132 初日の訓練終了
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「それなら、今度はスキルの確認をしてみるか。隼人、一応、お前のスキルについて少し確認したい。左腕の方が影響が少ないよな? そこを木の棒で叩いて、どんなもんか確認してもいいか? もちろん、翼も一緒にやるぞ」
健司がそういうと、隼人は少し戸惑っている。確かに、自分から叩かれたい人間なんて、そうそういない。
「そうだな。今のうちに、どのくらいなら問題ないのか目安が分かっていれば、フォローもしやすいよな」
俺がそう言って、隼人のやる気を引き出す。
「……そうだね。やってみよう」
「よし。強さを決めるのは、済まないが翼を実験台にするぞ?」
「なんで俺なんだよ」
「最初に叩かれてもらった方が、強さの基準を作りやすいだろ」
「まあ、いいけどさ」
健司は俺が先ほど使っていた木の棒を持つ。
「初めは、軽くな」
健司が軽く振った木の棒が、俺の左腕に当たり、ピシッ、と乾いた音が鳴った。
「思ったより、痛くねえな」
少し腕を動かしてみる。
「隼人も試してみ」
隼人が左腕を差し出すと、健司が同じくらいの強さで木の棒を当てる。
「本当に痛くないね」
隼人も腕を確認している。
「でも、翼君は違うスキルなのに、何で痛くないんだろうね? もともと、そんなに痛くないのかな?」
「俺も分からない」
その後、何度か強さを変えながら試していく。
健司が少しずつ力を強くしていく。さらに強くなる。
「……ちょっと痛い」
「この辺からか」
健司が何度か確認したあと、さらにギアを上げた。
「さすがに、その勢いは痛いんだが!」
木の棒がしなるくらいの勢いで打ち込まれたので、思わず文句を言う。
「悪い悪い。でも、基準が分からないからな」
俺が腕をさすっていると、今度は隼人が同じ強さで叩かれる。
「……確かに痛いけど」
隼人が自分の腕を見る。
「小指をぶつけた時よりは痛くないかな?」
「やっぱり、頑強は防御力のようなものを上げるみたいだな」
健司が真剣な顔で考える。
「もう少し確認したいから、明日からも試していいか? 今度は翼とじゃなくて、俺と比べて、客観的に翼に見てもらおう」
「そうだね。痛みの度合いがなんとなく分かって、思ったより痛くないから、実験してみよう。僕も、どれくらい耐えられるのか気になるしね」
「後は、盾を持った時にも効果があるのか気になるところだな。防御力上昇の部分が、盾にも有効かってところが気になる」
「さすがに、それはないんじゃない?」
「分からないぞ。だって、武器のスキルを持っている奴らは、その武器のダメージ……攻撃力だけ明らかに高いって話だからな」
隼人は少し悩む。確かに、スキルが身体だけに作用するとは限らない。
「それを知るための検証だよね!」
「ああ。だから、試せることは試してみよう」
それから俺たちは、武器の扱い方をさらに確認していった。
斧を振る時の姿勢、足の位置、攻撃した後に盾を戻すまでの動き、相手との距離、実際に丸太を相手に斧を振る練習もした。
俺はキャンプで斧を使ったことがあるとはいえ、薪を割るのと戦うために振るうのでは、まったく違う。
3人で確認しながら、気付けば3時間ほど経っていた。
「そろそろ昼飯にするか」
「賛成」
「僕もお腹空いたよ」
施設を出た俺たちは、そのまま近くのファーストフード店へ向かった。食事をしながら、今日やった訓練について話す。
「思っていたより、難しいな」
「でも、初日にしては十分だろ」
「うん。毎日続ければ、少しずつ慣れていくと思う」
俺も頷く。今週末には、実際にダンジョンへ入る予定だ。深くまで潜るつもりはないとはいえ、備えておくべきだ。そういう意味では、時間はそれほど残されていない。
あとは、実際にダンジョンへ入った時に、どこまで通用するのか……それは、実際にダンジョンへ入って確かめるしかない……不幸な結果にならないように、しっかりと備えないとな。
食事を終えたところで、俺たちはそのまま解散することにした。
「じゃあ、また明日な」
「ああ。また明日」
「またね」
2人と別れて、俺は家へ帰る。
明日も訓練……その先には初めての本格的なダンジョン探索が待っている。そう考えると、少しだけ緊張する自分がいる。それでも、今はやるべきことを一つずつやるしかない。
俺はダンジョンのことを考えながら、家への帰り道を進んでいく。 家に帰ると、いつものようにミミが出迎えてくれる……と思ったけど、今日は姿がない。そういえば……楓が今日は現場でイベントスタッフをしているとか言っていたな。
イベント会場で、自由気ままに愛想でも振りまいているのかな?
ミミとの契約というか、楓のスキルによるパートナー関係を考えれば、ミミが嫌がることはできないはずだ。嫌なことがあれば、楓に助けを求めることもできるし、最悪、自分で逃げることだってできる。
だから、そこまで心配する必要はないだろう。
……とはいえ、いつも家にいるミミがいないと、少し寂しいな。俺はそんなことを考えながら、自分の部屋へ向かう。
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