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128 次なる目標

アクセスありがとうございます。

「そういえば、昨日、送っていった時に事件のこと話したけど、親御さんたち、みんな苦い顔してたな」


 健司も頷く。


「やっぱり、詳しい話はしてなかったみたいだな」


「怪我の心配はされたけど、刺された場所を見せて、なんともなかったって伝えたら安心してたな」


「普通、2週間くらいで刺された傷が完治するなんて思わないだろうな」


 健司の腕を見るが、あの時の傷は、そこそこ深かったはずなのに、縫ってすらいない。普通なら、まだ傷跡が残っていて、動かせば傷が開いてもおかしくない時期なはず。


「まあ、詳しく話したけど、そこまで大変だったわけじゃないと思ってくれたのかもな」


「俺の場合は、相手の3人が馬鹿だったから、問題になったって感じにしてたからな」


 俺は少し考えながら続ける。


「女性陣は、目の前で暴力行為があったことそのものに衝撃を受けたのかもしれないし、その辺は濁しておいた」


「翼の傷も、ほとんど治ってたしな」


 俺は自分の腕を見る。少し長めの切り傷も、今ではほぼ完治している。


「多少は安心する材料になったかもな」


 そんな話をしながら、校内ネットを使って情報を調べていく。時間を潰していると、健司が突然こちらを見る。


「翼、前に言ってた、スキルの検証はまだ続けてるのか?」


「そうだな。人間や魔物……モンスター相手には、まだできてないかな。よく分からんけど、うちのミミが言うには、耐久力の概念はないっぽいんだよな」


「お前んちの猫が?」


 健司が眉を上げる。


「確かに賢そうだったけど、話す言葉まで分かるのか?」


「ああ……あまり大っぴらにしてほしくないんだけど、妹のスキルがな」


 俺は周囲を確認してから声を少し落とした。


「調教とかテイマー系のスキルなんだけど、信頼関係ができると、何を話してるか分かるようになるっぽいんだよ。まぁ、今のところペットのミミ以外の言葉は、分からないらしいけどな」


 健司と隼人が驚いた顔をする。もちろん、ミミがスキルについて何を知っているのかなんて証明のしようがない。2人も半分は冗談として聞いているようだった。


 動物もスキルを持っているということは、ほとんど知られていない。テイマーが動物を戦わせている以上、何らかのスキルがあるだろうとは予想されている。ただ、動物がユニークスキルまで持っているとは、今のところ考えられていない。


「どこかで、お前のスキルの実験をする必要がありそうだな」


 健司が真面目な顔になる。


「入手した経緯を考えれば、モンスターの対策のためのスキルだろ。だったら、あいつら相手に使ってみないといけないと思うぞ」


「それはそうなんだけどな……実戦で使ってみないことには分からないことも多いけど……さすがに1人で行くのは怖いからな」


「はぁ?」


 健司が呆れた顔をする。


「お前、何言ってんだよ。俺がいるんだから、一緒に行くに決まってるだろ。それに、戦闘訓練だって俺がしてやるんだから、上層のモンスターくらい、朝飯前にしてやるよ」


「一緒に行ってくれるのか?」


「当たり前だろ」


 健司は当然のように言った。


「それに、お前のスキルの検証だけじゃない。俺の卒論のデータにもなってもらうぞ」


 そういうことか……それなら納得できる。


「ね、ねぇ、健司君」


 隼人が遠慮がちに手を挙げた。


「それに自分も行っていい?」


 健司が一瞬、俺を見て、隼人へ視線を戻した。


「俺は構わないけど、下手したら怪我で済まないかもしれないぞ。それでもいいのか?」


「大丈夫だと思う……まだ話してなかったけど、僕が入手したスキルって、頑強ってスキルなんだよな」


「頑強?」


「うん。文字通りの意味か分からないけど、このスキルを入手してから、痛みに鈍くなったというか……ゲーム的に言えば、防御力が上がった感じなんだと思う」


 俺と健司は顔を見合わせた。


「本当に危険だけどいいのか? 資格を取る必要もあるけど……あのテストなら、隼人には問題ないか」


「資格はもう持ってるから大丈夫だよ」


 隼人は少し俯いた。


「あの時、何もできなかった自分が情けなくてさ……」


「それはないだろ」


 俺はすぐに否定した。


「お前はお前で、自分の役割である録画をしてくれたんだし、俺たちはそれで助かってるんだからな。荒事が苦手な隼人に、前に出させるわけないだろ」


 健司も頷く。


「その通りだ。戦うのは俺がやる。隼人は自分ができることをやればいい」


「それを言うなら、翼君も荒事が得意な側じゃないよね?」


 言われてしまえば、その通りだ。ただ、スキルについて詳しく話せない以上、俺がどこまで戦えるのかは説明できない。


「それにさ……翼君が一緒にいるなら、キャンプ設営を使うんでしょ?」


「まあ、そうなるな」


「最悪、それをあてにしたいと思ってね」


 隼人は真剣な顔で続けた。


「それに強い健司君もいるから、安全にダンジョンへ行ける機会なんて、そうそうないでしょ?」


「確かにな……」


「だから、どうかなって……」


 健司が少し考える。


「そこまで考えているなら構わない。ただし、ダンジョンへ行く前に多少訓練してからだな」


 健司が俺を見る。


「翼、お前もだぞ?」


 ダンジョンへ行くことを考えるなら、訓練は必要だよな。キャンプ設営がどれだけ便利でも、俺自身が何もできなければ、いざという時に困る。それに、スキルの検証をするなら、実際にダンジョンへ入ってみる必要がある。


「じゃあ、今週は訓練と準備だな」


 その後はカフェで今週の予定を立てた。必要な装備を確認し、資格についても改めて確認する。


 健司は俺と隼人の訓練の準備を、俺はキャンプ設営の検証を進めながら、ダンジョンへ持っていく道具を準備を、隼人は、俺の代わりに記録や撮影に協力してくれるようで、必要なものを確認してくれるようだ。


 そうして話を詰めていった結果、俺たちは今週末に一度、ダンジョンへ行ってみることになった。


 俺にとっては、初めての本格的な実戦になる。ゴブリンと呼ばれている緑色の醜悪なモンスターを倒したことはあるが、数が少なかったり、安全地帯から殴ったようなものだし、実践とは言えないだろうな。


 キャンプ設営が、モンスター相手にどこまで通用するのか。それを確かめる時が、ようやく来たらしい。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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