032 家族キャンプ2日目②
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俺と楓は団欒スペースでのんびりしていた。足元ではミミがクッションの上で丸くなり、時々尻尾だけを動かしている。
「やっぱり、家のキャンプエリアだけ過ごしやすいね。他のキャンプサイトにミミちゃんとお邪魔したけど、内と外で変わらなかったし、虫も多かったよ」
楓はキャンプチェアーに座りながら空を見上げた。つられて見上げると、木々の隙間から見える青空は高く、真夏だということを忘れそうになる。
そんな中、少し離れたキャンプシアターの方から、話し声が聞こえてくる。何を話しているのかまでは分からないが、時々笑い声が混ざる。
「楽しそうだな」
「お父さんとお母さん、完全に映画館モードだよね」
2人とも映画を見始めると集中するタイプだったんだな……聞こえてくる声の感じからして、かなり楽しんでいるらしい。
「お兄ちゃん、そういえば、お父さんたちお酒持ってきてなかったっけ?」
言われて思い出した。俺自身はあまり酒を飲まないけど、居酒屋で働いているからそれなりに詳しい。全部お客様の評価や店長の評価だけど……
だから完全に忘れていたが、両親は違う。休みの前日になると2人で晩酌していることも多い。
「確か積んでたな」
「飲まないのかな?」
「聞いてみるか」
キャンプシアターへ向かい、中を覗くと父親と母親は映画を見ていた。
「ビール飲む?」
「飲む」
母親も続く。
「私も」
団欒スペースへ戻り、クーラーボックスから缶ビールを取り出す。
タンブラーは一度洗浄した。せっかくなら冷たい状態で飲んでもらいたいから、氷で軽く冷やしたタンブラーへビールを注ぐ。きめ細かな泡がゆっくりと盛り上がった。
「楓、運んでくれる?」
「任せて!」
その間に俺は、軽くつまみを作ることにした。
「何作るの?」
まずは時間のかかる方から取り掛かり、スキレットを取り出しオリーブオイルをたっぷり入れる。鷹の爪、刻んだニンニク、アンチョビ……
火にかけると少しずつ香りが立ち始めた。この段階でもう香りが美味い。
そのまま弱火で温めながら、もう1品に取り掛かる。母親が朝作っていたポテトサラダを少し拝借する。
「お母さん怒らない?」
「食べる用だから大丈夫だろ」
コンビーフをほぐして混ぜ、ブラックペッパーも追加。少し大人向けの味になる。
「美味しそう」
「酒には合うぞ」
小皿へ盛り付ける。
「楓、これもお願い」
「はーい」
再び楓が運搬係になった。
その間にアヒージョへ戻ると、オイルは十分温まっている。
シーフードミックスにキノコ類、ブロッコリーなどを次々投入した。先ほどとは違う香りが一気に広がる。
「いい匂い!」
楓が戻ってきた。
「2人にしては、多めじゃない?」
「昼飯にもするからな」
「やった!」
海鮮を入れる案は楓だった。先日、買い物に行ったときに、どうしても入れたいと主張したので採用した。
しばらく加熱すると具材に火が通る。最後にパセリを散らして完成。
「全部食べないでね」
そう言いながらキャンプシアターの中へ、父親も母親も嬉しそうだった。
「これはビールが進むな」
「美味しそうね」
完全に休日モードだった。そのまま俺は団欒スペースへ戻った。
しばらくのんびりしていると、昼前。
映画が終わったらしい、両親が戻ってきた。そして気付けば……
「寝てるな」
「寝てるね」
2人とも自分のキャンプチェアーに深く座り込んでいた。背もたれの高いチェアーに身を預け、仲良く昼寝している。ビールを2杯ずつ飲んだからか、気持ちよくほろ酔い状態で昼寝みたいだな。
そのまま起こさずにしておく。
俺と楓でキャンプシアターの片付けを始めた。
「あ」
「どうしたの?」
「全部食われた」
アヒージョのスキレットが空だった……見事に空だった。バゲットは準備してなかったのに、具材だけを全部食べていた。
「全部食べないでって言ったのに……」
楓のテンションが目に見えて下がる。
「海鮮は残ってるし、キノコも野菜もあるから大丈夫だ」
「ほんと?」
「もう1回作るぞ」
再び材料を投入し、残しておいた海鮮・キノコ・ブロッコリーを入れ、再加熱を始める。
今度は完全に昼食用だった。
準備が終わる頃、母親の膝で寝ていたミミが起きた。
「にゃー」
俺たちが昼食を運び始めると後ろから付いてくるが、途中で高級猫缶の前で止まった。
「猫缶か」
「にゃー」
「お前も昼飯だな」
楓が猫缶を用意する。楓がミミを抱えてキャンプシアターへ連れていくと、そこで満足そうに食べ始めた。
アクション映画を流しながら昼食にする。
「いただきます」
「いただきまーす」
バゲットをちぎり、アヒージョへ浸し、海鮮を乗せる。
「うまっ」
「これ好き!」
昼食としても十分だった。
映画も面白いけど、俺には仕事があった。
「ちょっと行ってくる」
「また?」
「ダッチオーブン確認」
赤ワイン煮は放置料理ではあるが、完全放置はできない。火加減や水分量を確認する必要がある。
とはいえ1分程度だ。
「すぐ戻る」
「我慢する」
楓は不満そうだったが待っていてくれた。確認するたびに香りは良くなっているから、夕食が楽しみになる。
そんな風に過ごしているうちに時間は流れていく。
父親は途中で起きて、再びお酒を飲み始めた。母親はのんびり本を読んでいた。
ただ好きなように時間を使っていた。そしておやつの時間になった頃、
母親の声が響く。
「おやつできたわよ」
集まってみると、テーブルの上には焼きたてのワッフルが並んでいた。
「美味しそう!」
表面はこんがり焼けていて、その上にバター、さらにハチミツがたっぷりとかけられている。
熱で溶けたバターとハチミツが混ざり合い、見るからに美味そうだった。
「いただきます」
外は少しサクッとしていて、中はふわふわ。甘さも丁度いい。
「最高だな」
「でしょ?」
母親が満足そうに笑う。
その後は、再びのんびり時間だったが、キャンプシアターに家族全員が集まる。俺と母親は時々ダッチオーブンを確認しながら、家族全員でコメディー映画を楽しんだ。
ダッチオーブンは確認するたびに、中では牛肉が少しずつ柔らかくなり、赤ワインと野菜の香りが深くなっていた。夕食への期待は高まるばかりだ。
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