045 ミミのお気に入り場所が増えた?
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昼食を食べ終えた後、俺たちは完成した縁側を見に外へ出た。設置する前に、改めて出来を確認するためだ。
少し離れて全体を眺める。
「うん、思ったよりよくできてるな」
久々に作ったにしては悪くない。寸法は、ホームセンターで切ってもらったのでずれはなかったし、色も落ち着いている。
一緒に出てきた楓と母親も頷いていた。
「いい感じね」
だが、少し気になることもあった。俺は空を見上げる。
「でも、さすがに直射日光が当たると、暑くて過ごしにくそうだな……」
縁側を置く予定の場所は、時間帯によっては日差しがまともに当たるし、真夏だと縁側も熱くなりそうな気もする。
すると母親が言った。
「朝から昼くらいまでしか陽がかからない場所だから、そのままでもいいと思うわよ」
「にゃー」
ミミも母親に同意するように鳴いた。ミミが問題ないというなら、特に何かする必要もないか。
楓と2人で縁側を持ち上げ、リビングの掃き出し窓の外へ運び設置する。
位置を調整している時に、ふと上を見た。
「あれ?」
今まであまり意識したことがなかったが、屋根が少し前へ出ていた……雨除けの役割なのだろう。
「思ったより陽が当たらないかもな」
朝だけ日が差して、昼以降はほとんど影になりそうだった。設置が終わった瞬間、
「にゃっ!」
ミミがリビングから飛び出してくる。そして縁側の中央まで歩いていき、
デローン……完全に伸びた。
お腹を丸出しにし、四肢を投げ出し、まるで自分専用の高級ベッドを手に入れたかのような態度である。
「気に入ったみたいね」
そんなミミを見た楓は、すぐにスマホを構える。
パシャッ、パシャッ。
連続で写真を撮り始め、さらに何やら操作を始める。
「何してるんだ?」
「お父さんにミミちゃんの写真送った」
なるほど……仕事中の父親へ、自慢するつもりらしい……いや、自慢というか嫌がらせでは?
楓本人に悪気はなく、むしろ好意100%だ……だから余計に質が悪い。
家族グループへ写真が投稿される。
すると数十秒後に既読がついた。
「休憩時間だったみたいだな」
さらに返信が来る。
『グヌヌヌヌ……なんで俺がいない時にそんな姿を……』
父親らしからぬ文章だった。
「相当悔しいみたいね」
「お父さん可哀想」
全然可哀想だと思っていない顔で楓が言った。
その後も父親から、
『追加写真希望』
と送られてきていた。
せっかくなので、今日もミミの世話をすることにした。
「ミミ、ブラッシングするか?」
「にゃー」
快諾だった。
ブラシを持って縁側へ座る。ミミは当然のように膝の上へやってきた。
ブラシをゆっくり動かす。毛がつやつやになるように……健康になるように……そんなことを念じながら丁寧に梳かしていく。
続いてマッサージ、痛い場所がなくなるように……元気で長生きできるように……念じながら揉んでいく。
「ゴロゴロゴロ……」
喉を鳴らしていたミミは、いつの間にか目を閉じていた。
「ミミが外で寝てるな」
キャンプへ行った時でも、しっかり寝る時はテントの中か車の中だった。こんな風に家の外でがっつりと寝る姿は初めて見る。
「本当に気に入ったのね」
「にゃー」
寝ながら返事をした。
俺は少し満足していた。ミミのお墨付きをもらえた気分だ。
3人でそんなミミを眺めていると、
「にゃ~」
ミミが一鳴きして、楓が反応する。
「ミミちゃん、爪が伸びたの?」
そう言いながら前足を持ち上げる。
「確かに伸びてるね。自分で爪とぎもしてるけど、爪を整えてほしいってこと?」
「にゃ~」
普通に会話している。だが今さら誰も突っ込まない。俺も母親も慣れてしまった。
「ミミちゃんは誰に爪を整えてほしい?」
「にゃ~」
「え? 私でもお母さんでもなく、お兄ちゃんがいいの? なんで?」
「にゃ~」
少し考え込んだ楓が言った。
「私は雑になって、お母さんだと短くなりすぎるから、お兄ちゃんがいいんだ」
理解したらしい……本当に理解したのか?
すると楓が振り返り、
「はい」
手には電動やすりを持っていて、当然のように渡された。
「選ばれたんだから頑張って」
少し嬉しい。ミミを再び膝へ乗せ、肉球を軽く押して爪を確認する。
「確かに伸びてるな」
1本ずつ丁寧に削る。先端は尖らせず、軽く丸くする。
ミミは大人しくしていた。途中で寝そうになっている……全部終わる頃には、半分寝ていた。
終わった後、自分の爪をペロペロ舐め、確認しているらしい。
「ミミ、肉球の周りの毛が少し伸びたから、短く整えるか?」
そう言うと、自分の前足を見た……そして、
すっと、俺の方へ肉球を突き出してきた。
「おぉ……」
少し嬉しいな。
ミニバリカンを用意して、肉球の間を慎重に刈り込む。終わったら濡れタオルで拭いて毛を取り除く。
嫌がる様子はなく、むしろ気持ち良さそうだった。
全部終わると、再び縁側の中央へ移動。
そして、ゴロン……ゴロゴロ、デローン……
見ているだけで少しほっこりする。
すると母親が時計を見た。
「あら、もうこんな時間なのね。ちょっとお腹が空いたから、ホットケーキでも焼きましょうか」
「やった!」
楓が歓声を上げた。
俺たちは家の中へ戻る。
ホットケーキが焼かれている間、俺はスマホを取り出し、バイトのシフト確認をする。
すると横から楓が覗き込んできた。
「お兄ちゃん、なにしてんの?」
「次のキャンプの予定を決めようかと思ってな。大学の課題も全部終わってるし、バイトが無ければ暇だからな」
「ふ~ん。予定が空いてたら、一緒に行ってあげてもいいよ」
「予定が合えばな」
シフトを確認すると、来週に2日の連休があった。
「お、ここだな」
2泊3日……帰宅日にバイトはあるが、それでも1日ゆっくりできるから悪くない。
早速キャンプ場を調べる……
「あー……」
「どうしたの?」
「キャンプ場に空きがない……」
夏休みを甘く見ていた。
「それはそうよ。暑くてもキャンプ場は涼しい所が多いし、夏休みだから利用者が多いのが普通よ」
「清里のオートキャンプ場は、すんなり予約が取れたけど……」
「あれは運よく空きが出たタイミングだったんじゃないの?」
なるほど……確かにそうかもしれない。
すると母親が続けた。
「翼なら河川でのキャンプもおすすめよ」
「河川?」
「経験もあるし、スキルもあるでしょ? 虫が多い場所もあるけど、あなたなら問題ないと思うわ」
キャンプ設営があれば虫は寄ってこない。
「ただし、キャンプできる河川とできない河川があるから、事前に調べて河川管理事務所とかへ確認した方がいいわよ」
そういうルールもあるのか……そういえば、前回の川沿いキャンプ場は快適だった。
車が入れて、川から程よい距離があり、少し高低差がある場所が理想だ。
ホットケーキを食べながら探していくと、良さそうな河川を発見した。
「ここ良さそうだな」
河川のある町役場を調べ連絡する。
管理場所を確認して、キャンプ可能か問い合わせる。
『綺麗に使っていただけるなら問題ありません』
とのことだった。
母親が頷く。
「許可がなくても問題ない場所は多いけど、事前確認は大事よ。トラブル防止になるから」
キャンプは自由だ。だけど、何をしてもいいわけではない。
ホットケーキを食べ終え、次のキャンプ先も決まった。
しかも今回は少し試したいこともある。
買い物できる場所が近くにないから、食料は事前に買い込む必要がありそうだ。
まあ、出発まではまだ時間も暇もある。ゆっくり準備するとしよう。
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