134 ダンジョン前日
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「盾は、そのまま相手に叩きつけても十分に効果がある」
健司が説明する。
「リーチが短いから、使う機会はないと思うが、覚えておくと役に立つぞ。それに、自分より体が小さい相手なら、体重の乗ったタックルでも、それなりに効果がある。そこで盾を使えば、ひるませることもできるぞ」
「シールドバッシュみたいなものか」
「厳密に言えば違うけど、似たようなもんだな」
盾を構えたまま、少し身体を動かしてみる……確かに、ただ防ぐだけではなく、使い方次第では、攻撃にも使えるな。
そして、隼人の頑強スキルについても、面白いことが分かってきた。どうやら、盾を持っている場合でも、その防御力のような効果が適用されている可能性が高い。
健司がかなり強く盾を殴っても、隼人はほとんど痛がらない。俺が同じように殴られると、少なくない衝撃があった。
「これは、かなり使えるな」
「うん。自分でも驚いてるよ」
そんな訓練を続けているうちに、週末が近づいてきた。
そして、ダンジョンへ行く前日……俺たちは訓練を終えたあと、ファミレスで明日のことを話し合っていた。
「準備は順調だな。俺の方は、一応、食べ物と飲み物、救急キットなんかの準備をしたぞ。鞄にも詰め込んであるから、家に帰れば今からでも行けるぞ」
「健司君、さすがに気が早いよ」
隼人が苦笑する。
「記録に関しては、一応僕も準備が終わってるよ。お互いのスマホで録画する以外にも、カメラのレンタルもしたから、大丈夫だと思う。鞄には余裕があるから、持っていくものがあれば入れられるよ」
「俺の方は、タープでペグが使えない想定もして準備したから、少し荷物が重くなったけど大丈夫だと思う」
俺も自分の準備について説明する。
「念のために、使い捨てられる安売りされていたテントも3つ買ってある。できれば明日は、鞄の下にでも付けて、クッション代わりにでも持っていってほしいな」
「テントは問題ないけど、鞄が重いってどういうことだ?」
「錘を使うからな。持っていっても問題なさそうで、最悪その場で破棄できるペットボトルに飲み物を詰めて持っていく」
「翼君、それって何本持ってくの?」
「2リットルを4本だな」
「さすがに多すぎでしょ」
隼人が驚く。
「そのくらい重くないと、自立させるのに手間がかかったりするから、この数にしたんだよ」
「翼、俺が2本持つから、明日2本はむき出しでいいぞ。車はお前が出してくれるんだから、そんなこと言わなくてもいいと思うけどな」
健司が呆れたように笑う。
「俺の鞄に入れてた飲み物を減らせば、お前のが持てるからな」
「僕も1本持つよ。翼君が2本、健司君が1本と僕たちの水分や食料。僕が空いたスペースに1本入れればいいと思う。健司君が一番重いけど、大丈夫かな?」
「気にすんな。15kgくらいなら、問題ないから大丈夫だぞ」
「さすが、筋肉は違うな」
「筋肉もあるけど、重心を考えて、身体に密着するように鞄を背負えば、15kgくらいは何とでもなるもんだぞ。それに、軍人じゃないから、走って移動するなんてこともないしな」
一通り荷物について確認したところで、隼人が思い出したように口を開いた。
「そういえば、健司君と翼君が、一生懸命スキルの検証を勧めていたのって、こういうことだったんだね。まさか、レベルが上がるなんて思ってもいなかったよ」
隼人の頑強スキルは、訓練と検証を繰り返すうちに、想定通りにレベルが上がっていた。主に健司の考えだったが、俺もスキルについては気になっていた。
このスキルは盾にも適用されている可能性が高かった。体感できるくらいだから、おそらく適用されている。
レベルが上がった後なんて、健司が思いっきり盾を殴っても、隼人はほとんど動くことなく耐えていた。
これなら、ゴブリンが持っている木の棒で思いっきり叩かれても、問題なく耐えられるだろうと健司は判断している。
「そうだ、見た目はよくなくなるけど、建設会社の知り合いが、新品の安全ヘルメットと、ヘルメットに付けるライトも貸してくれたよ。新型のヘルメットみたいだから、使い心地を評価してくれって言われたけどな」
「それって、何色だ?」
「何色かあったけど、暗い場所で使うなら白だと思って、3つ借りたぞ」
「よく分かってるな。白は暗くても見やすいからな。ライトを付けた時の反射が気になるけど、鏡じゃないから、そこまで気にするほどでもないだろうな」
「ヘルメットは大事だよね。一番怪我して困るのは頭だからね……何度も入るつもりはなかったから、頭用の装備は考えてなかったね。しばらく続けるなら、揃えて買った方がいいよね」
「払い下げられたミリタリーヘルメットとか、今度見に行くか。ダンジョンができてから、この手のショップも増えたからな。後、強力な携帯ライトもあると便利かもな。浅い階に出てくる魔物には、それなりに有効って話だからな」
「そうなんだ。それなら、うちのお母さんが懸賞で当てたライトも持ってきてみるね。なんでこんなのに応募したんだろうって、思ったんだけど、どこで役に立つか分からないもんだね」
必要なものについて一通り確認するけど、忘れているものはない。
後は、明日ダンジョンへ向かうだけだ。
「じゃあ、明日、翼の最寄り駅に集合な」
健司がそう言って、俺を見る。
「ダンジョンに関しては、あそこは条件がよさそうだから、人目を気にせずにできそうだな」
俺たちは明日の集合時間を確認し、それぞれ家路についた。
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