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106 過保護だと思うんだけどな……

アクセスありがとうございます。

「夕方からバイトが……」


「休みなさい」


 母親が店長へ連絡して、事情を聞いた店長は、すぐに他のバイトへ連絡を入れてくれたらしい。


 どうやら最近、少し無駄遣いをしてしまった子がいたらしく、その子が1週間先までシフトを多めに入れてくれたことで、何とか調整できたそうだ。


『しっかり休んでから、元気になって出勤してくれ』


 店長からは、そう言われた……


 俺としては問題なく動けることを母親や楓、ミミに伝えたかった……だから、昨日医者から言われたことも説明した。


 打撲の数が異常に多かったこと。普通なら入院して経過を見ることも考える程度だったけど、スキルによる身体能力の向上のおかげで問題ない状態だったこと、それを伝えた結果……


「……本来なら入院する必要があったって、どういうこと?」


「いや、でも俺は普通に動けて……」


「それが休ませる理由なのよ!」


「……はい」


「それだけ身体が頑丈だから大丈夫なんだって言いたいんだろうけど、今日は午前中寝てなさい。様子を見て、絶対に午後に病院へ行くのよ」


「分かりました……」


 完全に怒られた……布団は干してしまったので、楓が客用の布団を持ってきてくれた。


「お兄ちゃん、これ使って」


「ありがとう」


「ちゃんと寝るんだよ」


 布団へ横になるが、眠気はない……正直、寝ろと言われても眠れる気がしない。


 しかし、監視役がいる……ミミだ。


 俺が身体を起こそうとすると、


「にゃ!」


 怒られる……寝返りを打つと、ミミが俺の近くをうろうろして、じっとこちらを確認している。


「……分かったよ」


 もう何もできない。大人しく寝るしかなかった。それでも、ミミが隣で丸くなっていると、不思議なことに眠くなってくる。


 気付けば、俺はまた眠っていた。




 昼……目を覚ます。


 朝とは違い、ミミは俺のすぐ近くにいた。俺が目を開けたのを確認すると、頭の近くをうろうろする。


 そして、額に肉球が当たった。


「……?」


 今度はじっと俺の顔を見る。


「にゃっ!」


 ……体を起こしてもいい、ということだろうか? たぶん……俺はゆっくり身体を起こした。


 ベッドに座ったまま、身体を動かしてみる。やっぱり、熱以外に変なところはない。


 1階へ降りると、母親が昼食を用意してくれていた。温めるだけで食べられるようにしてくれていたので、ありがたくいただく。


 その間も、ミミは俺の足元から離れない。


 いつもなら自分の皿がある場所へ行くはずなのに、今日はわざわざ皿を俺の足元まで運んできて、そこで食べ始めた。


「……なんでそこなんだ?」


「にゃ」


 帰ってきた時は大丈夫みたいな顔をしていたのに……どうしてこうなった。


 昼食を終えたところで、ふと健司のことが気になった。俺より全身を殴られて、しかもナイフまで刺さっている。


「健司、熱とか出てないかな」


 電話をかける。


『おう、翼。どうした?』


「熱、出てないか?」


『熱? 出てないぞ』


「……本当に?」


『体は痛いけどな。熱は出てないから、お前の方が重傷かもな』


「理不尽だ……」


『何がだよ』


「ナイフの刺し傷も、お前の方がひどかっただろ」


『それはそうだけど、鍛えてるからな』


「関係あるのか?」


『あるだろ』


 そして、メッセージが届いた。


『体鍛えてないからだろ? 俺の肉体美を見ろ!』


 写真付きだった。


「……なんだこれ」


 上半身裸……そして、ダブルバイセップス。青あざはある……確かにあるけど、俺より明らかに薄い。


「めっちゃ力入れてるじゃん……大丈夫なのか?」


『どうだ?』


「いや、どうだって言われても」


『もっと鍛えろ』


「なんで怪我人に筋トレを勧めるんだよ」


『今は休め』


「どっちだよ」


 思わず笑ってしまう……心配してくれているのは分かる。でも、後の話を要約すると、


 もっと鍛えていれば問題なかったのにな! と言われている気がする。


「家族に言われたから、俺も病院に行ってもう一度診てもらうよ」


『それがいい。まあ、次はもう少し鍛えて――』


 通話を切る。


 本当に、あいつは元気だな……俺より殴られているはずなのに……やっぱり理不尽だ。


 病院へ行く準備をして、家を出ようと玄関で靴を履いていると、ミミがやってきた。


「にゃー、にゃー、にゃー」


「……なんだ?」


 何か言っている……心配してくれているのは分かる。でも、俺にはミミの言葉が分からない。


「楓なら分かるんだろうけどな」


 楓じゃないから、何を言っているのかさっぱり分からない。


「変なこと言われてないといいけどな」


「にゃ!」


 ……なんとなく、怒られた気がする。


 俺は苦笑しながらミミの頭を撫で、病院へ向かうことにした。



 タクシー使いなさいよ……と、母親が仕事へ行く前に何度も念を押されていた。


 言われた通りタクシーを使った方がいいのかもしれないけど、本当に身体は普通に動く。発熱していることを除けば、昨日までと大きく変わった感じはない。


 そのまま歩いて最寄り駅へ向かった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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