136 最終準備完了
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俺たちは、いったん購入予定だったウェットティッシュと消毒用のアルコールを戻して、隣の100均へ移動し、ちょうどよさそうなサイズのハードケースを購入する。
「ハードケースで持っていくなら、おにぎりじゃなくて、白米でもいいんじゃないか? 総菜を買っていくなら、普通の食事として食べれるだろ?」
「まあ、それもそうだな」
隼人は俺たちほど食事量が多くないので、おにぎりを選んだ。一方、健司は俺と同じように、パックに入れられて売られていた、大盛の白米を購入する。
「そうだ、コッヘルとコンロもあるから、お湯を沸かすこともできるぞ。インスタントの味噌汁も持ってきているから、昼飯は意外にまともなのが食べれるな」
「翼……お前、泊まるつもりか?」
「そんなつもりはないけど、荷物の隙間にちょうど入ったから持ってきたんだよ。そこまで重くもないしな」
「…………」
隼人もそんな目でこっちを見るな。
「訓練の時にも話したけど、泊まりがけはゴールデンウィーク以降だぞ」
「分かってるわ。備えあればっていうだろ。それに、車で行くんだから、多少余計に荷物あっても問題ないだろ」
「そういうことにしておくか」
健司が苦笑する。買い物を終え車へ戻り、購入したものを荷物に加え、荷物の最終チェックを行って、今度こそ目的地へ向かう。
くだらない話をしながら車を走らせていると、少しずつ周囲の建物が減っていった。目的地に近づくにつれて、人の姿も少なくなっていく……やがて、ダンジョンの近くまで到着した。
人が少ないせいで、周辺はほとんど整備されていない。ただ、ダンジョンから50mほど離れた場所には、柵が作られていた。
「知ってはいたけど、こんな感じで柵が作られてるんだな」
車を降りて、俺はダンジョンの方を見る。周囲にはエキスパンドメタル製の柵が設置されている。
高さは2mほど……上の方には返しのようなものがあり、簡単には登れないように鋭利な棘まで付いている。
「小型のダンジョンだから、これでもいいんだろうな。それに、エキスパンドメタルなら、数人がいれば管理も簡単だもんな。人数にもよるけど、自衛隊を1ヶ月滞在させるくらいの金額で、施工が可能なんじゃないかな?」
「自衛隊を置いて管理するとなると、意外にお金がかかるらしいよな。調べてみてびっくりした記憶があるわ」
「2人とも、先に登録を済ませておこうよ。何か変な目で見られてるよ」
隼人に言われて、俺たちはそちらを見る。柵の近くに建てられている管理施設……その前に、ダンジョン庁の職員らしき人が立っていて、こちらを見ている。
確かに、珍しいものを見るような目をしている。
「すいません。今日、ここでダンジョンに潜りたいので、登録をお願いします」
「何かと思ったら、探索者でしたか。ここにはほとんど人が来ないので、何かと思いました」
「自分たちのスキルを検証したくて、人の少ないところを探していて見つけたんです」
「なるほど。それなら、許可証を確認させてください」
俺たちは、それぞれ許可証を提示する。職員が確認を終えると、簡単な手続きを済ませてくれた。
「詳細な地図は作成されていませんが、全5階で構成されている小型のダンジョンです。内部も広くありませんが、大部屋もあり、モンスターが集まっていたりもするので、気を付けてください」
「分かりました。ありがとうございます」
必要な説明を聞き、俺たちはその場を離れる。
「お前のスキルの検証には、ちょうどよさそうだな」
健司が小さな声で言ってきたので、俺は頷く。
俺のスキルが、実際のダンジョンでどこまで役に立つのか。それを確認するためにも、できるだけ人の少ない場所を選んだ。ここなら、多少問題が起きても他人を巻き込む可能性は低い。
俺たちは再度荷物を確認し、待機場のようなプレハブへ移動する。そこでアタッシュケースを開き、武器を取り出す。
俺は片手斧と盾、隼人は警棒と盾、健司は自分の身体そのものが武器なので、特に持ち替えるものはないが、手袋の上からでもつけられそうな、大きなメリケンサックを取り出していた。
それぞれ装備を確認していると、健司が何かを思い出したように、自分のアタッシュケースに入っていたものを取り出した。
「そうだ、翼、隼人、これ渡しておくな」
健司が取り出したものを俺と隼人に手渡した。
「なんだこれ?」
革製の手袋だった……普通の革手袋よりも、明らかに厚みがあり、ずっしりと重かった。
「ちょっと重いけど、砂鉄入りのグローブだ。手を守るためのグローブだからつけておけよ。蒸れないように内側は通気性のいい素材だけど、武器を握りやすくなってる」
「健司君、そういう意味じゃなくて、どうしてこんなの準備できたの?」
隼人が不思議そうに聞く。
「ん? あぁ、そういうことか。俺の就職内定したジムに翼に言われた、冒険者を想定した内容のトレーニングを提案したら、予想以上に乗り気でな。そこの社長が、今日のことを聞いて、知り合いから昔もらったグローブをくれたんだよ」
「物騒なグローブをもらう社長って、危なくねえよな?」
少しジト目になりながら、渡されたグローブを身に着け、健司と隼人の鞄の下に、格安テントをつけて、準備が完了した。
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