表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/69

054 革細工の完成とモデルのミミ

アクセスありがとうございます。

 店長から革紐作りの説明を受け、俺たちはさっそく作業を始めた。


「一枚革を加工するのとは、少し勝手が違うからな」


 店長は細長く裁断された革を手に取る。


「革紐は細い分、グラインダーへ通しにくい。力を入れすぎると削りすぎるし、角度が悪いと切れやすくなる」


 実際にやって見せてもらうと、革を軽く添えるように滑らせているだけだった。


「慣れれば難しくないぞ」


 俺もやってみる。最初は革がふらついて上手く当てられなかったが、何本か練習すると少しずつコツが分かってきた。


「そうそう。その角度ならいい」


 店長が頷く。


「ありがとうございます」


 どうやら革紐は、店で必要になるものだったらしい。


 革の裁断までは済んでいたが、優先しなければならない作業が多く、革紐だけ後回しになっていたそうだ。


 俺はひたすらグラインダーでヘリを整える。


 その横では、楓が色付けを担当していた。染料を塗り、ふのりで仕上げ、丁寧になじませていく。


 そして最後は、


「にゃ」


 ミミが革紐へ肉球を乗せる。


「店長さん、ミミちゃん検品です」


「ははは、厳しい検査員だな」


 店長は笑いながら1本受け取る。


「うん、十分な品質だな。まぁ、時間は掛かってるけど仕事じゃないから問題なし」


 20本ほど完成した革紐を見て、工房の棚を指差した。


「この辺の端材を使って、首輪用の革紐を作っていいぞ」


「ありがとうございます」


 俺は棚へ近付く。そこには色も厚さも違う革がずらりと並んでいた。


「……すごいな」


 革と言っても、本当にいろんな色の端材がある。


 同じ赤でも深い赤、鮮やかな赤、少し茶色がかった赤。黒も真っ黒だけじゃない。 少し灰色っぽい黒や、艶のある黒まである。


 その中から細長く使えそうな端材を探していると、


「お兄ちゃん! 決まったよ!」


 スマホの画面を覗き込む。


「これにしよう! 2色を2本ずつ使った編み込みのやつ! ツク棒も通せるから、サイズも自由にできるよ」


 思わず感心する。


「細めになるから、ミミにも負担が少なくて済みそうだ」


 店長も画面を見て頷いた。


「いいチョイスだな」


 ただ、一つ問題がある。


「編み込みの方法を説明したサイトとかあるか?」


「うん、大丈夫! そのサイトも見つけてるよ! 私は分からないけどね!」


「全然大丈夫じゃないだろ……」


 店長や店員さんは、その様子を見て笑っていた。


 結局、自分で動画を見ながら覚えるしかないらしい。


 俺は赤と白の端材を選ぶ。ちょうど細長い物が残っていて都合が良かった。


「まずは等間隔に線を引く」


 専用の道具を使うと、同じ幅の線が何本も引ける。


「少し厚めに切るんだぞ」


「厚めですか?」


「後でグラインダーで削るからだ。最初から細いと切れる可能性がある」


「なるほど」


 慎重に裁断していく。そのまま、グラインダーでヘリを研磨していく。


 そのあとは、楓が色付けとなじませをしてくれるので、その間に編み込みの練習をすることにした。


「お兄ちゃん、準備できたよ」


 20分ほど練習していると、ようやく手が覚えてきて、そのタイミングで楓の作業が終わったようだ。


 本番の革紐を編み始める。


 赤、白、赤、白……少しずつ模様が出来上がっていく。


 今回はアクリル塗料での仕上げをしていないため、乾燥時間を待つ必要がなかったから、すぐに作り始めた。。


「最後はこれだな」


 店長が猫用首輪の金具を持ってきてくれる。


「ツク棒はこれを使えばいい」


 教えてもらいながら取り付ける。


 最後の金具を固定した。


「……できた」


 初めて作った猫用の首輪……店長は手に取って確認すると、


「編み込みタイプは加工技術より、手先の器用さが重要なんだ」


 少し笑って続ける。


「あっちの店員より編み込みの才能あるぞ」


 思わず顔が緩んだ。認めてもらえるのは、やっぱり嬉しい。


「ミミ」


 首輪を付けてやる。赤と白の編み込みが白黒の毛並みによく映える。


「にゃ!」


 ミミは胸を張り、その場でくるりと向きを変えた。


 楓は夢中でスマホのシャッターを切る。店長まで写真を撮っていた。


「完全にモデルだな」


 その言葉通り、ミミはどこか得意げだった。


 撮影会が一段落すると、店長が真面目な顔になる。


「翼君、センスがあると思うから、暇な時間があったら手伝いに来ないか?」


「え?」


「時間は決めない。好きな時でいい」


 さらに続ける。


「本格的に来ることが決まったら、インセンティブ形式になると思うけど、よかったら考えておいて」


「ありがとうございます」


 素直に嬉しかった。まだ始めたばかりなのに、そう言ってもらえたことが何より嬉しい。


 その後は店長が懇意にしている食堂で昼食をご馳走になり、ミミも店の許可をもらって一緒に過ごした。


 ミミと楓と一緒に家へ帰る……今日はバイトが休みだったので、のんびり過ごしていると、17時頃に母さんから電話が掛かってきた。


「翼? 悪いんだけど買い物お願いできる?」


 仕事が思ったより忙しく、帰りが遅くなりそうらしい。


 買い物へ向かう。


 この時間になると売り切れている野菜も多いが、今日は運良く必要な物はそろっていた。


 こういう買い物は、大抵俺の役目だ。楓に頼むと鮮度を気にせず選んでしまう。


 その代わり、米を炊く担当は楓だった。


 俺も何か作ろうかと思ったが、そこまで遅くならないから大丈夫とのことで、母親の帰りを待つことになっている。


 18時半頃、母さんが帰宅すると、慣れた手付きで夕食を作り始める。


 さらに19時頃、父親も帰ってきたが、真っ先に向かったのは、


「おっ、首輪できたのか!」


 ミミのところだった。


 そして、何枚も写真を撮り始める。どうやら父親が楓に頼んで、楓からミミにモデル役を頼んだようだ。


「そうだ、母さん」


 俺は封筒を差し出した。


「お手伝いしたら材料費も道具代もタダにしてくれたから、お金使わなかった」


 今日の買い物のレシートと一緒に返す。


「にゃぁ!」


 急にミミの鳴き声が聞こえたかと思うと、父さんが構いすぎたせいで、ミミに逃げられていた。


「嫌われた……」


 肩を落とす父さんを見て、思わず笑ってしまう。本当に昔から変わらない人だ。


 夕食が並び始めると、


「お母さん、これが完成した時のミミちゃんだよ」


 楓がスマホを見せる。そこには胸を張ってポーズを決めるミミが写っていた。


「やっぱり、ミミちゃんは美人さんよね」


 母さんまで完全に親ばかだった。


 そんな主役のミミはというと、家へ帰ってから何度も玄関の姿見の前へ行っては、自分の首輪を眺めている。


 その姿が可笑しくて、何度も笑ってしまった。


 食事をしている最中、


 ピッ……突然テレビの電源が入る。


「ん?」


 見ると、リモコンを操作していたのはミミだった。さらにタブレットまで前足で操作し、旅行動画を再生し始める。


「ロックは掛けてないから開くことはできるだろうけど……」


 俺は遠い目になる。


「動画アプリを起動するところからできるようになったのか……」


 ミミは、日に日に賢くなっている気がした。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ミミちゃんがダンジョンに行く布石づくり中かな。
ようやく生産系(加工)スキル覚えましたが、あらすじやキーワードの内容とは、大分離れてると感じました。 テンポ良く話が進むなら良いのですが、日常に舵を取りすぎてる気がします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ