。
「お兄ちゃん、ミミちゃんがまたキャンプ行きたいって。そろそろ夏休み終わるから、終わる前に行きたいんだってさ」
「……休みの把握までし始めたか」
思わず苦笑する。鑑定スキルの影響なのか、それとも楓の《トレーナー》の影響なのか。ミミは日に日に賢くなっている気がする。
「キャンプ行くのはいいけど、お前は休み終わったらどうするんだ?」
「私?」
楓はあっさり答えた。
「友達のお父さんの会社のバイトに採用されたから、そのまま働く予定だよ」
「……初耳なんだけど」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
父さんと母さんを見ると、2人とも知っていたらしい。
「どんな仕事するんだ?」
「イベントの手伝いが中心かな。留学してたから語学も期待されてるみたいで、通訳みたいなこともすると思うよ。あと、外国の人が通う塾の講師も頼まれてる」
俺は英語なんてさっぱりだ。でも楓は、オーストラリアへ留学していた時、普通に英語で生活していたらしい。専門用語でもなければ問題なく会話できるそうだ。
昔から英語だけは得意だったもんな。理系の俺とは、頭の作りが違うんだろう。
「俺が心配するのは……ミミの機嫌だけか」
「にゃ」
ミミは当然という顔で鳴く。
「バイトがなければ、いつでも行けるけど……楓がいないとミミはキャンプに行かないだろ? 休み合わせられるか?」
「今月はもうバイトないから、いつでも大丈夫!」
カレンダーを見る。
「4日後なら2泊3日で行けるな。食材は前回の残りもあるし、少し買い足せば十分だろ」
「ミミちゃん、それでもいい?」
「にゃ!」
「それでいいって!」
俺は父さんを見る。
「車、借りてもいい?」
「もちろん」
父さんは笑って頷いた。
「母さんと2人で家でのんびりしてるさ」
「翼がいないとスキルの恩恵はなくなるけど……エアコンつければ十分ね」
母さんはすでに留守番のことを考え始めていた。
「楓、キャンプ前日に買い物行くから付き合えよ」
「うん!」
「今日は場所を決めるか」
しばらくすると両親は仕事へ向かって出掛けていった。
静かになったリビングで、楓がミミを抱き上げる。
「ミミちゃん、どうする?」
「いや、ミミに聞いてもさすがに場所までは分からんだろ」
「にゃ……」
ミミが呆れたような目で楓を見る。
「ほら、ミミもそう言ってる」
「そういう意味だったの?」
「違うと思うぞ」
笑いながらパソコンを開き、地図を表示する。
「前回はダンジョンが近くにあったせいで大変だったからな……近くにあっても、ちゃんと管理されてるなら問題ないか」
「じゃあ川の近くでキャンプ?」
「電話で確認は必要だけど、候補はいくつか出してみるか。ミミも気になる川があったら楓に言えよ」
楓はミミを抱いたままタブレットを開く。
「あまり遠いと疲れるから、片道2時間くらいで頼むな」
「それだと近場しかなくない?」
「キャンプ場じゃないから、それでも十分候補はあると思うぞ」
2人で地図と情報を調べ始めた。
30分ほど経つと、候補がいくつかまとまる。
「人が多くてもいいなら近くにもあるみたい。でも空きは少なそう」
楓が画面を見ながら言った。
「この前の場所じゃダメなの? 近くのダンジョン、もう管理されてるんでしょ?」
「まぁ、そうだけど」
「また遭遇しても《キャンプ設営》があるし、大丈夫じゃない?」
「……お前、結構図太いな」
景色のいい場所だった。あの姉弟にも会えるかもしれない。むしろトラウマになっているのは、あっちの方かもしれないけど。
俺は管理している自治体へ電話を掛ける。
事情を説明すると、担当者はすぐに答えてくれた。
ダンジョンは完全に管理下へ入り、現在は利用制限もないとのことだった。
電話を切る。
「問題ないってさ」
「やった!」
「にゃー!」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




