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110 判明した事実とミミの裏切り

アクセスありがとうございます。

「怪我の治りが早くなる? それは、聞き捨てならないんだけど?」


 楓がミミを見る。


「ミミちゃんの鑑定のレベルが上がったみたいで、お兄ちゃんのスキルの詳細を一部だけ見られるようになったみたい」


「マジか……」


 ミミが鳴く。


「それによると、結界には耐久度はないんだって。発動中は、お兄ちゃんの意思で破棄するか、24時間範囲外に出ていると消滅するって」


「……外から壊せないってことか?」


「ミミちゃんは、鑑定結果をそう言ってる」


 俺は考え込む……キャンプ設営のセーフエリア……俺自身、これまで何度も使ってきた。


 外敵が入れない、エリア内で暴力を振るえない、それだけでも十分に便利だと思っていた。


 耐久度の検証をしていたけど、外部から破壊できない? もし本当にそうなら、とんでもない能力だ。


「それだけじゃないみたい。範囲内にいると、ゲームでいう『回復力』が高くなるみたい」


「……だから、俺の怪我が早く治ってる?」


「ミミちゃんは、そうだと思うって」


 だからか……昨日の診察でも、医師は俺の回復力が異様に早いと言っていた。それがキャンプ設営の効果なら、納得できる。


「あと、範囲内では暴力や犯罪行為、お兄ちゃんが嫌がる行為は禁止だって」


「それは今までにも分かってたけど……」


「それに反したら、強制的に退場させられるまでは分かってたよね。だけど、お兄ちゃんの意思でも退場させられるって」


 俺が望めば、相手を追い出せる。


「ただ、お兄ちゃん自身も同じように強制されるみたい。でも、他の人とは違って、自衛に限っては問題ないみたい」


 分かったことも多いが、その一方で、さらに分からないことも増えた。


 キャンプ設営……初めは、キャンプを快適にするだけのスキルだと思っていた。でも実際には、かなり特殊なルールを持つ能力らしい。


「まあ……そこら辺は、今後実験していけばいいか」


「今は実験しちゃダメだよ」


 母親と楓、それにミミから睨まれたので、俺は大人しく引き下がった。


 そこで、ふと気になったことがある。


「そういえば、楓のトレーナースキルはどうなんだ?」


「ん~……数の上限はないらしいよ」


「上限がない?」


「うん。人間以外なら、どんな相手でも手懐けることはできるみたい」


「それって、魔物も?」


「そうみたい。でも、信頼関係を結ばないとトレーナーの効果は発揮されないんだって」


 楓はそう言いながら、ミミを抱き上げる。


「私はミミちゃんがいれば、それだけで十分だけどね」


「にゃー」


 楓はそのままミミの頬に頬ずりする。


「パートナーになれば、テイマーなんかと違って、パートナーになったミミちゃん自身が強くなるみたい」


「ミミが?」


「うん。それと、信頼関係の度合いによって、スキルの習得が早くなったり、楽になったりする効果もあるって」


「……だからか」


 俺はミミを見る。もともと、かなり賢い猫だったのは、家族全員が知っている。


 でも、今のミミは明らかに度を越している。人間の言葉を理解しているし、俺の嘘まで見抜く。


 そして、楓のトレーナースキル……信頼関係によってパートナーの能力が強化される。


「楓のスキルの恩恵も受けてるんだな」


「にゃ」


 ミミが得意そうに鳴いた。


「……自慢げだな」


「ミミちゃんは賢いもんね」


 楓に撫でられて、ミミは満足そうに目を細めた。その後、しばらく家族と話していたが、気付けばかなり時間が経っていた。


 明日も休み……というより、1週間丸々休みだ。こんなにまとまった時間ができたのは、いつ以来だろうか? たぶん、高校2年の夏休み以来じゃないか?


 大学に入ってからは、講義や課題、バイト……完全に何も予定がない日が、1週間も続くなんて珍しい。


「今日は夜更かししようかな……」


「駄目よ」


 母親から即答された。


「昨日も今日も十分寝たし」


「だからって夜更かししていい理由にはならないでしょう」


 正論には勝てない……俺は大人しく自分の部屋へ戻った。そして、しばらく布団の上で過ごす。


 眠くない……やっぱり眠れない。その時、部屋の扉が開いた。


「にゃ」


 ミミが入ってきて、俺の顔を見る。


「お前も寝ないのか? 夜更かしするか?」


「にゃー」


 どうやら賛成らしいので、俺はゲーム機を取り出した。まとまった時間があるなら、今まで積んでいたゲームを1本くらいクリアしてしまおう。


「今回は、これをクリアするか」


 ミミはベッドの上へ移動すると、俺がセットしたタッチパネルPCを自分で操作して、動画を選び始めた。


「相変わらず器用だな、お前……」


 俺はゲーム、ミミは動画。1人と1匹、それぞれ好きなことをして過ごす。


 母親にはいい顔をされないだろう……でも、今日くらいはいいだろう。


 怪我は順調に治っているし、熱はあるが、身体は動く……そして、何より暇なのだ。


「よし……やるぞ」


 ゲームを始める。


 最初は少しだけ遊ぶつもりだった……つもりだった。


 気付けば1時間。


 さらに1時間。


 途中で休憩しながら進めていく。ミミは隣で動画を見ている。


 俺もミミも、眠くなれば寝ればいい……そう思っていた。


「……あれ?」


 時計を見ると、深夜だった。


「まあ……ここまで来たらクリアするか」


 ミミも反対しない……そのまま続けて、ボスを倒す。エンディングが流れる。


「……終わった」


 時計を見る……大体6時間か、RPGじゃないから、こんなもんなのかな?


 完全に夜更かししていた。


「まあいいか、明日は休みだし」


 ミミも満足そうだったので、ゲーム機の電源を切る。


「寝るか」


 布団へ入ると、ミミが珍しく腋の間に入ってきた。ミミの体温は、俺よりも高いんだな。湯たんぽみたいに暖かい。


 そして、俺はすぐに眠りについた。



「翼!」


「……ん?」


 目を開けると、そこには、腕を組んだ母親が立っていた。


「何時まで起きてたの?」


 答えられない。


「楓がミミちゃんから聞いたっていったわよ」


 母親がミミを見る。ミミは窓の外を眺めていた。


「にゃ」


「……お前、売ったな?」


 知らん顔だった。


「昨日、夜更かししてたんでしょう?」

「怪我人なのに?」

「熱があるのに?」

「何時まで?」

「もう!」


 結局、俺だけが怒られた。隣ではミミが、何事もなかったかのように窓の外を眺めている。


「……お前も夜更かししてただろ、仲間じゃなかったのか?」


「にゃ」


 ミミは外を見たまま、こちらを振り返りもしない……本当に自由な猫だ。そして俺は、怪我が治るまで自由きままに過ごすことは許されないらしい。


 膝の上に乗ってきたミミを撫でる。


「まあ……少しの我慢か」

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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