047 ソロキャンプ当日
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ソロキャンプ当日……昨夜は牛スジの下処理を終えてから寝たため、さすがに就寝時間が遅かったので、目を覚ました時にはすでに外が明るかった。
スマホを見る……普段ならもっと早く目が覚めている時間だが、家の周りにタープを張る前と比べれば十分早い時間だ。
キャンプ設営の効果なのか、疲れは残っていなかった。ベッドから起き上がり、軽く体を伸ばしてからリビングへ向かうと、母親がすでに起きていた。
「おはよう」
「おはよう。牛スジ、冷凍庫に入れておいたわよ」
「ありがとう」
お礼を言いながらリビングを見回すと、掃き出し窓の外の縁側中央を堂々と占領しているミミの姿があった。
朝日に照らされながら優雅に毛繕いをしている。右前足を舐めて顔を洗い、今度は胸元を整える。完全に自分専用スペースだと思っているっぽいな。
「相変わらずだな」
「にゃー」
返事だけして毛繕いを続けた。
その後、家族で朝食を食べる。
朝食後、改めて荷物の確認を行う。
忘れ物がないか一つずつ再確認……テント、タープ5枚、チェアー2脚、プロジェクター、調理器具、レザークラフトの初心者キット、釣り道具などなど、問題なし。
最後に冷凍庫を開き、まだ完全には凍り切っていない牛スジをクーラーボックスへ放り込む。
「よし」
確認終了……今回の目的地は車で1時間ほど。設営まで含めると、ちょうど昼頃になる予定だ。
「じゃあ行ってきます」
「お土産よろしく」
「キャンプで何のお土産があるんだよ」
楓に呆れながらも笑う。ミミは縁側からこちらを見ていた。
「行ってくるな」
「にゃー」
見送りを受け、車へ乗り込み、出発した。
道中は順調だった。信号は少なく快適だった。途中でコンビニへ寄る必要もなく、そのまま目的地へ到着した。
「おぉ」
思わず声が漏れる。
目の前には緩やかに流れる川。対岸には木々が並び、夏の青空が広がっていた。風も心地いい……そして何より、
「誰もいないな」
見渡す限り人影がない。キャンプ客もいない。レジャー客もいない。
「この景色を独り占めか」
少し得した気分になる。
車を停め、荷物を降ろし始める。スマホで小さく音楽を流しながら設営開始。
こういう時間もキャンプの楽しみだ。タープを張り、ポールを立てる。風向きを確認しながら位置を決めていると――
「お兄さん、誰?」
突然、後ろから声が聞こえた。
「ん?」
振り返ると、そこには小学生くらいの子供が2人立っていた。
女の子と男の子……女の子の方が少し背が高い。おそらく姉と弟だろう。俺は視線を合わせるためにしゃがみ込んだ。
「俺は翼って言うんだ。今日と明日ここでキャンプをして、明後日に帰る予定だよ。君たちは近くに住んでいるのかな?」
すると女の子が胸を張った。
「私は、しずかっていうの。こっちは従妹のりゅうすけっていうの」
「しずかちゃんにりゅうすけ君だね。初めまして。でも、知らない人に声をかけて、お父さんやお母さんに怒られないのかな?」
すると男の子が不安そうに聞く。
「お姉ちゃん、よかったの?」
しかし、しずかちゃんは平然としていた。
「お兄さんは大丈夫だよ。お父さんが、キャンプをする奴に悪い奴はいないって言ってた」
おいおい……その理論は危険じゃないか?
「たまに来るおじさんたちとも遊ぶから、問題ないよ」
むしろ警戒心が低過ぎる。俺が困惑していると、
「じゃぁ、僕たちとも遊んでくれるかな?」
「お兄さんは初めてだから、わからないよ」
2人だけで相談を始めた……俺の目の前で。
「2人とも、遊んでほしいのかな?」
「「うん!」」
元気な返事だった。
「お兄さんは遊んでもいいんだけど、しずかちゃんとりゅうすけ君の家族に許可を取ってからにしようか」
すると2人は大喜びした。
「こっち!」
「早く!」
両腕を引っ張られて歩くこと200mほどで、一軒家へ到着した。
2人は家へ飛び込んでいく。俺は玄関前で待機……
しばらくすると女性が出てきた。俺の両親より少し若そうだ。
事情を説明すると、何度も頭を下げられてしまった。
「本当にすみません」
「いえいえ。俺ものんびりするだけですから」
その後は、アレルギーや注意点を確認。何かあればキャンプ場所へ来てもらうことになった。
そして、再び2人に引っ張られてキャンプ場所へ戻る。
2人は思った以上に働いてくれた。ペグを運び、ロープを運び、テーブルを運び、設営を楽しんでいる。気付けばテントも完成した。
「できたー!」
「完成ー!」
2人とも大満足だ。
椅子は2脚しかない……なのでシュラフ用マットを木の板の上へ敷き、その上へ座らせた。
疲れた様子はなく、むしろ元気だった。
「そろそろ昼飯にするか」
クーラーボックスを開き、何を作ろう? 缶詰を漁る。
「よし」
予定変更して、サバ味噌缶と豚汁用の野菜を使った炊き込みご飯にしよう。
メスティンへ米を入れ、具材を投入し、水を加える。サバ味噌の汁も全部入れているので、味付けはしなくても問題ない。
さらに牛スジも温め始めた。すると2人が興味津々で覗き込んでくる。
「お兄さん料理できるの?」
「うちのお父さん全然できないよ!」
「うちのお父さんも見たことない!」
突然始まる父親批判……なんだろう……全国のお父さんが泣きそうな会話だった。
しばらくして完成! 炊き込みご飯、牛スジ煮込み、インスタント味噌汁。
「いただきます」
「「いただきます!」」
勢いよく食べ始める。好き嫌いはないらしい。全部綺麗に食べてくれた。
「おいしい!」
「また食べたい!」
気に入ったようで何よりだ。だが満腹になったせいか、徐々に動きが鈍くなる。
眠そうだ……これはまずい。ここで寝られても困る。
どうしたものかと考えていると、
「しずかー! りゅうすけー!」
遠くから女性の声が聞こえ、2人は元気よく返事をする。
昼ご飯の時間らしい。
「食べたー!」
「お腹いっぱいー!」
満面の笑みで答えていた。
女性がこちらへ来て、再び謝られた。俺も勝手に食事を出したことを謝る。
お互い謝り合う妙な状況だった。そして眠そうな2人を連れて帰ることになる。
りゅうすけ君もしずかちゃんも、かなり眠そうだった。りゅうすけ君は女性が抱き上げて、俺はしずかちゃんを抱き上げて歩く。
食べた物の説明もしながら家まで送ると、お礼として果物をもらう。
りゅうすけ君の家が農家らしい……袋を開くと、
「おぉ」
ぶどうが1房、桃が1個、ブルーベリーも大量。
「豪華だな」
後で川で冷やして食べよう。キャンプ場所へ戻り、今度はキャンプシアターの準備を進める。
スクリーン用のタープを張り、昼間でも使えるように光を遮断するようにタープを張り、夜の準備を整えていく。
その後、水へ浸けていたメスティンを洗浄、汚れを落とし、片付けも終える。
「さて……」
やることがなくなった。
川の音が聞こえる。風も気持ちいい。果物でも食べるか。
そんなことを考えていた、その時だった。
「きゃあああっ!」
「うわああああ!」
子どもの悲鳴が聞こえた。しかも2人分。
「っ!」
聞き覚えのある声だった。俺は反射的に立ち上がり、慌てて周囲を見回した。
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