137 ダンジョン初入場
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準備が終わったところで、俺たちはダンジョンの入り口へ向かった。
ここから先は、実際のダンジョンだ……今まで訓練施設で武器を振ったり、スキルの検証をしたりしてきたけど、実際にモンスターがいる場所へ入るのは初めてになる。
「ダンジョンに入る前に確認するけど、まずは、入り口から部屋もしくは分かれ道まで進むぞ。そこに到着したら、周囲を確認しながら、部屋ならテント、分かれ道ならタープを張るぞ。
その前にモンスターに遭遇したら、1匹なら俺が倒す。2匹なら、モンスターを倒したことのある翼が、3匹なら隼人が対応する形でいいな?」
健司が最後の確認をする。
「僕は、それで問題ないよ。でも、確率が少ないとはいえ、4匹以上だった場合は、どうするの?」
「その場合は、いったん引いて、戦いやすい場所で、1匹ずつ倒していく。その時は指示するからまかせろ」
「分かった」
健司は現実的に考えて、隼人は予想外の事態を想定して、最悪のことまで考えている感じだな。どちらも大切な考え方だと思う。
俺は2人の意見を聞きながら、自分ができることを考えていけばいいだろう。
「よし、俺が先頭な。2人は横並びでついてきてくれ」
健司が先頭に立ち、俺と隼人がその後ろにつく……この筋肉は、やっぱり頼りになるな。
先ほどまで話していた時と違い、ダンジョンの中へ入ると、3人とも自然と口数が減った。
明かりはヘルメットに取り付けたライトだけ。ダンジョンの中は、ほんのりと明るいのだが、ライトに照らされた範囲以外は、明暗の差で暗闇に感じる……
床は舗装されているわけではないが、洞窟という感じの通路で、壁も人工的に作られたものとは思えない……これがダンジョンなんだな。
そんなことを考えながら歩いていると、いきなり足音が聞こえた。しかも、かなり近い……
「止まれ」
健司が小さな声で言ったので、俺たちは足を止め、近付いてくる足音を聞く……結構早く接近しているように感じる。
ライトの光が、その姿を捉えた。4本足で走ってくる獣。
「オオカミ?」
「単純にフルフとかオオカミって呼ばれているモンスターだな。俺が行くから、盾だけ構えておくようにな」
そう言って、健司が前へ出て、腰を落とし、左腕を前に構える。腕には、アームプロテクターが装着されている。
オオカミが健司へ飛び掛かり、健司はアームプロテクターをつけた左腕を口に向けて突き出し、それを噛ませた状態で、首元へ拳を振り抜いた。
ゴキッ……乾いた音が響く。
オオカミの身体が健司の腕から離れ、そのまま地面へ落ちた。俺と隼人は、しばらく無言で倒れたオオカミを見る。
「こんな感じで、普通のオオカミみたいに、首の骨が折れれば基本的に死ぬぞ。一応、目的の分かれ道か部屋まで運ぶか」
健司はそう言って、オオカミの尻尾を掴んだ。
そのまま、ずるずると引きずっていく。
「オオカミっていうけど、こんなに大きいのか?」
俺は倒れているオオカミを改めて見る……四つん這いだから、ゴブリンよりは身長が低いが、全長で見れば余裕でゴブリンより大きい。
ゴールデンレトリバーよりも明らかに大きいオオカミだ。体重も40kg近いんじゃないか?
「この個体は、少しデカいけど、俺が戦ってきたのは、だいたいこのくらいのサイズだな」
「これが普通なのか……」
「確かに、普通の人だとかなりの脅威だけど、スキルレベルが上がっていれば、そうでもないぞ。実際に、俺の一撃で死んだだろ?」
「それは……健司君が、普通だった場合だよね?」
「はぁ? 俺が普通じゃないっていうのか」
健司がこちらを見る。
「お前が普通だって言うなら、普通って言葉に謝った方がいいと思う」
「確かに、普通とはいいがたいけど、そこまで言われるほどじゃないと思うんだけどな……」
詳しいことは分からないけど、おそらく健司は探索者の中でも強い方の人間だと思う。しかもメリケンサックをつけているとはいえ、素手で危なげなくオオカミを倒した。
少なくとも、俺には普通とは思えない。
「まあいい、進むぞ」
健司は気にした様子もなく、オオカミを引きずって先へ進む。
それからしばらく進むが、途中でモンスターと遭遇することもなく、入り口から100mほど進んだところで、前方に空間が見えた。
「小部屋に四方に出入り口か……翼、ここなら問題ないよな?」
健司が周囲を確認する。
「そうだな。部屋も大きくないから、部屋全体をセーフティエリアにできるはずだ」
「了解。じゃあ、いったん入り口側の通路まで引いて、そこでテントを立ててから部屋にもう一度入るか」
「分かった」
俺は荷物を降ろす。今回持ってきた激安テントは、最低限の機能しかない安物だけど、今回必要なのはテントとしての性能じゃない。キャンプ設営のスキルを使うための条件を満たせれば、それでいい。
素早くテントを組み立てる。あとは設置するだけになったところで、テントを持って部屋へ入る。
「ここでいいな」
部屋の中心にテントを置く。
「荷物は、念のため入り口側に置いてから、3方向の通路の先を確認しよう。で、敵が出たら、当初の予定通り、セーフティエリアの範囲内まで戻ってきて、防げるか確認しよう」
「了解。でも翼、複数出た場合は、可能な限り1匹にしてからにするぞ。もしセーフティエリアの効果がなくて、部屋で戦うとなったら、不利になるかもしれないからな」
「そこら辺の判断は、健司に任せる。隼人もいいか?」
「うん。問題ないよ」
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