042 スキルと身体能力の関係……
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広場での検証を続けていると、作業中にふと、違和感を感じる……
「……なんかさ」
俺はテントの支柱を軽く持ち上げる。
「テント、軽く感じるんだけど?」
「やっぱりそうか。俺と楓は特に変わらなかったけど、母さんは、お前と同じで力が上がってる感覚があるらしい」
母親はロープを結びながら頷いた。
「うん、なんかね。重いものが前より楽に持てるのよ」
「多分だが、通常スキルの取得量やレベルの差だと思う。俺たちはあまり変化を感じないが、母さんは料理や家事系のスキルを取得したからな。短剣術もそうだな」
父親は作業をしたまま続ける。
「最初は気のせいだと思っていたらしいが、短剣術スキルが上がったときに、はっきり力の変化を自覚したっていってたな」
「スキルがステータス……身体能力に影響を与えるってことかな? で、戦闘系のスキル、今回なら短剣術スキルが上がってから、戦闘に重要なステータスである、力が上がった感じかな?」
「多分な。ネットに書き込めないから定かではないが、モンスターを倒しても体? ん~、ベースのレベルは上がらないって話だから、スキルに依存して強くなる感じじゃないかと思ってる」
戦闘技術に直結するスキルは、戦闘をすれば上がりやすく強くなりやすいんだろうな。だから、ダンジョンに潜る戦闘系のユニーク持ちは、どんどん強くなっていくのか……
そんな人たちなら、俺のキャンプ設営の範囲内に入れないのだろうか? それとも、力で結界のようなものが壊せるのだろうか?
「スキル数とレベル依存で、ステータスが上がるんだろうな」
もう一度テントを見る……軽い、確かに軽い。今まではもっと重く感じたのに、持ったときの負荷が明らかに違う。
スキルが身体能力に影響を与えているのは、ほぼ確定だろうな。
そのとき、父親が手を止めた。
「検証は一旦ここまでだな。確認したいことは全部終わった」
メモを閉じる。備品の確認は終了し、片付けへ移行していた。倉庫の中にあった備品も大体整理されている。
そのとき、二度目の違和感を感じる……俺は片付けを続けているのに、
「重いもの持っても、疲れあんまり来なくなってないか?」
父親がすぐに反応する。
「それも体力やスタミナ系のステータスの影響だろうな」
「私も前より全然平気よ」
疲労が溜まりにくいのか、抜けるのが早いのかは分からないが、重い資材を持っても、腕に残らないし、呼吸が乱れない。
本当にスキルがステータスに直結しているんだろうな……その仮説は、もうほぼ揺るがないところまで来ていた。
片付けを残すだけになり話題がなかったので、少し前から気になっていたことを、父親に聞いてみることにした。居酒屋の店長に聞かれるまで疑問に思っていなかったことだ。
「父さん、そういえばさ、なんでうちの苗字って『きゅうじゅうはち』って書いて、『にのまえ』って読むの? 百の2個前なら『にこまえ』とか『にたらず』って言うんじゃないの?」
「少し長い話になるがいいか?」
そんなことを言うと、楓も気になったのか、一緒に聞くと騒いでいる。
「父さんも、昔気になって調べたことがあるんだ。
前提として日本の苗字は、土地に由来するものが多く、作られた苗字もあるが、否定的な言葉や意味の込められた苗字はほとんどないんだ。
死を連想させるものは、魔除けや長寿の願いが込められることが多い。鬼は、強さや畏れられる力の象徴。熊、狼、蛇などは、危険な動物ではなく、力強さや神聖さの象徴でつけられているんだ。
その反面、魔除けとして、悪い名前を付けることはあったんだ。昔は子供が幼くして亡くなることが多かったため、呪いや不吉が寄り付かないように、捨吉、捨松、捨蔵のような名前が付けられて、この子は大したことがない子です、とアピールしたようなんだ。
で、九十八は苗字だから、否定的な言葉として二足らずのような『足らず』にはならなかったそうだ。お前が言ったように『にこまえ』でもいいのでは? と思ったが、語呂の問題で意味の通じる『にのまえ』という形になったと言われている。
百の2つ前、ふたつまえ、にこまえ、にのまえ……と変化したっぽいんだ。正確なことは、苗字を付けた本人じゃないから分からないけどな」
「分かるようで、分からないな……にのまえも、考え方によっては、百に届かない半端者って意味じゃないか?」
「それは違うぞ。一とかいて、『にのまえ』って読むことは知ってるか? あれは、元々言葉遊びのようなものではあったが、後付けで二の前に一がある……だから『にのまえ』には、成長できるという意味が後付けされたとも言われている。
それと同じで、九十八とかいて『にのまえ』と呼ぶようになったのも、同じような理由なんだと思うぞ」
特に深い意味はなさそうだが、そういった由来があるんだな……苗字に否定的な意味が使われないっていうのも、初めて知ったわ。鬼頭とか、鬼の頭って見た目が鬼じゃなくて、鬼のように強いカシラとか、そういう意味があるんだろうな。
荷物を運ぶのは、台車を押すだけだから、楓や母親がやってくれているが、倉庫に積んだりするのは俺と父親でやっているんだよな……さすがに疲れたわ。
「そういえばさ、回復魔法みたいなのを使える人っているのかな?」
「私の友達に、ユニークスキルで回復魔法みたいなのが出た子がいるよ。手を当てて、念じると何かよくなる感じがするって程度だけど」
「それは、スキルレベルが低いか、使い方が間違っているのかもしれないな」
父親の考察はそうらしい。
「念じながらマッサージとかしたら、意外と覚えたりするのかな? 整体師とかエステティシャンとかが、覚えそうなスキルではあるな……ユニークスキルが上がれば、そういった職業についている人たちには、回復系のスキルが生えてくるかもな」
俺も、試しになんかしてみるか? 両親のマッサージや、ミミのブラッシングやマッサージをしたら、スキルが生えてこないかな?
「父さん、母さん、帰ったら、久々にマッサージするわ。実験に付き合ってくれ。ミミは、ブラッシングとマッサージをするから、手伝ってくれな」
両親は笑顔で、ミミも嬉しそうに鳴くが、楓だけは不満そうだ。
「お前にマッサージは必要ないだろ……むしろ、飯とか作ってやってるんだから、俺にマッサージするべきじゃないか?」
そういうと、母さんが楓を見る。
「あなた、昨日自分で作るとか言って、結局、翼に作ってもらったのね!」
楓に、ちょっとした雷が落ちた。
ミミは、母親の雰囲気を察して、楓の近くにいたのに俺の足元に来ていた。
することも終わり、父親が貸してくれた人へ電話をしている。いくつか修繕が必要な備品はあったが、それらは別けてガムテープを張り修繕ヶ所を記入してある。
家に帰ると、まずは力仕事をした父親のマッサージをする。母親は夕食の準備を始めたので、食事後か入浴後かな?
楓も足が疲れた! とか言っているので、自分で揉んどけ、と言っておく。
マッサージも終盤に差し掛かると、いつの間にか寝ていたはずのミミが、ブラシを引きずって近くに待機していた。
寝そべりながらも父親がブラッシングをしてやると言っても、父親から距離をとってしまうため、父親は明らかにへこんでいる。
マッサージが終わり、ミミのブラッシングを始めようとすると、
「お兄ちゃん、ミミちゃんブラッシングの前に、先に足が疲れてるから、足や肉球をマッサージしてだって」
贅沢なことを言っているが、ミミのお願いだから聞いてやるけどな。
俺は足を延ばして、太ももの間にミミを挟み、肉球と足を軽くマッサージしてやる。もちろんマッサージの最中は、良くなれとか元気になれ、みたいなことを考えて、念じながら行っている。
満足するとお腹からブラッシングを始め、体全体をしていく。
「抜け毛が少ないな? この時期って、もっと毛が抜けなかったっけ?」
「翼、ミミの毛が生え変わるのは、春と秋だからもう終わってるわよ。夏真っ盛りに生え変わったら、変わり終わるまでに熱中症になるわよ」
言われて納得。今生え変わってたら遅いな。
夕食後は母親のマッサージをして、お風呂へ入った。
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