130 積極的に戦うつもりはないが、必要だからな
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「おはよう、2人とも」
隼人がやってきた。
「昨日も言ったけど、物騒な話だから、公共の場では控えた方がいいよ」
「おっす、隼人。しっかり周りを見ているから大丈夫だぞ」
健司が周囲を見回し、俺も大きく頷いておく。
「昨日は聞くのを忘れてたけど、隼人って、何か普段から道具とか使ってたりするか?」
「道具?」
「こいつみたいに、キャンプで鉈や斧を使ってるみたいに、趣味とかで武器になりそうな道具を使ってたりはしないか?」
健司は上手いこと話を聞く。この聞き方なら、スキルの有無に関係なく話を聞ける。
「武器に使える道具か……強引にこじつけるなら、アイスピックとかモップとかかな? カフェのバイトだったから、そのくらいしか思いつかないよ」
「そういえば、隼人はカフェだったな」
「うん」
「棒術はさすがに無理だから、警棒とか、叩くだけでも十分な効果があるものにするか。後は、ポリカーボネート製の盾あたりがいいか? あれなら10000円くらいで売ってたはずだぞ」
「盾か……」
隼人が少し考える。
「積極的に戦うわけじゃないから、そっちの方がいいかもね」
「あ~、俺もミリタリーアックスとポリカーボネートの盾にするか」
「翼は、両手に斧を持って腕を守るのに、小手を使えば、それでも守りは十分だと思うぞ」
「よさそうな小手があればいいけど、そう簡単に見つからないだろ? なら、確実に守れる盾の方がいいな」
「そうか。じゃあ、2人とも基本的なスタイルは、片手に武器で片手に盾の同じような感じだな」
話し合いながら、俺たちは歩き始める。
今日の集合場所に選んだのは、武器となるものが比較的多く売っているショッピングモールだ。しかも、ホームセンターまで一体化している。ダンジョンができてから、こういう施設には探索者向けの商品を扱う店も増えている。
以前なら、普通のショッピングモールで警棒や防護用品を見ることなんて、そうそうなかっただろうが、今は違う。
探索者という存在ができたことで、こうした商品にも需要が生まれている。
「まずは警棒だな」
健司に案内されて、店へ入る。いくつかの商品を見比べたあと、隼人に合いそうな、少し重めの警棒を選んだ。
「これでいいか?」
「うん。持った感じも悪くないよ」
頑強スキルが上がれば、恐らく他のスキルも手に入って、身体能力も上がるはず。そうなれば、多少重い武器でも扱えるようになるはずだ。
俺の斧はホームセンターで薪割斧を買うつもりだったが、店内を見ていると、ミリタリーアックスが売っていた。
持ってみると……
「……これ、ちょうどいいな」
重すぎず、軽すぎない。片手でも扱えそうだ。
「じゃあ、それでいいんじゃないか?」
「そうするか」
斧を購入する。盾については、店内にそれらしい商品はいくつかあったものの、ポリカーボネート製の盾は見つからなかった。
「盾は、ネットで注文だな」
「そうだね」
注文については、後でやればいい。武器を買った店には、持ち運び用のアタッシュケースも売っていたので、それも一緒に購入している。
さすがに斧や警棒を、そのまま手に持って街中を歩くわけにはいかないからな。そんなことをしたら、普通に捕まる。
「よし、得物は買ったし、今日の目的地へ向かうか」
武器を買ったし、盾は後で注文する。だが、今日の本命は武器や盾じゃない。実際に動けるようになるための訓練だ。
どれだけ良い武器を持っていても、それをまともに扱えなければ意味がない。特に俺と隼人は、まともな戦闘訓練なんてしたことがない。
「今日は、まず体の動かし方からだな」
「よろしく頼む」
隼人が同意して、健司が頷く。
「じゃあ、行くぞ。ここからは俺の仕事だ」
そう言って歩き出す健司の後を、俺と隼人が追いかける。今まで、俺はキャンプ道具を扱うことには慣れていた。斧だって薪を割るために使ったことはある……多くの場合は、鉈を使っていたが斧を使ったことがないわけじゃない。
でも、それとモンスターを相手にするのは、まったく別の話だ。
斧を振るい、攻撃する。そして、時には攻撃される。そういった動きを想定した動きを身につけなければならない。
今週末には、実際にダンジョンへ入る。そこで待っているのは、これまでキャンプで相手にしてきた薪や木材じゃなく……ゴブリンだ。
俺がこれから覚えるのは、キャンプのための斧の使い方ではなく、自分の命を守るための、斧の使い方だ。
そう考えると、少しだけ緊張してきた。
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