127 日常に戻ってこれたのか?
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朝、目を覚ますと、ミミの姿がなかった。
冬の間、俺の部屋に来たときは、俺が起きる頃にベッドの上とかお腹の上とか、少し暖かいところを陣取っていたけど、ところが、今日はどこを見てもミミがいない。
それなのに、部屋の扉は閉まっていた。
「ミミ?」
声を掛けながら、ベッドの下や机の陰を確認する。どこかに隠れているのかと思ったが、それらしい姿は見つからない。
まさか、扉の外に出たのか?
昨日の夜、ミミと一緒に寝たのは覚えている。俺が寝た後に出ていったのなら、扉が開いているはずだ。
そう思いながら部屋を出て、階段を下りると、1階から小さな音が聞こえてきた。
「ニャムニャム……」
続いて、カリカリという音……ああ、飯食ってるのか。リビングへ向かうと、ミミが餌の皿に顔を突っ込んでいた。
どうやら自分で部屋の扉を開けて出てきたらしい。
俺の部屋は、入るときは扉を押して入るだけなので、ミミでも簡単に開けられる。ただ、外へ出るときは逆だ。取っ手に前足を掛けて引っ張る必要があるので、以前ならミミには難しかったはずだ。
開けることはできたけど、ミミが部屋にいる時は扉を閉めてたから、開けようとすれば俺が気付いていたんだよな……でも、昨日は開け忘れてたから、ミミが自分で開けて閉めたってことだよな……
「お前、自分で開けて閉めて出ていったのか?」
ミミは俺の方を一瞬だけ見たが、すぐに食事へ戻った。まあ、本人が何も言わないなら分からない。
「翼、おはよう」
「おはよう、母さん」
母親が台所から顔を出した。
「ミミちゃんが、カリカリ多めにほしいって言ってきたから、いつもより多く入れたから、ちょっと様子気にしておいてね」
……ん? 俺はミミを見る。
「ほしいって言った? 母さんも楓みたいに、ミミが何言ってるか分かるようになったのか?」
「何言ってるの?」
母親が呆れたような顔をする。
「カリカリを入れてるときに、もっともっとって餌の袋を叩いていたから分かったに決まってるじゃない」
ああ……そういうことか。てっきり、ミミが何かしらの方法で母親に意思を伝えたのかと思った。まあ、実際にはその通りなのだが、言葉ではなく態度で示したというだけだ。
「それにしても、よく食べるな」
俺がミミの背中を軽く撫でると、食べる勢いが少しだけ落ちた。だが、すぐにまた勢いよく食べ始める。
「邪魔だったか?」
ミミは答えず、ひたすらカリカリを食べている……そういえば、今日は猫缶を食べてないんだな。それでも、カリカリだけでいつもの量より多く食べてるな。
しばらくすると家族も揃い、朝食が始まり、その頃にはミミの食事も終わっていた。
ミミはテレビの前の特等席に座り、旅動画を眺めている。いつも思うが、ミミが旅行動画を見て何を思っているのかは分からない。でも、楽しそうな雰囲気だけは伝わってくるから、満足しているんだろうな。
そのまま他愛のない話をしながら朝食を終え、それぞれ仕事や学校へ向かう準備を始める。
「今日はミミ、1人で留守番になるな」
俺は出かける前に、餌の皿へカリカリを少し多めに入れておいた。ミミは元々、自分で必要な分だけ食べるタイプだった。だから、餌を多めに入れたからといって、全部食べてしまうようなことはない。
ただ、以前より食べるようになってから、量が増えているので、たまに餌が足りなくなって、俺たちが帰ってくるとご飯をおねだりされることもあった。
「じゃあ、行ってくるな」
一番最後の俺が、ミミに声を掛けて家を出る。
今日も大学へ行く……初日で卒論の監督をしてくれる教員まで決まったので、今週1週間は特に急いでやることがあるわけではない。
とはいえ、研究に関することだったり、講義に関することだったりは、情報を集めなければならない。そのため、今日は健司と隼人と大学で合流する予定だった。
女性陣は、昨日のうちに卒論の監督が決まったことで、今週はもう大学へ来る必要がないらしい。5人で集まって、のんびり過ごすそうだ。
大学へ着き、待ち合わせ場所へ到着すると、すでに健司と隼人が来ていた。
「おう、翼、やっと来たか」
「おはよう、翼君」
「おはよう。健司、まだ予定の10分前だぞ。お前が早く来すぎただけだろ。それで、女の子たちは来ないみたいだけど、今日はどうするか?」
「とりあえずカフェ行こうぜ」
健司がそう言って歩き始め、俺たちは後を追った。
「そういえば、昨日は聞けなかったけど、隼人は卒論のテーマはどうなってるんだ?」
歩きながら聞いてみる。
「僕?」
「そう、テーマ決まったんだろ?」
「ああ。僕は、今まで授業でやってきた分野を中心にすることにしたよ」
隼人の話を聞くと、俺たちのようにダンジョンやスキルを直接研究するという突拍子もないテーマではないらしい。
自分の得意分野をそのまま卒論にするつもりで、昨日その分野を専門にしている教員へ相談したところ、あっさり監督を引き受けてもらえたそうだ。
「僕も、こんなに早く決まるとは思わなかったよ」
「まあ、真面目にやってれば、それなりに受け入れてもらえるってことだな」
健司が笑う。そんな話をしながらカフェへ入り、席を確保する。近くにいた顔なじみの学生と軽く情報交換をしながら、適当に飲み物を注文した。
昨日の卒論の話をしたり、大学の情報を調べたりしていると、隼人がスマートフォンを見た。
「女の子たちからだ。何か、関係ありそうなことがあったら、情報を拾っておいてだってさ」
グループチャットに書き込まれた内容を確認する。
女性陣は大学へ来ない代わりに、卒論や講義に関係しそうな情報があれば教えてほしいということらしい。
「まあ、何かあったら共有するか」
それからしばらく話した後、ふと思い出したことがあった。
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