表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/69

025 家族でのキャンプ先が決定

アクセスありがとうございます。

 母親は時計を見ながら立ち上がった。


「それじゃあ、行ってくるわね」


「いってらっしゃい」


「気を付けてね」


 楓と俺が見送る中、母親は仕事へ向い、玄関のドアが閉まる音がして、家の中が少し静かになる。


「で、キャンプだけどさ」


 俺が切り出すと、楓の目が輝いた。


「うん!」


 さっきまでの話の続きをするつもりだった。猫連れキャンプに必要な物、暑さ対策、ミミ用のスペースなど、色々考えることはある。


「リードには慣らしておいた方がいいかもな」


「確かに」


 そう言ったところで、楓のスマホが鳴った。


「あれ? えっ!?」


 スマホの画面を見ると、楓が飛び上がる。


「やばい!」


「何がだよ」


 慌ててメッセージを確認して、数秒後には立ち上がっていた。


「イベントのバイト!」


 意味が分からない。


「売り子をする約束してたけど、集合時間が変更になったって!」


「急だな」


 楓はすでに部屋へ向かって走り出していた。


「準備してくる!」


 数分後、着替えを終えた楓が階段を駆け下りてくる。


「行ってくる!」


「何売るんだ?」


「知らない!」


「知らないのかよ」


「会場で説明するって!」


 元気だけは十分あるが、何を売るのか分からないのによくやるな。


「気を付けろよ」


「はーい!」


 そう言って家を飛び出していった。嵐みたいだったな……通り過ぎた家の中は、静かになった。リビングに残されたのは、俺とミミだけである。


「……行ったな」


「にゃー」


 俺はソファへ座り、向かいに座るミミを見る。


「さて」


「にゃ?」


「お前、こっちの話は理解してるんだよな」


 ミミは尻尾を揺らした。楓みたいに会話はできないが、理解しているなら方法はある。


「はいか、いいえで答えられる質問なら何とかなるだろ」


 ミミがこちらを見る。


「キャンプ行きたいか?」


「にゃー」


 やっぱり言葉を理解しているし、行きたいんだな……返事がいつもより早い。


「暑いのは嫌か?」


「にゃー」


 やはり、猫だって暑いのは嫌だろう。


「だから涼しい場所を探すか」


 ミミは満足そうだ。さらに質問する。


「ご飯はどうする?」


 するとミミがじっと見てきた。


「いつもの猫缶でいいか?」


 沈黙。そして。


「にゃ」


 なんだろう……今のは、明らかに不満そうだった。


「高級猫缶がいいのか?」


「にゃー!」


 元気な返事だった。


「分かりやすいな」


 思わず笑う。せっかくの家族旅行だ、ミミも贅沢したいらしい。


「まあ、そのくらいはいいか」


 最近は、カリカリもよく食べている。楓が帰ってくる前は年寄りということもあり、猫缶中心だったが、今は食欲もあるしカリカリもたくさん食べる。


 だが高級猫缶は別腹らしい。


「父さんにも相談しないとな」


「にゃー」


 しばらくするとミミは立ち上がり、そのまま軽やかにキャットタワーを登っていく。途中で止まらず、若い頃みたいな動きで、一番上へ到着すると、窓の外を眺めながらくつろぎ始める。


「本当に元気になったな」


 気持ちよさそうだ。


 今日はバイトがないから、スマホを取り出して、色々調べることにした。父親が帰ってきたらすぐ話せるように、キャンプ場候補をいくつかピックアップしておこう。


 富士五湖周辺を調べるが、四尾連湖に比べると少し暑いらしい。避暑地としては有名だが、最近は8月ともなると暑さが抜けきらないらしい。


 ならば、清里周辺はどうだ?


「富士五湖も悪くないんだけど、ミミのことを考えると少し心配になる……どのくらい涼しくなるのか、暑いままなのか……」


 さらに調べる。


「清里の方が標高って高いんだな。湖がないけど、標高が高い分涼しいみたいだな。ミミにとっては悪くないかもしれないな」


 メモを取りながら比較していく……気付けば昼になっていた。


「腹減ったな」


 料理をするのは面倒だな、冷蔵庫を開くと野菜がちょっとあった。袋ラーメンがある。


「これでいいか」


 麺を茹でている間にレンジで野菜を温める、少し長めに茹でた麺を冷水で締める。簡単な冷やしラーメンだ。一番の袋麺のスープは、冷水に溶かしてもダマにならないのが特徴だ。


 皿へ盛り付けて食べる。


「美味いな」


 俺の横でミミも昼食である。食事を終えると満足そうに水を飲んでいた。


「ん?」


 何かを咥えている? ミミは、猫じゃらしを俺の足元へ置く。


「遊べと?」


 無言の圧を感じる要求だった。


「元気だな」


 仕方ない……猫じゃらしを振ると、ミミが飛び付く。


 さらに振る、追いかける、跳ぶ、捕まえる、逃がす……そんなことを30分ほど続けた。


「はぁ……」


 先に疲れたのは、俺だった……そんな様子を見たミミは満足したらしく、窓際の定位置へ戻る。


「獣医のいうように、本当に若返ってるだろ……」


 そうとしか思えない。


 やることも無くなったので自室へ戻り、棚に積んであった古いゲームを引っ張り出す。


 懐かしいタイトルだった。結局クリアをせずに放置してしまったゲームだけど、久しぶりに遊ぶと意外と面白かった。気付けば時間はあっという間に過ぎていた。


 階下から物音が聞こえる。母親が帰ってきたらしい。


「ただいまー」


「おかえり」


 さらに夕方、玄関が開く音がする。


「ただいまー!」


 楓だ。かなり疲れているが、妙に楽しそうだ。


「どうだった」


「売り子!」


「それは聞いた」


「いっぱい売れた!」


 よく分からないが、いっぱい何かを売ったらしい。何を売ったか知りたかったけど、面倒になったのでもういいかな。


 そして夕食の準備が進み、料理が完成する頃には父親も帰宅して、家族全員が揃う。夕食を食べながら、それぞれ今日の話をした。


 そして食後、俺はまとめておいた資料をテーブルへ置く。


「キャンプ場候補な」


 父親が身を乗り出す。


「富士五湖周辺と清里周辺か」


「どっちも良さそう!」


 楓も興味津々だった。そこから検討会が始まる。


 景色、施設、アクセス、周辺にある温泉……色々比較していく。


「やっぱり、清里の方が涼しいのね」


 母親が言う。


「標高が高いからな」


「ミミちゃんには良さそう」


 その時だった。


「にゃー」


 ミミが鳴き、全員の視線が集まった。


「ミミちゃんも賛成だって」


「本当か?」


「たぶん!」


 いつものことで、父親も笑う。


「じゃあ決まりだな」


「やったー!」


 楓が両手を上げ、ミミも満足そうに尻尾を揺らしていた。


 こうして我が家の家族旅行は、真夏の清里のオートキャンプ場に決定した。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
精進湖のキャンプ場。 富士山が大迫力出お勧め。 何もないけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ