126 余計なお世話かもしれないが……
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後から知った話だが、これには大学側の事情もあったようだ。
4回生になってもダンジョンで活動することを優先して、大学にはほとんど来ない可能性の高い学生も多かった。そのため、卒論に真面目に取り組む学生を優先するような方針が、大学側で決められていたらしい。
探索者としてダンジョンに潜って、それで生活していきたいなら、無理に大学へ来なくてもいい。そんな、ある意味で割り切ったスタンスだったそうだ。
探索者が大学や世間でいろいろと問題を起こしていたこともあって、学生には知らされていないところで決められたルールだったらしい。
だから、俺たちのように卒論について真面目に動き始めた学生には、教員側から見ても受け入れやすい環境ができていた。
卒論の結果を聞いたところで、今日は全員で食事へ行くことにした。もともと、今日はいつものメンバーで集まる予定で、誰もバイトなどを入れていない。
グランピングのリベンジってことで、ちょっといいところに行く話が決まっていたのだ。
グランピングの費用は全額返ってきている。だから、そのお金を使って少し贅沢をすることになったが、さすがに3日分のグランピング費用を全部使い切るような店はなかった。
というより、そんな店を探す方が大変だ。
結局、みんなが好きな料理が多そうな、少し高級なビュッフェへ行くことになった。
「乾杯!」
全員でグラスを合わせる。俺と健司、それから隼人は、付き合いで飲むことはあっても、普段から酒を飲む方ではない。
逆に、女性陣は普通に飲む。今日も何人かはかなりの勢いで飲んでいた。まあ、俺たちを信用してくれているということなんだろう。そうでもなければ、グランピングも一緒に行かないし、事件の後にこうして一緒に食事へ来ようとは思わないだろうしな。
ただ……
「飲みすぎじゃないか?」
「大丈夫、大丈夫……」
「全然大丈夫に見えないんだけど」
結局、一人暮らしをしている子以外は、かなり酔っ払ってしまった。帰る時間になると、まともに歩けない子までいる。
「俺と健司で送るか」
「ああ」
方向を確認すると、俺と健司が2人ずつ、同じ方向の女子をタクシーで送ることになった。隼人は一人暮らしの子を送っていく。
タクシーに乗り込んでしばらくしたところで、健司とグループチャットでやりとりする。
『なあ』
『分かってる』
俺たちは、送っていく途中でそれぞれの親に事件について聞いているか確認することにした。娘たちから事件に巻き込まれたこと自体は聞いていても、詳しい話まではしていない可能性が高い。
実際、最初に送った子の家で確認すると、やっぱりそうだった。
「事件のことは聞いています。詳しいところまでは聞いていないんですけど……」
「警察から俺たちに連絡があって、事件に関わった3人が検察へ送致されることになりました」
「そうですか……」
俺は、できるだけ難しい言葉を使わないようにして説明した。俺たちだけが関わることになる可能性が高いが、娘さんたちが裁判に何度も呼ばれるような話ではなく、必要があれば、証言を求められる可能性がある……その程度だと説明する。
「そういうことだったんですね……詳しく教えていただいて、ありがとうございます」
母親は苦い顔をしていた。
「いえ。俺たちも当事者なので」
それだけ伝えて、酔っ払った本人を家まで送り届けた。他の子たちの親にも、俺と健司でほぼ同じ説明をした。
どの家でも、親は事件について知っていたけど、詳細までは聞かされていなかったらしい。事件のことを話すたびに、どうしても気持ちは重くなる。2人を送り届けて、ようやく家に帰った頃には、どっと疲れが押し寄せてきた。
「ただいま……」
玄関を開けると、そこにはミミがいた。俺が靴を脱ぐと、ミミが近づいてきて、そのまま足元に身体を擦りつけてきた。
「お前、待っててくれたのか?」
しゃがんで頭を撫でる……それだけで、さっきまで重かった気持ちが少し軽くなった。やっぱり猫は偉大だ。
リビングへ行くと、父親と母親がいた。
「遅かったな」
「みんなを送ってきたからな」
「そうか。今日は卒論の話をするって言ってたな。どうだった?」
「それがさ……」
俺は今日あったことを簡単に話した。卒論の監督を探していたら、逆に助教や准教授が大量に集まってきたこと。最終的に4人の教員と一緒に研究することになったこと。
俺と健司だけじゃなく、他のメンバーも全員、1日で監督を見つけたこと。
「1日で決まったのか?」
「そうなんだよ。俺もこんなに早く決まるとは思わなかった」
「それは良かったじゃないか」
父親が笑う。
「お前がやりたいことを見つけて、それを指導してくれる人まで見つかったなら、後はしっかりやるだけだな」
「まあ、そうだな」
俺は足元に来たミミを見る。
「今日は色々あって疲れたから、ちょっと癒やしてもらうわ」
ミミを抱き上げて、そのまま顔を近づける。本当なら、この柔らかいお腹に顔を突っ込んで猫吸いをしたい……ものすごくしたい……けど、ミミは絶対に拒否する。
以前試したときも、ものすごく嫌がられ、全力で拒否されたもんな。しかも、楓にセクハラって言われたしな……
ミミの頬に自分の頬をくっつける。
「これくらいで我慢するか」
ミミは少しだけ迷惑そうな顔をしたものの、逃げることはなかった。
頬をすりすりする……今日はいろいろあった……卒論のことも決まったが、まだまだ考えることは多い。それでも、こうして帰ってくる場所があって、ミミがいて、家族がいる。
そんなことを考えていたら、お風呂に入るように言われ、ミミを母親に預けた。
お風呂をあがって、自分の部屋でのんびりしていると、様子を見に来たミミがまだ寝ていないのか? と言わんばかりの顔をしていた。
「……明日から、ちゃんと考えるか」
そう言うと、ミミが小さく鳴いた。
「はいはい。今日はもう寝るよ」
俺はミミを抱えたまま、しばらくその柔らかな身体を撫でながら眠りについた。
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