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055 ミミの真実

アクセスありがとうございます。

 この小説を書いていて、ソロ要素がほとんどなくなってしまったので、題名を少し修正しました。

 プロットの中にも、よくよく考えればソロ要素がほとんどなかったので、今更ながらなんでソロって入れてたのかを首をかしげてしまいました。

 夕食を食べ終えた後も、ミミはテレビの前の一番いい場所を陣取ったまま、旅行動画を眺めていた。画面には、青く透き通った海や山々の景色が映し出されている。


「にゃぁ……」


 思わず感心したような声を漏らす。


「本当に表情が豊かになったよな」


 俺はソファへ座りながら、そんなミミを眺める。綺麗な景色が映れば目を丸くし、珍しい動物が現れれば驚いたように耳を立てる。


 美味しそうな料理が映れば、


「にゃ?」


 興味津々といった顔になり、温泉街や広い草原が映ると、


「にゃあ……」


 どこか羨ましそうな声を出す。


「何となく感情が伝わってくるな」


「そうだね。昔はこんなに分かりやすくなかったよね」


 楓も隣で笑う。


 以前から表情がなかったわけじゃない。でも今は、人間ほどではないにしても、喜怒哀楽が見ていて分かるくらいには表情が豊かになっている。


 それだけじゃない……鳴き声にも抑揚があり、何となくだが感情まで伝わってくる気がした。しばらく動画を見て満足したのか、ミミはテレビの前から離れる。


「にゃ」


 そのままキャットタワーへ向かうと、


 トンッ……軽く床を蹴った。


「ん?」


 思わず目を疑う。次の瞬間には、一気に上の方まで跳び上がっていた。


「えっ?」


 気付けば5段目付近……床から2メートルほどある場所へ、ほとんど一度で飛び乗ってしまった。


「……あんな高い位置まで飛べたっけ?」


 昔の記憶を思い返す。若い頃でも、あそこまで一気に跳ぶことは少なかった気がする。年を取ってからは、1段ずつ慎重に上っていたはずだ。


「一番高くても3か4段目じゃなかったっけ?」


「そうよね」


 母さんもキャットタワーを見上げる。


「ミミちゃんが跳んだのは、そのくらいだったと思うけど……どうなってるのかしら」


「私、聞いてみるね」


 楓がキャットタワーへ近付く。


「ミミちゃん」


「にゃ?」


 そこから、いつものように会話が始まった。俺たちは黙って見守る。


 しばらく話をしていた楓だったが、不意に目を大きく見開いてこちらを振り返った。


「お兄ちゃん!」


「どうした?」


「お兄ちゃんが作った革の首輪のおかげで、身体能力が3~4割くらい高くなったんだって!」


「……はぁ?」


 思わず間の抜けた声が出た。


「ミミちゃんが言うにはね、スキルを持っている人が物を作ると、相性がいい相手だった場合は追加効果が付くことがあるんだって」


「追加効果?」


「うん。それに装備自体にも防御力みたいなものがあるらしくて、そのおかげで前より強くなったって」


 俺は思わずミミを見る。首には、今日作ったばかりの赤と白の編み込み首輪。


 あれに、そんな効果が?


「でもね、人の場合は動物と違って、装備1つで身体能力が3~4割も上がることはないんだって。全部の装備を合わせて、5割くらい上がればいい方なんだってさ」


「……ってことは、ちゃんとした装備を身に付ければ、戦闘にも有利になるってことか」


 思わぬ情報だった。


 今まで誰も装備品の性能なんて話していなかった。もちろん武器が強いという話は聞いたことがある。でも、防具やアクセサリーにもそんな効果があるとは。


「というかさ」


 俺は一番気になったことを口にする。


「ミミは、なんでそんなことが分かるんだ?」


「あっ……確かに!」


 キャットタワーを見上げる。


「ねぇ、ミミちゃん。なんでそんなこと分かるの?」


「にゃー! にゃみゃみゃ、にゃー! にゃっ、にゃー!」


 ものすごい勢いで鳴き始めた。


「……こんなに喋るミミ、初めて見た」


 俺も母さんも少し引くくらい、必死に説明している。


 楓は真剣な顔で聞き続け、数十秒後……


「お兄ちゃん!」


 興奮したように振り返る。


「ミミちゃんもスキル持ってるんだって! しかも鑑定!」


 楓は飛び跳ねそうな勢いだった。


「ファンタジー定番のスキルだよ! ミミちゃんすごい!」


「いや、ちょっと落ち着け」


 確かに定番ではある。でも俺が気になったのはそこじゃない。


 今まで俺は、ミミが元気になったのは新しく手に入れたスキルのおかげじゃないかと考えていた。


 でも、鑑定なら身体能力とは関係ない。そうなると……


「……やっぱり楓のスキルか」


「え?」


「ミミが若返ったみたいに元気になったのは、《トレーナー》の影響なんじゃないかってことだよ」


 トレーナー……名前だけ聞けば調教師やテイマーを思い浮かべる。でも実際の能力は違う。


 正確な条件は不明だが、信頼関係を築いた相手と意思疎通ができるスキル。テイマーみたいに従わせる能力じゃない。調教師系のスキルのように覚えを良くする能力でもない。


「意思疎通だけじゃなくて、相手に影響を与えるスキルなんだろうな……」


 少なくとも、今のところミミ限定ではある。でも、身体能力まで変わっているなら説明が付く。俺がそう考えを口にすると、


「俺もその可能性はあると思う」


 父さんが頷いた。


「もちろん確定じゃない。でも、現状では相手に影響を与えられるスキルなんて、トレーナーくらいしか思い付かない」


 母さんも腕を組む。


「確かに、それなら元気になった理由も説明できるわね」


 俺は苦笑する。


「というか……ミミがたまに的確な指摘をしていたのは、鑑定スキルのおかげだったのか」


「さすがミミちゃん! 頼りになるね!」


 すると父さんが、ふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、人類に試練を与えるってアナウンスがあっただろ? あれは俺たちが人間だから、人類って聞こえただけで、ミミにも同じようなアナウンスが流れていたのかもしれないな」


「お父さん、その通りみたい」


「やっぱりか」


「でもね、ミミちゃんみたいにスキルと一緒に知性まで高くなった動物は少ないみたい。スキルだけ持ってる動物は結構いるみたいで、戦える犬とかもいるんだって」


「なるほどな」


 父さんは納得したように頷く。


「鑑定で理解できるようになって、さらに楓のスキルで成長した……そう考えるのが自然か」


 因果関係までは分からない。でもひとつだけ確かなことがある。今のミミは、楓を介せば俺たちと普通に会話できるくらい賢くなっている。


 もし楓の《トレーナー》がなかったら。鑑定だけでは、ここまで意思疎通はできなかったのかもしれない。そんなことを考えながらミミを見ると、


「にゃ」


 得意そうに胸を張っていた。


 その日の夕食後は、家族全員がミミの様子を観察することに夢中になった。


 ジャンプの高さを確認したり、テレビを操作する様子を見たり、楓を通して次々と質問を投げ掛けたり。


 気付けば時計の針は、いつも寝る時間を大きく過ぎていた。


「……今日は夜更かししすぎたな」


 そう言いながら布団へ入る。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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