044 簡単に取れた……
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朝、目を覚ますと、まだ外は薄暗かった。以前なら二度寝していた時間だが、もう眠気はほとんど残っていない。
「少し寝る時間を考えた方がいいかもな」
最近は寝付きもいいし、目覚めもいい。キャンプ設営の効果とステータス上昇の影響なのだろう。
だが眠れないものは仕方ない。
「どうせ眠れないし、起きるか」
昨日の続きをやることにした……縁側の二度塗りだ。
部屋を出て階段を降りると、キッチンでは母親が朝食の準備をしていた。
「おはよう」
今日は少し忙しそうだ。
「早いわね」
「目が覚めた」
少し笑われた。俺は返事をしながら外へ出る。
朝の空気は、本来ならもう暑いはずなのに快適だ。
昨日使った水性ウッドステインの缶を持ち上げる。蓋を開けて軽くかき混ぜる。
刷毛に染み込ませ、縁側へ塗っていく。ウォルナット色の木材は、二度塗り……いや、組む前の一回をカウントすれば三度塗りか。
「いい感じだな」
木目も綺麗に見える。黙々と塗り続けているうちに、空も徐々に明るくなってきた。最後の部分を塗り終えた頃には、すっかり明るくなっていた。
刷毛を洗って片付け、縁側を眺める。久しぶりに作ったにしては悪くない。
そんなことを考えていると、
「朝ご飯できたわよー!」
母親の声が聞こえた。
手を洗ってリビングへ入ると、すでに楓が席についていた。
「お前もう起きてたのか」
「起きてた」
まだ少し眠そうだが、ちゃんと起きている。ちょっと前まで、何度か起こされていたはずだ。
やはりキャンプ設営の影響だろう。
そう考えると少し気になることが増えた。この回復効果は寝ている間だけなのか、それとも範囲内にいる間は常時有効なのか。
多分後者だろうな。
キャンプ設営自体が常時発動型のスキルだ。わざわざ睡眠時限定にする理由はないと思う。
席へ座り、そこで違和感に気付いた。
「あれ? 父さん、なんでスーツ着てるの?」
休日なのに珍しい。
父親は味噌汁を飲みながら答えた。
「今日と明日は外せない仕事があってな。出勤しないといけなかったんだよ」
「ああ、そういうことか」
「2日行けば来週末まで休みだ」
俺は母親を見る。
「母さんは?」
「私は元々来週末まで休みよ」
平然と言われた。2人して長いな。
会社勤めってそんなに休めるものなのだろうか? ゴールデンウィークは忙しいとか言っていたし、その分が夏に回ってきたのかもしれない。
朝食を食べ終えると、楓が立ち上がった。
「ミミちゃん行こう」
ミミを抱き上げて部屋へ向かった……完全に昨日と同じ流れだった。
父親は出勤準備を始める。
俺はふと思い出した。
「そういえば、課題提出してなかったな」
夏休みの課題はすでに終わっている。
俺の通う大学では、終わった課題から順次提出する方式だ。学校指定のデータストレージを教授へ提出する必要がある。ネットで送ればいい気もするが、大学の決まりだから仕方ない。
その話をすると父親が言った。
「途中まで乗せていってやるよ」
「助かる」
準備を済ませて一緒に家を出た。車に乗り込み出発する。朝の道路はまだ空いていた。
しばらくして大学近くへ到着する。
「ありがとう」
「気を付けてな」
父親はそのまま会社へ向かっていった。
俺は正門へ向かう……ちょうど開門時間だったらしい。そのまま校内へ入り、教授の研究室へ向かった。
ノックする。
「失礼します」
「おや、翼君。どうしたんだい?」
「おはようございます。課題の提出に来ました」
「おぉ」
教授が嬉しそうな顔をした。
「今年は早めに提出する学生が少なくて困っていたんだよ」
「そうなんですか?」
「理由は察しているけどね」
苦笑している。多分ダンジョン関係だろう。
「学生には勉学を優先してもらいたいんだけどな」
そう言いながらデータストレージを受け取り、確認作業が始まった。
しばらくすると、
「うん、問題なさそうだ」
教授は満足そうに頷いた。
「後で精査しておくよ」
「お願いします」
「そういえば、翼君はダンジョンには行かないのかい?」
「戦闘向きのスキルじゃなかったので」
「そうか……あの謎の言葉が本当かどうかは分からない。でも君には君のやるべきことがあると思う。無茶だけはしないようにな」
それから少し雑談をして研究室を出た。
思ったより早く終わったので、暇になってしまった。
帰るかと思いながら駅へ向かう途中……
「ん?」
見慣れないビルが目に入った。入口には大きく案内が出ていた。
ダンジョン探索関連施設。
「そういえば資格が必要になったんだったな」
一応見ていくか……興味本位で中へ入る。
受付近くにパンフレットが置いてあった。一部もらい、近くの椅子へ座る。
「ダンジョン入場資格取得条件……」
「18歳以上で、戦闘スキルを持っているか、戦闘技術を証明できる者か」
さらに講習、そして試験……合格後に資格発行。
「車の免許みたいだな。でも、スキルを調べられないのに、どうやって証明するんだろうな……」
「スキルを確認する方法があるので誤魔化しはできませんよ」
振り向くと職員だった。
「あ、そうなんですか」
「嘘の申告をした場合は1年間受験できません」
意外としっかりしている。
「資格だけ取ることもできますか?」
「もちろん可能です。ただし戦闘スキルか戦闘技術は必要ですね」
「短剣術なら持ってます」
「それでしたら確認しましょう」
別室へ案内された。
しばらくすると機材を持って戻ってくる。手のひらを板状の装置へ乗せる。
数秒後……職員の目が少し見開いた。
「スキル16個ですか……初回検査としてはかなり多いですね。それに短剣術レベル3」
職員が頷いた。
「受講資格は問題ありません。もう少ししたら講習があります」
そして料金説明があった。
「講習は無料です。資格証発行に5000円必要になりますが、どうなさいますか?」
少し考えたが受けることにした。
一度コンビニへ行って飲み物を購入。その帰り道に母親へ連絡も入れる……少し帰宅が遅くなることを伝えておいた。
講習室へ入ると、受講者は50人ほどいた。
講習が始まる。
内容は想像以上に真面目だった。ダンジョン内のマナー、遭難時の対応、犯罪行為、武器携帯のルール……特に犯罪については厳しかった。
ダンジョン内犯罪は執行猶予なしで懲役刑。初犯でも関係ない……さらにスキルを利用した犯罪は通常より重い刑になる。
短期間で法律が整備されたということは、それだけ問題が多発したのだろう。
講習終了後、すぐに試験が始まった。
簡単で講習を聞いていれば、常識的に答えられる問題ばかりだった。だが結果発表で驚いた……約4割が不合格だったのだ。
俺は無事合格……資格証を受け取って帰宅した。
家へ帰ると、
「おかえりー」
「にゃー」
母親と楓とミミが迎えてくれた。昼食も待っていてくれたらしい。テーブルへ座りながら資格証を見せる。
「ずるい」
「何がだよ」
「私も欲しい」
「楓はどうせダンジョン入らないだろ」
ミミが呆れたような顔で楓を見ている。
そんな平和な昼食が始まった。
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