131 訓練開始
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俺たちが移動した場所は、少し住宅街から離れている、ダンジョン探索局が管理している訓練施設だった。
周囲に民家がほとんどないため、ある程度の音が出ても問題になりにくい。探索者向けの施設ということもあって、武器を使った訓練ができるように、いろいろな設備が用意されている。
ただ、利用者はあまり多くないらしい。
「こんなにしっかりとした施設なのに、なんで他の奴は来ないんだろうな?」
健司が首を傾げる。
確かに、ここに準備されているものは、無料で使える施設として考えれば、訓練する分には十分だと思う。そもそも、住宅街に凶器を持って訓練できるような場所なんてないからな。
特に、丸太とか、実際に叩きつけるものが用意されているのは、本当にいいところだと思う。
薪割りに関しては、大体の人がイメージできると思うが、実際にやったことがある人は少ないと思う。知っているのと、実際にやってみるのとでは、かなり違うからな。
「そこは、実際に潜っている人たちは若い人が多いし、お金稼ぎとして潜ってるから、こういうところまでは来ないんじゃないかな?」
隼人が思っていることを口にする。確かに、ある程度身体を動かせれば、ゴブリンとかなら問題なく倒せるけど、あいつらじゃ金にならないんじゃなかったか?
オオカミとかウサギ系は、毛皮がそれなりにいい値段になるらしいから、狩っている人も多いらしいけどな。それでも、商品にするなら傷をつけないように倒す必要がある。
わざわざこういう場所で、殴り合うような訓練をするより、実際にダンジョンへ潜って経験を積んだ方がいいと考える人が多いのかもしれない。
「でも、人が少ないってことは、待ち時間なしで使えるってことだから、今回はよかったとみるべきだな」
健司が荷物を置き、ストレッチを始める。俺と隼人も、それを真似して身体を動かす。いきなり武器を振り回して怪我をするわけにもいかない。準備運動くらいは、ちゃんとしておいた方がいいだろう。
「2人とも、右利きだったよな? それなら武器は右手、盾は左手になるから、盾を持つ左手を前に構える姿勢が基本になるな……盾はまだないけど、持っているつもりで構えてみるか」
ストレッチが終わると、健司がそう言った。俺と隼人は、アタッシュケースから斧と警棒を取り出して構えてみる。
「買う予定の盾は、ポリカーボネート製で透明だから、基本的には敵の武器や攻撃する手がある側を意識して構える。両手で攻撃してくる場合は、脅威度が高いと思う方に少し寄せる感じでいいと思う」
説明を聞きながら、姿勢を確認していく。左手を前に出す姿勢なので、足も基本的には左足が前になる。相手が武器を持っている場合は、足にも気を配っておかないと、思わぬところから攻撃を受けてしまうらしい。
「っと、翼。お前は木の棒に持ち替えて、隼人と向かい合ってみてくれ」
言われた通り、斧を置いて木の棒を持つ。隼人も警棒を構えた。ナイフを抜かれた時より、正直ピリッとしている自分がいる。殴られないと分かっていても、なぜかあの馬鹿どもより、隼人の方が怖く感じる。
……なんでだろうな?
「2人とも、緊張しすぎだ。気持ちは分かるけど、少し力を抜け」
健司が俺たちを見る。
「なんとなく、相手がいると、どこを守りたいっていうのが分かるだろ? 基本的には、それに従っていい。無理に強制しようとするとラグができるから、今はそれでいいぞ」
初心者に、無理なことはさせないってことだな。
「じゃあ、隼人から、ゆっくりでいいから警棒を翼に向かって振ってくれ。翼はそれを防ぐように、左腕で盾を持っていると思って受けてくれ。隼人、痛くならないようにな」
そう言うと、隼人がスローモーションのような動きをする。警棒が俺へ向かってゆっくりと近づいてくる。俺は、そのコースに左腕を置いた。警棒が触れたところで、隼人が動きを止める。
「次は、翼が隼人をゆっくり叩け。それを何度も続けてみてくれ。殴る方向は、できるだけ変えるように意識してな」
そうして、俺と隼人はゆっくりと叩き合う。もちろん、実際には当たる直前で止めている。それでも、相手がどこを狙ってくるのかを考えながら動くと、思っていた以上に頭を使う。
「はい、終了」
おそらく、5分ほどだったと思う……想像していた以上に疲れた。隼人も、たったこれだけなのに汗をかいている。
「運動不足ってことはないと思うけど、思ったより疲れたわ」
「慣れない動きっていうのもあるから、疲れを感じるのかもな。そうだ、喉の渇きを覚える前に水分は取っておけよ」
「熱中症や脱水症状の時のセリフみたいだな」
「まあ、基本的にダンジョンの中は20度くらいに保たれているから、熱中症はないと思うけど、脱水症は結構問題になってるんだぞ」
健司がそう言いながら、水分を取る。
「汗をかくにしても、その分取ればいいんじゃないの?」
「それがな。ダンジョンの中に持ち込むことを考えると、できるだけ荷物を軽くしておきたいって思う奴が多くてな。後は、トイレの回数を減らしたいみたいな話もある」
「トイレな……」
「理由は分からないけど、ダンジョンで排泄物を出しても、そのうち吸収されるから、部屋の隅とか行き止まりですればいいのにな」
「確か、高齢者の方にも、トイレに行くのが大変で、水分を摂るのを控える人がいるって話だよね?」
「ああ、それは俺も聞いたことあるな。喉の渇きに鈍くなるって話もあるっけ?」
水分を摂っていると、隼人がそんな話をしてきたので、俺も思い出したことを口にする。
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