103 まさかの事態とダンジョンでの事件の結果
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家に戻ってから、少し休んでいると、スマートフォンが鳴ったので、画面を見ると、知らない番号ではなく、警察からだった。
「……警察?」
昨日、被害届を出したばかりだ。何か追加で確認したいことでもあるのだろうか。
『九十八さんでしょうか。昨日、グランピング場での件について被害届を提出された方ですよね』
「はい」
『実は、少しお伝えしておきたいことがありまして……昨日の事件について、相手側からも被害届が提出されました』
「……え?」
一瞬、意味が分からなかった。相手側からも被害届?
「……あの人たちから、ですか?」
『はい。暴行を受けたという内容で提出されています』
思わず声が漏れる。あれだけのことをしておいて、こっちを訴えるのか?
『被害届が提出された以上、警察としても双方の主張を確認する必要があります。今回の場合、九十八さんと健司さんを中心に、当時の状況について詳しく確認することになると思います』
「俺と健司ですか」
『はい。ただ、隼人さんと一緒にいた女性5人については、直接手を出していないという話ですので、そこについては簡単な確認になる可能性が高いです』
「なるほど……」
『健司さんについては、ナイフを持っていた相手の手を叩いたという事実がありますので、そこについても確認はします。ただ、現時点で警察として、それ自体を問題視しているわけではありません』
「……そうなんですか?」
『はい。実際に何があったのかを確認する必要がある、ということです』
警察は、被害届が出されたから調べる。それだけを繰り返す、いわばAIみたいな対応しかできないのが警察だと思っていた。
だから、今回みたいに、内情を言うことなんてないと思っていた。もちろん、実際にはそんな単純なものじゃないのだろう。
『こちらとしても、昨日の現場の状況は把握しています。双方から話を聞いた上で判断することになりますので、その点だけご了承ください』
「分かりました」
『また確認事項があれば、こちらからご連絡します』
「はい。お願いします」
電話を切る……まさか、本当に被害届を出してくるとは。
とはいえ、俺たちにとって致命的な話ではない。調べられるなら、調べてもらえばいい。調べれば調べるほど、昨日の相手側が何をしていたのかも詳しく確認されることになる。
俺たちにとっての問題があるとすれば、警察との話で時間を取られることくらいだ。幸い、グランピング場の親会社から顧問弁護士を紹介してもらっている。
何か問題があれば、そちらに相談すればいい。そう考えて、すぐに健司へ連絡した。
「もしもし、健司?」
『ああ、翼か』
「今、警察から電話があった」
『お前にも来たか。内容も同じだと思う。あいつら、こっちに被害届を出したらしい。まあ、出すだけなら自由だからな』
「警察からは、俺たちを中心に調べることになるって言われた」
『俺も同じことを言われた。ナイフを持ってた手を叩いたところについては確認するけど、問題になるとは考えてないみたいだったぞ』
「隼人たちは?」
『一応、話は聞かれるだろうな。でも、直接手を出してないから、そこまで大きな話にはならないだろ』
「女子たちも同じか」
『だろうな。まあ、何か聞かれたら、それぞれ正直に話せばいい』
少しだけ沈黙する。
『俺たちは俺たちで、何か警察から連絡があったら共有しよう』
「分かった。隼人たちにも伝えておく」
そんな話をしていると、
『……そういえば、翼、テレビ、付けてみろ』
「テレビ?」
『えらいことになってるぞ』
「何が?」
『例のあのダンジョンの事件。最高裁の判決が出た』
「……ああ」
そういえば、今日だったか。俺はテレビのリモコンを手に取って電源を入れた。すると、ちょうど速報が流れていた。
『速報です。本日、ダンジョン内で発生した犯罪行為について争われていた裁判で、最高裁判所は――』
画面には、ダンジョンの映像と、裁判所の建物が映し出されている。事件が起きてから、まだ半年程度しか経っていない。本来なら、最高裁まで進むのにもっと時間がかかるはずだ。
それでも今回は違った。
世間の関心が異常なほど高かったこと……そして、政府がダンジョン問題を重要視していたこと。その2つが重なった結果、異例とも言える速度で審理が進められていた。
そして、出された判決は――。
『ダンジョンは日本国内に存在するものの、現行の日本の法律を適用することのできない治外法権的な領域であり、現行法の規定によって犯罪として処罰することはできない、との判断が示されました』
「…………」
画面の中では、専門家や評論家が一斉にコメントを始めている。
『今回の判決は、犯罪行為そのものを肯定したものではありません。ダンジョンに対して適用できる法律が整備されていなかったことが、大きな問題だったと言えるでしょう』
その後も、今回の事件について解説が続いていく。
被害者側には、実際に犯罪が行われた映像が残っている。それでも、適用できる法律が存在しない。だから、現行法では裁けない。
なんともやりきれない話だった。
『そして政府は、すでにダンジョンに関する新法、いわゆるダンジョン法の制定に向けて動いており、近く法案が提出される見込みです』
「やっぱり、そうなるよな」
『だろうな』
電話の向こうで健司が答える。
『今回の事件を放置したら、次から次へと同じ問題が起きる』
しかし、話はそこで終わらなかった。画面には、事件の当事者だった男の写真が映し出され、実名も報道されている。
そして、その後の状況についても説明されていく。
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