124 落ち着いてきた日常に一波乱?
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「ダンジョンに関わるなら、俺も武器くらいは用意しておくべきかな?」
「何かあった時に身を守る武器は必要だぞ」
「やっぱりか」
「ナイフとかは、実際リーチが短いとか、軽いとか問題があるからな。俺がおすすめするのは、ホームセンターで買える薪割りの斧とかだな」
「斧?」
「使い方が分かりやすいし、キャンプでも使える。もししっくり来たなら、ミリタリーアックスを買うのもいいと思うしな」
「斧か……」
あまり武器としてピンとこない。そういえば、RPGには大体あるな……剣、槍、斧、槌、爪……そういう系統が武器の中心になっている作品は多い。
「キャンプにも使えるし、薪割りの斧はありかもな。鉈もあるけど、耐久性を考えたらな……斧は最悪、鈍器としても使えるよな」
「よく分かってるな」
健司が満足そうに頷く。
「刃が潰れても鉄の塊だから、それだけでも十分効果はある。強いモンスターに通じるかは分からないが、外に出てくるモンスターを考えれば、薪割りの斧くらいでちょうどいいと思うぞ」
「なるほどな」
そんな物騒な話をしていると、後ろから声が聞こえた。
「危ない人たちの会話に聞こえるから、声のボリューム下げなよ」
振り返ると、隼人が苦笑しながら立っていた。
「おはよう、隼人」
「おはよう。朝から何の話してるの?」
「武器の話だな」
「だから危ない人たちに聞こえるんだよ」
隼人が呆れたように言った。それから少しずつ女性陣も集まり、最終的には全員が揃った。
何人かは、少しやつれたような雰囲気がある。ただ、不健康というほどではなさそうだ。
俺は少し安心した。
「そういえば、事件の件だけど」
全員が揃ったところで、俺から警察から連絡があったことを簡単に伝えた。被疑者3人について、傷害や脅迫、殺人未遂などの被疑事実で検察庁へ送致されること。
俺と健司以外は、今後関わる必要はほとんどないだろうということ。
「出廷する必要はないみたいだけど、場合によっては、リモートとかを使って証言を求められる可能性はあるみたいだから、その時は協力してほしい」
何人かが頷く。事件の話は、それだけにした。これ以上話しても気分が沈むだけだ。
「じゃあ、講義の話にしようか」
俺が話題を変えると、自然と大学生活の話になった。その中で、就職活動についても話が出た。
「私は、もう内定決まったよ」
そう言ったのは、グランピングの前から就職活動をしていた1人だった。
「前に受けてたところから内定もらえたから、慌てなくてよくなった」
「おめでとう」
「ありがとう」
彼女は少し照れたように笑った。内定が決まったことも、精神的に落ち着くきっかけになっているのかもしれない。
特に、1人暮らしをしていて、事件の後から一番早く立ち直っていた子だった。
他の4人については実家住みで、親から「精神的に落ち着いてからでいい」と言われているらしい。そのため、今は就職活動よりも、まずは卒業することを優先するようだ。
事件の影響がなくなるまでには、まだ時間が必要なのだろう。全員の話を聞き終わると、今度は卒論について話す。
「じゃあ、そろそろ探すか」
俺たちは2つのグループに分かれ、それぞれ卒論を監督してくれる教授や准教授を探すことになった。
俺たちのグループには、探索者の活動にかまけていたメンバーはいない。そのため、去年までに単位を全部取り終わっている。卒業に必要な単位を気にしなくていいというだけで、かなり余裕を持って動ける。
「まず、スキル関係の研究をしてる先生がいるか探すか」
「俺は運動系だな」
「健司は、探索者の訓練をテーマにしたいんだろ?」
「ああ。せっかくなら、普通のスポーツとは違う、探索者ならではの身体の使い方とかも調べてみたい」
「それなら、スポーツ系だけじゃなくて、身体科学とかも見てみた方がいいかもな」
俺たちは大学のサイトを開き、教員の研究分野を確認していく。まだ講義も始まったばかりだ。卒論のことを考えるには、ちょうどいい時期でもある。早い人なら、もうゼミを決めて、卒論を書き始めているらしいしな。
でも、俺がやろうとしているのは、今まで誰も本格的に研究していない内容だ。だから、指導してくれる先生を探すところから始めるしかない。
「……結構、いるな」
「問題は、誰が興味を持ってくれるかだな」
健司の言葉に、俺も頷いた。
最後の1年……大学生として過ごす時間も、もうそれほど長くない。卒業するための単位を取るだけなら、難しいことはない。
でも、せっかく時間があるのなら、自分がこれから関わっていくことについて、少しくらい深く勉強してみてもいい。
俺は、スキルが世界に与えた影響……健司は探索者の訓練……どちらも、これから先の世界に関係するテーマだ。
そんなことを考えながら、俺たちは教員の研究分野を1人ずつ確認していった。
助教や准教授の考えは、俺たちには分からなかったため、この卒論の監督探しは、大学の教員たちの中で小さな波紋を起こした。
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