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122 順調だけど、色々と不安はある

アクセスありがとうございます。

「言っておいてなんだけど、お前、就職が決まってるんだろ?」


『決まってるぞ』


「じゃあ、そんなこと考えてもいいのか?」


『俺が就職する場所、パーソナルトレーニングジムだからな。だったら、トレーニングの部分に探索者の要素を入れてもいいかもしれない。内定先に話を通すのは問題ないだろ』


「まあ……確かに」


『探索者向けの身体作りって需要あるだろうしな。俺の実績を考えれば、展開の仕方次第だけど、何とでもなるんじゃないかな』


 こいつ……すげえな。こっちが軽く言ったことを、一瞬で自分の中に取り込んでるとか……頭の良い筋肉は、本当にすげえ。


 俺が何気なく言っただけのことを、自分の経験や知識と組み合わせて、すぐに自分なりの考えへ変えてしまう。筋肉だけじゃなくて、頭までちゃんと使っている。


 だからこそ、健司なんだろうけど。


 その後もしばらく、くだらない話を続けていた。気付けば、事件の話から就職や探索者の話まで、かなり話が広がっている。俺が話すことに夢中になっている間に、健司はグループチャットにも警察から連絡があったことを伝えていた。


「……お前、いつ送ったんだ?」


『さっき』


「俺と話しながら?」


『そうだけど』


「マルチタスクすげえな……」


『いや、これくらい普通だろ』


「俺には無理だわ」


 俺なんて、話している間は完全にそっちへ意識を持っていかれていた。あとでグループチャットに送ればいいか、くらいに思っていたのに。こういうところでも、健司との差を感じる。


 まあ、俺には俺のやり方がある。そんなことを考えながら、通話を終えた。


 そして、明日から大学が始まる。すでに講義については、ある程度仮組みしてある。まずは実際に講義を受けてみて、それから履修登録をする予定だ。


 3年間大学へ通ってきたことで、卒業に必要な単位は問題なかった。だから、必死になって講義を詰め込む必要はない。それでも、いくつか受講しておきたい講義が増えていた。


 特に、会社を作ることについて考えるようになってからは、興味のある講義が以前より増えた気がする。


「……卒論、どうするかな」


 俺が考えているのは、スキルについてだ。自分に与えられた『キャンプ設営』というスキル。


 いや、俺だけじゃない。この世界では、人間がスキルを得ることで、それまで存在しなかった力を使えるようになった。


 なら、そのスキルが世界にどんな影響を与えたのか、社会はどう変化したのか、そういう内容で卒論を書いてみるのも面白いかもしれない。


 ただ、問題は指導してくれる教授だ。


 自由に研究テーマを決められるゼミでも、教授の専門分野から大きく外れた内容だと、指導する側も大変だろう。


 だから、明日、健司にも一応聞いてみるか。


 あいつは俺より大学のことに詳しいところがあるし、課題のグループメンバーも来ると言っていた。事件のことだけじゃなく、これからのことも話せる。


「……まあ、明日になれば分かるか」


 今日はバイトがなかった。そのおかげで、夜にこうしてゆっくり考える時間ができたので、色々考えてしまっていた。


 父親には昨日、いろいろ相談した。卒業論文について話したら、父親は特に反対することもなく、


『お前が興味を持っているなら、それでいいんじゃないか?』


 と言ってくれた。自由受講を増やすことについても、


『卒業に必要な単位は取れているんだから、無理のない範囲なら好きにすればいい』


 という感じだった。母親も似たようなものだ。


『翼の好きにすればいいんじゃない?』


 と、特に気にした様子もなく、いつも通りだった。こういうところは、本当にうちの家族らしい。俺が何かを始めたいと言えば止めるわけでもなく、危険そうなら心配はする。


 でも、最終的には自分で決めろと言ってくる。


「……さて、明日の準備するか」


 ベッドから立ち上がり、大学へ持っていく物を確認する。そんな俺の足元へ、ミミがやってきた。


「どうした?」


 ミミは俺の足に身体を擦りつけると、そのまま少し離れた場所へ移動する。最近、俺が何かを考え込んでいると、妙に近くへ来ることが増えた気がする。


「……心配してくれてるのか?」


 返事はするものの、やっぱり何を考えているのかは分からない。俺がベッドへ座ると、ミミは当然のように膝へ乗ってきた。


「お前、本当にこういうところだけ察しがいいよな」


 膝の上で丸くなったミミの頭を撫でる。ゴロゴロと喉を鳴らしながら、気持ちよさそうに目を閉じている。


「……まあ、明日のことは明日考えるか」


 しばらく撫でていると、ミミが膝から降りる。そして今度はベッドへ移動し、俺の方を見ながら、ごろんと横になった。


「撫でていいってことか?」


 どうやら、その通りらしい。ミミの腹を撫でる。柔らかな毛に手を埋めると、ミミは嫌がることもなく、そのまま目を細めている。


「……癒やされるなぁ」


 事件のこと、大学のこと、卒業論文のこと、会社を作ること……考えなければならないことは、いろいろある。


 でも、こうしてミミを撫でていると、頭の中が少しずつ整理されていくような気がする。明日から大学が始まる。そして、これから先のことも、少しずつ決めていかなければならない。


 ただ、今すぐ全部を決める必要はない。


「……まずは明日だな」


 そう呟くと、ミミが小さく鳴いた。


「応援してくれてるのか?」


 俺は笑いながら、もう一度ミミの頭を撫でた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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