101 家族のぬくもり
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「翼!」
……なんだ? 妙に機嫌のいい声が聞こえ、振り返ると、父親がいた。
「父さん?」
「おう。迎えに来たぞ」
「なんでそんなに機嫌いいんだ?」
「いや、別に?」
明らかに機嫌がいい。しかも、昨日電話した女性の父親も一緒だった。昨日の話をした時、迎えに行くと言っていたから一緒に来たんだろう。
「女性陣は、父さんの車に乗ってもらうから」
男性陣はレンタカー、女性陣は一緒にいるために8人乗りの父親の車、もう1人の父親は、娘に貸していた車に乗って、愛犬と一緒に帰ることになった。
それぞれ荷物を積み込んでいく。その時だった……
「……ん?」
足元に何かいる。見覚えのある毛。
「ニャー」
「なんでいるんだ?」
愛猫のミミがいた……どうしてここにいる? 俺が驚いていると、父親が笑った。
「お前が心配だったみたいだから、勝手についてきた」
ミミがどういう経緯でここまで来たのかは分からないけど、父親の機嫌がいい理由は、ミミが一緒にいてくれたからか。
ミミは俺に近付いてきて、足に身体を擦り付ける。
「心配してくれたのか?」
俺がしゃがんで撫でる。すると、ミミは満足したのか、今度は後部座席へ向かっていく。
「えっ、ミミちゃん!?」
「かわいい!」
「こっち来た!」
女性陣のところへ行くと、さっそく愛想を振りまき始めた……アニマルセラピーか?
ミミの可愛さは、天元突破しているからな。存分に癒されてくれ。ミミに会いたがっていたメンバーもいたから、かなり喜んでいるようだ。
女性陣の車に乗る前に、父親2人にもこれからのことを説明する。
警察署へ行って、被害届を出すこと。明日はみんなで病院へ行くこと、診断書を警察へ送ること。一通り説明すると、2人とも真剣な顔で頷いていた。
車に乗り込み、警察署へ向かう……20分ほどで到着した。昨日の話をして、対応してくれた警察官を呼んでもらう。
……あれ? まだ勤務時間なのか? 昨日からずっといるわけだよな?
そんなことを考えていると、2人の警察官がやってきた。昨日、男性陣の事情聴取を担当してくれた男性警察官と、女性陣の事情聴取をしてくれた女性警察官だ。
「昨日はお疲れ様でした」
「こちらこそ、お世話になりました」
「では、こちらへ」
2つに分かれて、被害届を出す準備を進める。昨日の事情聴取の内容が残っていたこともあって、思っていたよりも話は早かった。1時間もしないうちに、被害届の作成は終わった。
「これで大丈夫です」
「ありがとうございます」
警察署を出て、帰路につく。
まずはレンタカーを返すため、大学の最寄り駅の近くにあるレンタカー屋へ向かった。車を返却して、隼人と健司はそのまま電車で帰ることになった。
俺と女性陣は、父親の車と、もう1人の父親の車に分かれて乗る。それぞれの家の方向を考えて、だいたい同じ方向へ帰るメンバーをまとめて乗せた。
「じゃあ、また明日」
「うん」
「病院、ちゃんと行こうね」
明日の待ち合わせ時間を決めて、父親の運転する車で女性陣の2人を送り届け、それから家へ向かう。
1日しかたっていないのに、ようやく帰ってきた気がする……家の扉を開けると、母親がすぐに俺の身体を見た。
「……ちょっと、何その痣」
「昨日ちょっと殴られてな」
「ちょっとじゃないでしょう!」
そう言われて改めて身体を見る……確かに、あちこちに痣ができている。身体が少し熱っぽい。熱を持っているというだけで、今のところ危険な感じはしない。
「何かあったら病院に行くから」
そう答えたところで、ミミが足元にやってきた。心配そうに俺の足へ身体を擦り付けてくる。
「ミミも心配してるのか? 病院行った方がいい?」
しばらく考えたのか、ミミが首を横に振った。
「ほら。大丈夫だって」
「何を基準にしてるのよ……」
母親が呆れた顔をする。ミミが病院へ行くほどじゃないと言っているなら大丈夫だろう……たぶん。
「そういえば、父さん、弁護士の先生に話したって?」
「施設側から紹介された顧問弁護士の事務所を聞いてな。今回の件について話したら、そこなら問題ないって言ってたぞ。何かあれば連絡してくれって」
これなら、何か分からないことが出てきても、すぐに相談できる。とりあえず、今できることはやった。
「シャワー浴びてくる」
軽くシャワーを浴びて、身体を洗う。傷む箇所は、軽く冷やしておく。そうしていると、急に眠気がやってきた。身体を拭いて、部屋へ戻る。布団へ入ると、いつのまにか寝ていた。
身体が重い……お腹の辺りが妙に熱を持っているような気がして目を覚ます。
「……ん?」
何か乗っている。目を開けると、ミミだった。別に体調が悪くなったわけじゃないらしい。ミミが俺のお腹の上で丸くなっていたから、体が重くミミの体温で熱を持っているように感じただけだった。
また眠ろうとしていると、玄関の方から音がした。
「ただいまー」
楓の声だ。しばらくすると、部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
楓は俺に声をかけているのに、ミミを先に見ていた。
「ミミちゃん、どうだった?」
「にゃ~」
「そっかそっか」
「……何を聞いてるんだ?」
「え? 昨日のこと」
楓が当然のように答える。楓はミミを撫でながら、何故か全部分かっているような顔をしているミミを見ていた。
……ミミにどこまで話したっけ? いや、ほとんど話してないよな? そんなことを考えていると、楓と他愛のない話が始まった。
昨日のことも少し話した。心配させたくないので、必要以上には話さない。それでも、楓は最後まで聞いてきた。
「じゃあ、明日病院なんだ」
そんな話をしているうちに、また眠くなってきた。それを話すと、
「おやすみ、お兄ちゃん」
楓が部屋を出ていく。ミミは相変わらず俺のお腹の上で、丸まっている。地味に重い……けど、嫌じゃない。そのまま、俺は眠りについた。
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