037 キャンプ設営スキルの可能性?
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目が覚めたので、スマホを確認すると、時刻は6時半だった。キャンプ中は6時前に目が覚めていたから遅く感じるが、普段の休日を考えれば十分早い。
眠気は残っていない……寝起きのだるさもない、昨日までキャンプしていたからかな? そんなことを考えながら起き上がる。
昨日干したままになっているテントやタープも気になるので、先に庭へ出ることにした。
外へ出ると、朝の風が気持ちいい……そこで違和感に気付いた。
「あれ? お母さん、エアコン付けてないの?」
家の窓や扉が開け放たれていたのだ。キッチンでは母親が朝食の準備をしていたから聞いてみたところ、
「ミミちゃんが閉めるのを嫌がったから、暑くなったら閉めると約束したけど、暑くならなかったから開けたままなのよ」
普通ならこの時期は朝から蒸し暑いはずだが、実際には快適だった。昨日設置したタープの周辺を見ても虫はほとんどいない。
「この状態が続くなら、蚊帳の代わりをできるような、風通しのいいタープとか買ってきた方が良さそうだね」
母親は即座に同意して、
「後でお父さんにお願いするから、一緒に買いに行ってきて」
俺が何か言う前に父親の予定が決定していた。
「でも、俺、12時からバイトだから、早めに行動しないと買っても立てる暇ないけど大丈夫?」
「そろそろ起きてくるはずだから問題ないわよ」
完璧に把握しているな、長年連れ添った夫婦は凄い。
俺は庭へ出てテントやタープを確認すると、しっかり乾燥しているし問題なさそうだ。そのまま片付けを始めようとしていると、
父親が出てきた。
「おはよう」
「おう」
そのまま何も言わず手伝い始める。テントを畳みながら、昨日の話を伝えた。ミミが窓を開けたままにしたがったこと。新しいタープが欲しいこと。
すると父親は頷いた。
「母さんから聞いた」
どうやら既に話は通っていたらしい。
「10時開店だから、それに合わせて出るか」
作業を続けながら、ふと気になったことを聞いてみる。
「そういえば、休みの日はもっと遅くまで寝てるのに、なんで今日は早く起きたの?」
「多分だが、お前のキャンプ設営の範囲内にいたんだろうな。目が覚めたらすっきりしていて、すぐに体を起こしたくなったわ」
昨日張ったタープを思い出す……確か寝室の窓付近だったはずだけど、父親たちの寝る位置までは4~5mは離れている。
思っている以上に効果範囲が広い可能性はあるな。
今日は時間ないけど、明日試してみるか、色々実験してみたいしな。
そんな話をしていると、
「おはよー……」
楓が起きてきた。頭は寝癖だらけだ。その後ろからミミも付いてきている。
朝食を食べながら買い物の話をすると、
「私も行く!」
「にゃー!」
ミミまで便乗してきたので、ミミを連れて行くことになった。
キャンプギア専門の大型ショップだが、ペット同伴でも悪戯さえしなければ問題ない店だった。ミミを連れていけるのは助かる。
それにしても最近のミミは本当にアクティブだ……若返った影響なのか、外へ出たがることが増えている。
9時半になる前には俺はバイトの準備も終わらせていた。買い物から帰ったら、そのまま出勤する可能性が高いからだ。
そして開店時間に合わせて出発した。
店へ入ると、やはり少し注目を集める。楓がミミを抱いているからだ。
「猫だ」
「珍しいな」
そんな声が聞こえる。犬連れは割といるらしいが、猫連れは少ないようだった。
ミミは興味津々で周囲を見回している。
だが先に目的の物だ。俺たちはタープ売り場へ向かった。探してみると、蚊帳のようなものはあった。だが全体がメッシュ生地のタープはない。
考えてみれば当然だった。日差しや雨を防ぐためのタープがメッシュでは意味がない。
「難しいな」
そう思いながら探していると、
「あった」
ちょうど良さそうな物を発見した。タープに追加できるメッシュパネルだ。リング同士を結んで固定できるタイプらしい。しかも俺が欲しかった高遮光・高撥水のタープとセットの物だ。
「これ良くないか?」
父親も確認する。少し相談した結果、半分ずつ出し合うことに決まった。
その頃、楓とミミはペット用品コーナーにいた。色々試していたらしいが、
「駄目だった」
楓が戻ってきた。
「何が?」
「ミミちゃんが全部微妙って」
どうやら犬向けの商品が多かったらしい。ベッドもクッションもハーネスも……結局、
「家の毛布クッションが一番」
という結論になったそうだ。
買い物を終えて帰宅した頃には11時前だった。
「急ぐか」
俺はすぐ作業に取り掛かる。昨日のタープを撤去し、新しく購入したメッシュパネルのタープへ交換する。
設置場所は4ヶ所、風が通る窓の周辺だ。作業自体は難しくない。慣れているからな。
メッシュパネルを張り終えた後、さらに上からすだれを設置した。白いメッシュが丸見えだと少し不自然だからだ。
「夏っぽいな」
見た目も悪くない。
最後に何となく念じてみる。家族以外は入れない、そんなイメージだ。すると少しだけスキルが反応したような感覚があった。
「たぶん大丈夫だろ」
不用心に見えるが、最高の防犯設備かもしれない。
そして時間になったのでバイト先へ向かう。
店へ入ると、
「九十八、今日はすまんな」
店長が苦笑いしていた。
「スキル事件で武術系スキルを覚えた社員が2人辞めるのに、新しく採用できてなくて、お前さんに手伝ってもらうしかなかったんだわ」
そう言いながら開店前準備を始める。以前手伝った時とは様子が違った。
この時間は業者の搬入もあり、店長自身も買い出しへ行くらしい。人手不足で大変そうだった。
「キャンプのタイミングがずれてたら危なかったな」
「本当だよ」
店長は笑った。そして賄いを出してくれる。アジフライ定食だった。
「いただきます」
揚げたてで美味い! 食べながら、改めて仕事内容を聞く。
基本は前回と同じで、やるべきことがリスト化されており、終わったらチェックを付ける方式だ。
説明が終わると店長は買い出しへ出掛けていった。
俺はリストを確認する。一番上に大きく書かれていたのは、冷蔵庫・冷凍庫確認だった。冷凍庫にある食材と冷蔵庫の在庫を照らし合わせながら補充状況を確認していく。
地味だが重要な作業らしい。
そんなことをしていると、店の電話が鳴った。対応すると配送業者だった。
荷物が到着したので搬入口を開けてほしいらしい。
外へ出ると、届いたのは生鮮食品だった……しかも20箱近い数だった。
「多いな……」
一緒に確認し、問題なかったのでサインをしていると、今度は酒屋が来た。
ビール樽、日本酒、焼酎、品名と本数を確認して再びサイン。
さらに別の荷物も届く……調味料、消耗品、その他色々……次々に業者が来た。
「居酒屋ってこんなに色んな業者と関わってるんだな」
少し感心した。
しばらくして店長が戻ってくる。荷物の話をすると、
「ああ、足りなかったやつがあるわ」
どうやら近くの店まで買いに行ってしまった。そして開店準備まで少し時間ができた。
「店の食材使って適当に賄い食っていいぞ」
店長が言う。
「どうせ今日は21時までだろ。営業始まったら休憩なんか取れないからな」
確かにその通りだった。冷蔵庫を見ている時から気になっていた物がある。
「刺身の端材って使っていいですか?」
「捨てるやつだから好きにしろ」
許可が出た。なら遠慮なく使わせてもらおう。
酢飯を作り、端材を切り分ける。マグロ、サーモン、白身など……高級そうな部位まで混ざっていた。
完成したのは色鮮やかな海鮮丼だった。
「美味そうだな」
店長が覗き込む。
「食べます?」
結局半分分けることになった。代わりに店長が自分用に用意していたトンカツを半分くれた。豪華な賄いになったな。
その後は開店……忙しかった。
あっという間に時間が過ぎる……気付けば21時。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
仕事を終え、店を出る。家へ向かいながら思う。
キャンプ設営については分からないことだらけだな……明日は時間があるから、少し本格的に実験してみるか。
そんなことを考えながら、俺は家路についた。
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