112 ギリギリ信用された?
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「現時点では、ほぼ完治していると考えていいでしょう」
「本当ですか?」
「はい。無理をしないに越したことはありませんが、特別な通院を続ける必要もないと思います。何か異常があれば、その時は来院してください」
「分かりました。ありがとうございます」
これで本当に、いつもの生活へ戻れる。診察室を出て、会計を済ませる。
そのままスマートフォンを取り出し、家族のグループチャットへ連絡を入れた。
『ほぼ完治してるって言われた。特に問題なければ、通院もこれで終わりみたい』
送信して続けて、グランピングに一緒に行ったメンバーにも連絡する。俺自身の状態については、すでに何度も話している。それでも、一応ちゃんと報告しておいた方がいいだろう。
少しすると、何人かから返信が来た。
グランピング直後の病院での時よりは、みんな落ち着いているみたいだ。ただ、それでも完全に元通りというわけではない。
女子たちには、やはり若干のトラウマが残っているようだった。
俺たちが殴られたところを直接見ていたわけではない。それでも、怒鳴り声やナイフという凶器が与えた影響は大きかったのだろう。友達が殴られたということ以上に、あの場の恐怖そのものが残っている感じらしい。
時間が経てば、少しずつ落ち着いてくれればいいんだけどな……そんなことを考えながら、駅の方へ向かう。
そのまま家へ帰るわけではない。バイト先の居酒屋へ向かうために、家に直接帰らず大回りをするかたちだ。
診察が午後だったので、病院を出た頃には、店の準備が始まる時間になっていた。
「お疲れ様です」
店に顔を出す。
「おぉ、九十八! 元気になったか?」
「はい。熱以外は特に問題なかったんですが、熱が出た状況が状況だったので、長い間休ませてもらいました」
「まあ、あれだけの怪我なら仕方ないだろ」
「ありがとうございます。今日、診察を受けてきたんですが、ほぼ完治したと言われました。なので、予定通り明日からは働けます。シフトの交代とか大丈夫ですか?」
「ああ、それなんだがな」
店長が少し笑う。
「交代してもらった子は、そのままで問題ないって話になってるから、お前がそいつと代わる必要はないから、先月出したシフトのままでいいぞ。お前は明日からバイトに戻るんだから、今日は帰れ」
と追い返されてしまった。
「……分かりました」
「ちゃんと休めよ」
「ありがとうございます」
店を出て、そのまま家へ帰り玄関を開けると……
「にゃ」
「……ただいま、ミミ」
今日もいた。しかも、先週と同じように玄関で待っている。ミミは俺の顔を見ると、少し歩いてから振り返った。
「にゃ」
どうやら、ついてこいということらしい……俺はミミの後を追った。そして、リビングのソファーまで連れていかれる。
ミミがソファーへ飛び乗り、俺を見る。
「……また今日も床に座れって?」
「にゃ」
はいはい……俺はソファーの前の床へ座る。
「今日の診察結果だな」
「にゃ」
「ほぼ完治。特に問題なし。通院も、何かあった時だけでいいって言われた」
「にゃ」
「これで明日からバイトにも行ける」
「にゃー」
ミミが満足そうに鳴いた。
「これで報告は終わりなんだが……」
「にゃ」
どうやら、本当に終わりらしい。俺は立ち上がり、ソファーへ座るとミミが膝の上へ乗ってきた。
「ブラッシングか?」
「にゃ」
ブラシを取り出す。ミミの毛をゆっくり梳かしていると、玄関から音がした。
「ただいまー」
楓だ。
「おかえり」
「お兄ちゃん、病院どうだった?」
「ほぼ完治だって。明日から普通に戻っていいって」
「そっか」
楓はミミを見るが、ブラッシングされている様子から、特に問題はなかったと判断したようだ。もし、俺が嘘をついていたら、ミミが楓に教えるだろうから、大丈夫だと判断したんだろうな。
その後、父親も帰ってきて、母親も帰ってきた。もちろん、家族にも今日の診察結果を改めて説明する。
「ほぼ完治したって」
「本当に?」
「熱は?」
「傷は?」
俺は素直に答えているのに、母親はミミを見る。
「ミミちゃん?」
「にゃ」
「ミミちゃんも問題ないって」
母親はしばらく俺を見る……そして、
「分かったわ。明日からバイトに行っていいわよ。ただし、無理はしないこと」
ようやく許可が出た。これで明日から、やっといつもの生活に戻れる。バイト先の店長には、すでに明日から行くと言ってあるが、母親の許可をもらえたから安心してバイトに行けるな。
母親が許可しなくても、さすがに病院で問題ないと言われているので、バイトに行ってたけどな。
治ったから、キャンプにも行けるな……思わず口元が緩む。もちろん、いきなりキャンプへ行くつもりはない……怖い思いしても、普通にキャンプのことを考えるとか、思っている以上にキャンプにはまっているんだな。
すぐにキャンプに行かなくても、キャンプギアの手入れくらいならできるし、スキルの実験だって、少しずつ再開しないとな。
5日間も何もできなかった反動で、やりたいことがかなり溜まっている。
「明日から忙しくなるな」
「怪我したばかりなんだから、いきなり無理しないでよ」
「分かってるって」
「ミミちゃん、よろしくね!」
「にゃ」
どうやら、明日からも監視は続くらしい。それでも、明日からは自由に好きなことをできる。たった5日間だったけど、何もしない生活を続けてみて分かったことがある。
俺はやっぱり、じっとしているより動いている方が性に合っている。
「さて……明日は何から始めるかな」
「まずはバイトでしょ」
楓に突っ込まれた。
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