102 予想以上の爪痕
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翌日……待ち合わせ場所へ向かう。駅前は人が多いので、少し離れた場所に集まることになっている。
俺が到着すると、すでに健司がいた。適当に話をしているうちに、予定時間の10分ほど前になって、少しずつメンバーが集まってくる。
そして、予定時間の5分前……全員集合して、そのまま、総合病院へ向かい、受付で事情を説明する。
「昨日、同じ事件に巻き込まれて、被害に遭った者です。警察へ提出する診断書を書いていただきたいのですが」
受付の人が話を聞いてくれた。身体的な被害がある俺と健司、精神的な被害を受けている女性陣5人と隼人、それぞれ診てもらうことになった。
受診する前に、事務の人なのか、それとも医療ソーシャルワーカーなのか、よく分からない人から、事件の概要について聞かれた。
昨日のことを簡単に説明して、診察する医者にも情報を共有してほしいと、お願いした。可能であれば、同じ医師に診ていただくことができるか確認してもらう。
少し待つと、了承してもらえた。ただ、人数が多い。女性陣は2人と3人に分かれることになった。俺と健司は2人、隼人は1人になってしまった。
ただ、俺たちの身体の診察が終わったら、精神科の診察も受けることになっているので、一緒に診てもらえるらしい。
まずは身体の診察だ。
「腕の傷は、縫合する必要はありませんね。ただ、傷そのものはそれなりに長いです。全治としては3週間ほど見ておいた方がいいでしょう」
思っていたより長い。次に健司の腕を見る。
「こちらは3cmほどの刺し傷ですが、幸い深部への大きな損傷はありませんので、全治2週間ほどでしょう」
健司が俺を見る。俺も健司を見る。
「……解せぬ」
「俺に言うな」
3cmも刺さったのに俺より短い。傷が浅く長い方が治るのに時間がかかるのか? それでも、納得できない。
その後、全身の打撲についても診てもらう。そして、医師から告げられた言葉に、俺たちは少し固まった。
「打撲の数が異常に多いですね」
「ひどいですか?」
「普通に生活できているのが不思議なくらいです。箇所が多すぎるので、4週間近くは見ておいた方がいいでしょう」
俺と健司が顔を見合わせる。
「そんなに?」
「ええ。一般的な人であれば、高熱が出てもおかしくありません。場合によっては入院して経過を見ることも考える程です」
2人して少し肝を冷やした。昨日は普通に動けていたし、普通に飯も食べて、普通に寝た。でも、それは普通じゃなかったらしい。
「ダンジョンで活動しているという話でしたが……それなら、ある程度身体が強い理由は分かります。ただ、それを考慮しても、かなりひどい打撲ですよ」
スキルによって身体能力が上がっているから耐えられた。たぶん、それは間違いない。でも、俺自身はそこまで実感していなかった。
昨日だって痛かった。普通に痛かったけど、倒れるほどじゃなかった。それが、普通じゃなかったらしい。
診察が終わると、隼人と合流して、精神科の診察へ向かう。
事件について、改めて話をした。俺と健司については、普段と大きく変わらない状態だろうと言われた。だけど、隼人は違った。
「かなり強いストレスがかかっていますね。現時点では日常生活に大きな支障が出るほどではありませんが、しばらく経過を見た方がいいでしょう」
そして、女性陣5人……こちらは全員、軽いトラウマの症状が出ているらしい。継続的に治療を受けた方がいいと言われたそうだ。特に2人は、ほとんど眠れていなかったらしい。
その2人には、睡眠導入剤も処方された。
「今の状態なら、日常生活そのものには、大きな支障はないと思います。ただ、大きなストレスがかかることで、身体にも症状が出る可能性があります。可能であれば、就職活動の時期を少し遅らせることも検討してください」
「就職活動を……?」
「今の状態で無理をすると、今回のトラウマが悪化する可能性があります」
女性陣は黙って話を聞いていたようだ。就職活動……大学生にとっては、大きな問題だ。ただ、今の状態で無理をするより、医師の指示に従った方がいいと思う。
「そこについては、継続的に診察を受けながら相談していきましょう」
だとさ、それに女性陣が頷いたそうだ。
俺は、少しだけ考える。俺と健司が平気なのは、たぶんモンスターを殺した経験があるからだと思う。
モンスターとはいえ、生き物を殺した。そして、何度か戦っている……あれによって、暴力そのものに対する精神的な耐性がついているのかもしれない。
一方で、女性陣はそんな経験をしていない。目の前で大声を出している男3人を見て、殴り合いになって、最後にはナイフまで出てきた。
怖くない方がおかしい。
実際、病院を出てからも、大きな声を出している男がいると、女性陣の何人かが少しだけビクッとする。ただ、大声でなければ、そこまで問題はないようだった。
帰り道、みんなでファミレスに寄った。思い思いに好きなものを注文する。
「俺、これ」
「じゃあ私はこれ」
「昨日まともに食べられなかったから、今日はいっぱい食べる」
「それなら私も」
普通の食事会になっている。そして、くだらない話をした。
昨日のことを完全に忘れたわけじゃない。怖かった記憶もあるだろう。それでも、こうやってくだらない話をできることに、少し安心した。
食事を終えて、それぞれ帰ることになったが、女性陣は、そのまま1人暮らしをしている子の家へ向かうらしい。
「今日はみんなで一緒にいる」
「その方がいいだろうな」
「1人だと、ちょっと不安だから」
5人の中で、1人暮らしをしているのはその子だけだ。だから、他の4人が一緒にいることにしたらしい。今日の夕方には、その子の母親が来る予定だという。
挨拶をして、手を振って別れる。
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