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123 この筋肉、思っていた以上にすごいな

アクセスありがとうございます。

 朝、何か柔らかいものが顔に当たった。何だと思って目を開けると、目の前にはミミの顔があった。そして、俺の顔にはミミの前足が乗っている。


「……ミミ?」


 俺が声を掛けると、ミミは何事もなかったかのように前足を顔から離し、ベッドから降りていった。


 そのまま階段を下りていくので、俺も着替えてから後を追う。1階に降りると楓がいたので、俺はミミを指差した。


「楓、ミミに何で俺の顔を踏んだのか聞いてくれ」


「踏んだ?」


 楓がミミを見ると、ミミは何かを訴えるように鳴いた。


「えーっと……お兄ちゃんが、お腹の上に乗っても起きなかったから顔に肉球を当てただけで、踏んでない、だってさ」


 ……肉球を当てただけなら、踏んでないか。確かに、言葉の意味としては間違っていない。それよりも気になるのは、俺が起きる前にお腹の上にも乗っていたということだ。


 いつもなら、それで目が覚めている。


「それはすまないことをしたな。いつもなら、それで起きてるのにな」


「何かに疲れてたんじゃない?」


「そうかもしれないな」


 ミミは俺たちの会話を聞いているのかいないのか、母親が用意していた朝食の方へ歩いていった。


 俺も朝食を食べ、大学へ行く準備をする。


 今日は大学が始まる日だ。3回生までに必要な単位は取り終わっているので、授業そのものに追われているわけではない。


 それでも、最後の1年になると考えると、少しだけ気持ちが引き締まる。


 家を出て電車に乗り、大学の最寄り駅で降りる。改札を出たところで、ちょうど健司と遭遇した。


「お、翼」


「健司か。一緒に行くか?」


「ああ」


 そのまま2人で大学へ向かう。途中で他愛のない話をしていたが、ふと思い出したことがあった。


「そういえば、健司は卒論どうするんだ?」


「卒論? 俺は、スポーツ運動学について書こうかと思ってたけど、昨日、翼と話して、探索者の訓練について書いてもいいかと思ってな。ただ、興味を持ってくれる教授がいるかどうか……そういう翼は?」


「俺は、スキルが世界に与える影響について書けたらと思ってる」


「2人とも、いばらの道だけど、仕事のことを考えると、研究するに値する内容ではあるよな」


「後、父親に任せているけど、会社を作ることを考えると、追加の自由講義で、経済関係を受講してもいいかと思ってるんだけど、どう思う?」


「悪くないな。俺も単位は問題ないから受けてみるか? 経済学というよりは経営学とか法律関係の方じゃないか?」


「あ~、深く考えてなかったけど、会社を作るなら、経済じゃなくて経営だったな」


「経理や税金関係は、税理士に入ってもらったりすれば問題ないだろうから、自分で全部やる必要はないと思う。でも、会社を運営する上で知っておくべきことを勉強できれば、役に立ちそうだな」


「なるほど」


「俺は会社を作るわけじゃないけど、翼が受講するなら、一緒に話だけでも聞いてみるかな」


 その後もくだらない話をしながら歩いているうちに、大学へ到着した。俺たちがよく集まるグループのメンバーは、まだ1時間くらい来ないようだった。そのため、2人で大学内のカフェに入り、適当に飲み物を注文して駄弁ることにした。


「会社を作るにしても、実績がなければ、結局はスキルを買いたたかれてしまうし、買いたたかれてしまえば、それが基準の報酬になっちまうよな……」


「何の話だ?」


「俺の会社の話だよ。会社ができたからって、今、度々電話がある国からの仕事を軽く受けられるわけじゃないだろ?」


「会社と行政の話になるなら、折り合いがつかなければ、受けなければいいだけだろ? 気にしすぎじゃないか?」


「まあ、それはそうなんだけどな」


「ある程度の効果を証明できるなら、民間をターゲットにしてもいいんじゃないか?」


「そうなんだけど、民間だって効果を証明できても、実績がないなら買いたたかれるんじゃないか?」


「確かに、最初の実績が基準になるなら厄介だな」


 健司は少し考えるように腕を組んだ。


「だったら、同じようなスキルを持っている人間の報酬なんかを調べてみて、ダメもとで広告みたいなホームページを作れば、どこかの国から依頼が来たりするんじゃないか?」


「さすがに、言葉が分からない国や、日本人に対して怪しい行動を取る国とか行きたくないぞ。身柄を拘束されて、一生働かされるとか嫌だからな」


「確かに、怪しい国はあるよな」


 健司は笑った。


「まあ、海外から依頼が来たら、その時に検討すればいいんじゃないか? もし都合がつくなら、俺も行っていいしな。1人よりは安心だろ?」


「まあ、それはそうだけど」


「それに、ダンジョン関係で呼ばれるだろうから、海外のダンジョンに入れるかもしれないしな」


 この筋トレオタクは、ダンジョンをトレーニング場にしているくらいの強者だからな。


「そういえば、健司って、ダンジョンに潜ってるとき、武器は何を使ってるんだ?」


「ん? 拳だぞ。グローブを嵌めたり、メリケンサックを使ったりしてるけど、基本的には殴る蹴るだな」


 健司は自分の腕を見ながら、嬉しそうに笑う。


「実戦で鍛えたこの筋肉、無駄がなくて素晴らしいだろ!」


「確かにすごいんだけど、ちょっと違う気がするな」


 俺には到底真似できそうにない。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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